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第ニ章
不可視の剣
しおりを挟む数分地面に這いつくばったあと、セドルは立ち上がった。その時大きな歓声が彼を迎えた。
そしてセドルは立ち上がると、俺へと向かって怒声を飛ばしてくる。
「なぜだッ!!なぜ追撃をしないッ!!」
「お前も言っただろ?引き立て役になれってな。こんなすぐに終わったら引き立てるも何も無いだろ?」
「ぐぐ……なめるなアァァァ!!」
アッサリと激昂したセドルは大剣を片手に持ち、もう片方の空いた手を空にかざした。
「ミラージュソード!!」
そうセドルが叫んだ次の瞬間……強い光がセドルの右手を包みこんだ。
すると、さっきまで何もなかった右手に見えない何かが握られているのがわかる。
「ハアッ!!」
そして両手から斬擊が繰り出された。左手の大剣は剣の腹に手をあて機動を反らしたが……。
「ッ!!」
右手に持っているだろう何かから嫌な予感がしたので、バックステップで下がった。
しかし、想像よりも攻撃範囲が広かったらしく腕にカツン……と何かが当たる。
「……なるほど。」
当たった場所へと視線を向けるが、特に傷らしきものはない。カオスドラゴン由来の防御力のお陰で、傷一つついていないようだ。
「ようやく当たったな!!」
しかし、攻撃を当てたことで勢いを取り戻したセドルは距離を詰めてくる。
見えない何かの攻撃は避け辛く、時折カツン……カツンと体に当たる感触がある。
「さっきまでの威勢はどうしたんだ!?どんどん行くぞッ!!」
セドルは更に調子づき、攻撃のスピードが上がる。
暫くいいようにやられているように見せて、奴の右手にある武器のリーチを見極める。
「……よし。」
こちらに迫る右手の攻撃を紙一重で躱してやると、セドルの表情が凍りつく。
「なっ!!」
躱したあとで生まれた隙をつき、セドルの顔面に一発拳を叩き込む。
「ブッ!!」
その一撃は重かったらしく、セドルはガクッと膝をついた。
セドルが膝をついたという情景に、再び会場は静まり返る。
「さて、もう手札はないのか?」
セドルにそう問いかけると、奴は鼻血を噴き出しながらキッと俺を睨むのみ……。
どうやらもう通用するような手札は残っていないらしい。
「ちなみに敗北を宣言するつもりは?」
「そんな無様なことがっ……はぁ、できるかッ!!」
「ん、なら気絶を選ぶってことで。」
俺はチラリとミノンの方を見ると、あることを問いかける。
「スキルの使用はありなんだよな?」
「えっ、だ、大丈夫よ。」
「わかった、それだけ聞きたかったんだ。」
ミノンからオーケーが貰えた所で、俺は両手に出力をだいぶ抑えたサンダーブレスを纏わせた。
それを見たセドルが体を震わせ始める。
「な、なんだそれは……。」
「気絶がお望みってことらしいからな。簡単に気絶できないように、電気ショックを与えながら攻撃してやるよ。」
「ま、待て!!俺の負…………。」
セドルが言葉を言い終える前に雷撃を纏った拳を叩き込む。
「アガガガガガッ!!」
出力を抑えているとはいえ、生身の体にはサンダーブレスの雷撃は強力らしく、掠めただけで激しくセドルは体を痺れさせている。
「さ、まだまだ行くぞ。」
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