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第ニ章
稽古
しおりを挟む稽古を始めて一時間ほど経った。構えの練習だけを続けているのもあって、二人の体力はまだまだ残っているようだが……そろそろ休憩時だ。
「よし、いったんそこまでだ。一旦休憩にしよう。」
「えっ、ワタシまだまだできるわ!!」
「アタイもまだまだいけるよ。」
「体力的には問題はないと思う。でもそろそろ集中が乱れてくるはずだ。だから一旦休憩を挟んで気持ちを落ち着かせてくれ。」
「そういうことなら……。」
「わかったよ。」
素直に従ってくれた二人は木陰で座って休憩を始めた。
すると少し離れてグレイスと一緒にこちらを眺めていたシアがこちらに駆け寄ってきた。
「お兄さん、シアもあれできるよ!!」
そう言ってシアは、先ほどまでドーナたちがやっていた基本の構えをとった。
(あれ?この構え完成してないか?ちゃんと脱力もできてるし、重心も地面と垂直でぶれがない。
文句なしで完璧な構えだ。)
思わず驚きながらも、俺はシアの頭を撫でた。
「凄いなシア完璧だぞ。」
「えへへ、お兄さんを真似してみたの!!」
真似でここまでできるようになるか、もしかするとシアは天才肌というやつなのかもな。シアの頭を撫でながらそう思っていると……。
木陰で休んでいた二人が何かをひらめいたらしい。
「そっか、ヒイラギの真似をすれば簡単じゃない!!」
「シアが良いヒントくれたねぇ~。」
そしておもむろに二人は立ち上がると、なにやら一瞬考えてから構えをとった。その構えは先ほどまでの少しぎこちないものではなく、綺麗で自然なものだった。
「なるほど、見様見真似じゃなく完璧に真似たわけか。その発想はなかったな。」
本当にシアが二人に良いヒントをくれた。……とはいっても普通の人にできることではないが、まぁコツをつかんだのならこれで良しだ。
「よし、それじゃあ休憩が終わったら次のステップに進もう。」
そう言うと二人はガッツポーズをとり喜んでいた。
基本の基は会得したようだから、次は俺の使う技を少し教えてみようか。
そして休憩を終え、心と体をリセットした状態の二人と向き合うと、早速一歩進んだ稽古を始めることにした。
「それじゃあ次は力の流れについて理解してもらおう。」
「「力の流れ?」」
「あぁ、例えばこんな風に…ふんッ!!」
一歩踏み込むと誰もいないところへ拳を突き出してみせる。
「この攻撃の力の流れは、拳を突き出した方向に真っ直ぐなのは見てわかるな?」
「「うん。」」
「じゃあこの真っ直ぐの力の流れに軽く横向きの力を加えてやるとどうなるか……。まぁ、喋るより見せた方が早いな。ドーナ、俺に向かって一発打ち込んできてくれ。」
「わかった、いくよ…ふっ!!」
こちらに真っ直ぐに向かってくるドーナの拳に手を添えて、横に少し押し出してやると……。
「おっとっと!!」
ドーナの体勢が崩れ、今にも転びそうになってしまう。
「とまぁ、こんな感じで軌道がそれるってわけだ。」
「ふんふん、なるほど。」
「上下左右どこに力を加えても構わない。自分の好きな方へ流すと良い。これをお互いに攻守交代しながら繰り返すんだ。」
「じゃあ最初はワタシが打つわ。」
「わかった、いつでも来なよ。」
そして二人はお互いに向き合うと集中を始めた。
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