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第ニ章

カレーの虜

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 出来上がったキーマカレーをテーブルへ運ぶと、すでにみんな席についていて今か今かと待っていた。その中でも、シアとグレイスの二人は今にもよだれが零れ落ちそうになってしまっていた。

「シア、グレイスよだれ垂れそうだぞ。」

 そう言うと二人はハッとなりヨダレを拭いた。完全に目の前のカレーに魅力されてしまっているようだ。

 しかし魅了されているのは二人だけではないようで、ドーナたちも釘付けらしい。

「すごく食欲をそそる香り……惹きつけられるみたい。」

「思わずアタイもよだれが出そうになったよ。」

「みんなたくさん食べてくれ。おかわりもたくさん作ってあるから。」

 コーヒーを一杯淹れて、俺も席に着く。

「それじゃあ食べよう。」

「「「いただきま~す!!」」」

 みんなで手を合わせて、食前のあいさつをしてから一斉に食べ始めた。

「はふはふ!!ん~っ、これ凄くおいしい!!」

「ご飯との相性が抜群にいいねぇ~、止まんないよ。」

「これ、おいしっ!!無限に食べられちゃうわ。」

「美味しいッす!!幸せっす~!!」

「こんな神をも虜にしてしまうような悪魔的な食べ物があるなんて……もぐもぐ。」

 どうやらこの世界でもカレーは皆の胃袋をがっしりと掴んだらしい。みんなスプーンが止まらない様子だ。

 さてみんなの反応も見られたし、俺もそろそろ食べよう。目玉焼きを割って、カレーとご飯をスプーンで掬い口へと運んだ。

「うん、やっぱりカレーはうまいな。」

 野菜と蜂蜜のやさしい甘味、隠し味のケチャップと中濃ソースの酸味、そして肉の旨味…これらの味が絶妙に混ざりあってとても美味しい。

 美味しいカレーは甘味、酸味、旨味この三つの味がいい具合に混ざりあって成り立っている。どれか1つが強すぎてしまうと全体の味が崩れてしまうのだ。

 一時期オリジナルのカレーを完成させるために試行錯誤を繰り返し、気づけば一か月毎日カレーを食べていたこともあったな。
 カレーを食べながらそんな事を思い出していると…。

「「「おかわりっ!!」」」

 もうみんなの皿にはキーマカレーは無かった。こんなこともあろうかと、たくさん仕込んでおいて正解だったな。

「わかった。ちょっと待っててくれ。」

 そしておかわりを盛るために、立ち上がるとランとグレイスの二人が勢いよく手を挙げた。

「ワタシ大盛りがいいわっ!!」

「自分も大盛りがいいッす!!」

 二人の基準で大盛りね……器考えないとな。

 厨房へ向かいキーマカレーを温め直し、みんなのおかわりの分を盛った。それからランとグレイスは、あともう一回大盛りのキーマカレーおかわりをして昼食を終えた。

「美味しかったぁ~おなかいっぱい。」

「ゲフッ、もう食べれないっす~。」

 シアとグレイスは目に見えてお腹がぽっこりと膨れている。ドーナたちも少し食べすぎたらしく、ソファーに深く腰掛けて休んでいる。

「ふあぁ…なんか食べたら眠くなってきたな。」

 満腹になると急に眠気が襲ってきた。今日はいろいろあったから疲れたのかもしれない。

「少し横になろうかな。」

 誰も腰かけていないソファーに寝転がると目をつぶった。
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