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第ニ章
肉屋へ
しおりを挟むミルタさんの店を出てから少し歩くと、シアが俺の服の袖をキュッと掴みこちらの顔を見上げながら口を開く。
「お兄さん、あのお菓子また食べたい!!」
「あぁ、わかった。今度作っておくよ。」
「ありがとう!!」
全身で喜びを表現するように、シアはぴょんぴょんと飛び跳ねている。子供らしい可愛い仕草だが、その裏で抱きかかえられているグレイスは今にも白目を剥きそうになっている。
「し、シアちゃん。ちょっと落ちついt……ぐえっ。」
(あ、落ちた…。)
幸いにも今回は魂は出てきていない。……まぁ大丈夫だろう。
「さて、そろそろお昼だけど何か食べたいものとかあるかな?」
みんなにリクエストがないかを問いかけると……。
「そうねぇ、最近お魚を食べたから…そろそろお肉が食べたい気分だわ。」
「同感だよ。」
どうやら二人は肉を使った料理が食べたいらしい。確かに近頃、魚が主体のことが多かったからな。そろそろ、気分を変えるために肉を使った料理もいいな。
「シアは何か食べたいのはあるか?」
「う~ん、美味しいのだったらなんでもいい!!」
うん、シンプルで結構!
「わかった任せてくれ。グレイスは……あぁ、聞こえてないな。」
グレイスにも聞こうと思ったが、残念ながら今は意識が無いようだ。
「それじゃあ帰る前に市場に寄って肉を買って行こう。」
それから肉を購入するために市場へ向かった。ピークの時間を過ぎているため、朝より人通りは少ない。事前に見つけていた肉屋へと立ち寄って、店番をしている女性に声をかけた。
「すまない。」
「いらっしゃい!!何の肉をお探しだい?」
陳列棚に並んでいる肉を見て注文を始めた。挽き肉等が見当たらないが、まだその技術はないのだろうか?
「あ~、それじゃあこの牙豚のバラ肉の切り落としを一キロとバラ肉の塊を一キロ、後は一角牛のバラ肉の切り落としを一キロ貰おうか。」
「あいよっ!!それじゃあ今から準備するからちょっと待っててくんな。」
サラサラと注文したが、牙豚と一角牛とやらがどんな動物なのかはわからない。ただ見た目が美味しそうだったから選んだのだ。
それから待つこと数分で肉の切り分けが終わったようで…。
「あいよ全部で銀貨60枚だ。」
「これで頼む。」
金貨を一枚手渡した。
「あいよ、それじゃあ銀貨40枚のお釣りだね。またきておくれよ!!」
「あぁ、ありがとう。」
そして肉屋を後にすると、寄り道はせずに街を出た。それから湖の近くでハウスキットを展開する。
「ふぅ、いろいろあったがようやく一息つけそうだな。」
ハウスキットの中に入って、コーヒーを淹れる。
「お帰りなさい。」
ひと休憩しているとイリスが神華樹から姿を現した。最初こそ驚いたものの今はもう慣れたものだ。
「そろそろお昼時ですね?」
「あぁ、ちょうど今から作り始めるところだ。」
「もちろん私の分もありますよね?」
「……多分な。」
「えっ!?多分ってどういうことですか!?」
軽い冗談を言うと面白い位に動揺している。女神が慌てふためく姿というのは、これはこれでなかなか面白い。
「冗談だ。」
「……そうやって女神をからかうと天罰がくだりますよ?」
「はいはいっと、それじゃあ天罰が下らないうちに作るとしようかな。」
プンスカ怒っているイリスを置いて、厨房へ向かった。
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