転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
149 / 1,052
第ニ章

稽古

しおりを挟む

 稽古を始めて一時間ほど経った。構えの練習だけを続けているのもあって、二人の体力はまだまだ残っているようだが……そろそろ休憩時だ。

「よし、いったんそこまでだ。一旦休憩にしよう。」

「えっ、ワタシまだまだできるわ!!」

「アタイもまだまだいけるよ。」

「体力的には問題はないと思う。でもそろそろ集中が乱れてくるはずだ。だから一旦休憩を挟んで気持ちを落ち着かせてくれ。」

「そういうことなら……。」

「わかったよ。」

 素直に従ってくれた二人は木陰で座って休憩を始めた。

 すると少し離れてグレイスと一緒にこちらを眺めていたシアがこちらに駆け寄ってきた。

「お兄さん、シアもあれできるよ!!」

 そう言ってシアは、先ほどまでドーナたちがやっていた基本の構えをとった。

(あれ?この構え完成してないか?ちゃんと脱力もできてるし、重心も地面と垂直でぶれがない。
文句なしで完璧な構えだ。)

 思わず驚きながらも、俺はシアの頭を撫でた。

「凄いなシア完璧だぞ。」

「えへへ、お兄さんを真似してみたの!!」

 真似でここまでできるようになるか、もしかするとシアは天才肌というやつなのかもな。シアの頭を撫でながらそう思っていると……。

 木陰で休んでいた二人が何かをひらめいたらしい。

「そっか、ヒイラギの真似をすれば簡単じゃない!!」

「シアが良いヒントくれたねぇ~。」

 そしておもむろに二人は立ち上がると、なにやら一瞬考えてから構えをとった。その構えは先ほどまでの少しぎこちないものではなく、綺麗で自然なものだった。

「なるほど、見様見真似じゃなくわけか。その発想はなかったな。」

 本当にシアが二人に良いヒントをくれた。……とはいっても普通の人にできることではないが、まぁコツをつかんだのならこれで良しだ。

「よし、それじゃあ休憩が終わったら次のステップに進もう。」

 そう言うと二人はガッツポーズをとり喜んでいた。

 基本の基は会得したようだから、次は俺の使う技を少し教えてみようか。

 そして休憩を終え、心と体をリセットした状態の二人と向き合うと、早速一歩進んだ稽古を始めることにした。

「それじゃあ次はについて理解してもらおう。」

「「力の流れ?」」

「あぁ、例えばこんな風に…ふんッ!!」

 一歩踏み込むと誰もいないところへ拳を突き出してみせる。

「この攻撃の力の流れは、拳を突き出した方向に真っ直ぐなのは見てわかるな?」

「「うん。」」

「じゃあこの真っ直ぐの力の流れに軽く横向きの力を加えてやるとどうなるか……。まぁ、喋るより見せた方が早いな。ドーナ、俺に向かって一発打ち込んできてくれ。」

「わかった、いくよ…ふっ!!」

 こちらに真っ直ぐに向かってくるドーナの拳に手を添えて、横に少し押し出してやると……。

「おっとっと!!」

 ドーナの体勢が崩れ、今にも転びそうになってしまう。

「とまぁ、こんな感じで軌道がそれるってわけだ。」

「ふんふん、なるほど。」

「上下左右どこに力を加えても構わない。自分の好きな方へ流すと良い。これをお互いに攻守交代しながら繰り返すんだ。」

「じゃあ最初はワタシが打つわ。」

「わかった、いつでも来なよ。」

 そして二人はお互いに向き合うと集中を始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

処理中です...