上 下
155 / 1,052
第ニ章

お酒

しおりを挟む

  シアの活躍のお陰で、料理が冷めることなく皆に提供することができた。

「お待たせ、今日は例のトングのムニエルとジュエルサーモンのムニエル。そんでおまけに白子のカプレーゼだ。」

 テーブルの上に料理を並べていくと、それを見たランがぽつりと言った。

「ヒイラギってホント綺麗に盛り付けるわよね~。」

「綺麗に盛らないと美味しそうに見えないだろ?」

 料理は舌で味を感じるだけでなく、視覚で見て楽しむものでもあるのだ。

 そして料理を並べ終えた後、あることを俺は問いかける。

「ランとイリスは酒は飲めるのか?」

「お酒ってなに?」

「私は耳にしたことはありますが、飲んだことはありません。」

 二人とも飲酒経験はなしか……じゃあ今回はやめておいた方がよさそうだな。

「この料理は酒と合わせて食べると美味しいんだが、飲んだ事が無いならやめておこう。」

「えっ!?もっと美味しくなるの!!なら飲むわよ!!」

「つまりはお菓子と紅茶みたいなものですよね?それならぜひとも頂きたいです。」

「ん~わかった。そのかわり気分が悪くなったりしたらすぐに言うんだぞ。」

 二人とそれだけ約束すると、俺はドーナに質問を投げかける。

「ドーナはワイン……いや、葡萄酒でいいか?」

「あぁ、大丈夫だよ。」

 ドーナとはこの世界に来てから一度酒を飲み交わしたことがある。彼女は飲み慣れているようだから心配は無用だろう。

 そしてハウスキットの中にあるワインセラーへと向かい、今回の食事に合うワインを厳選する。

「今回の料理には少し甘めのワインがいいな。……これにしよう。二人はそうだな、初めてだから甘めの梅酒をソーダで割ってあげようか。」

 ドーナのワインをグラスに注ぎ、ランとイリス用の梅酒をソーダで割る。シアとグレイスはオレンジジュースだ。
 もちろん子供にお酒は飲ませられない。……グレイスが子供かどうかは知らんが。

「さて……自分のやつはこのウイスキーにしようか。」

 棚の奥にしまわれていた年代物のウイスキー。誰も手を付けることのできない値段のついた超高級品だ。
 ロックグラスに氷を入れてウイスキーを注ぐ。ふわりと香ってくるのは芳醇な香りだ。飲むのが楽しみで仕方がない。

「これがランとイリスの分。で、これがドーナの葡萄酒。シアとグレイスはオレンジジュースな。」

 皆の前に飲み物を置きようやく準備が完了した。

「よし、それじゃあ食べようか。」

「「「いただきます!!」」」

 恒例の挨拶を終えて、皆で食べ始めた。

 さてさて、以前食べたムニエルと食べ比べてみて、どんな反応をしてくれるかな。みんなの反応を窺いながら食べ始めるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い異世界転生。何も成し遂げることなく35年……、ついに前世の年齢を超えた。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

処理中です...