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第ニ章
試合開始
しおりを挟むミノンの掛け声で拳を構えた俺の姿を見て、ギャラリーがざわめき出す。
「あいつ素手だぜ!?」
「いくらなんでも無理があるだろ!!」
観客からはなかなかどうして冷やかな声が送られてくる。そんな俺にミノンが問いかけてくる。
「あなたは素手でいいんですね?」
「充分だ。」
「わかりました。それでは試合はじめッ!!」
開始の合図と共に、セドルが大地を蹴り大剣を振りかざす。
性格と違って身体の中心がぶれていない、いい攻撃だ。まぁ、当たってやるつもりはないが。
上段からの斬擊を少し身体を捻って躱す。
「…ッ、せあッ!!」
しかし斬擊はまだ空を切らなかった。躱された瞬間に振り抜いた剣を止め横凪ぎをしてきた。
「フッ!!」
身体を思い切り背面に反らせ、後ろ向きにかかる遠心力を足の爪先に乗せて、セドルのアゴを下から蹴りあげた。
「がっ!?ぐっ……。」
上に向かって蹴り抜いた威力をそのままにバク転し、着地する。
そのまま畳み掛けても良かったが……ここはあえて待ってやろう。
顎を蹴り抜かれ、ふらつくセドルへと俺は言葉をかける。
「ずいぶんふらついているが大丈夫か?」
するとセドルは、安い挑発に簡単に乗ってきた。
「銀級の分際でッ!!」
未だにふらついている身体から繰り出される一撃は、中心がブレていてとてもお粗末なものだった。
単純な力だけで繰り出している攻撃、そんなものは恰好の獲物でしかない。
「そらよッ!!」
一歩で間合いを詰め、剣をつかんでいるセドルの両手を掴み取り、足を払って体を持ち上げる。いわゆる一本背負いだ。
「ッ!!ガハッ!!」
セドルは受け身をとる間もなく、思い切り背中を地面に叩きつけられた。
この衝撃だと、マトモに呼吸することも相当キツいはずだ。
絶好の追撃のチャンスだが、俺は地面を這うセドルを見下ろして動かない。
「苦しいか?横隔膜が麻痺してるからキツイだろ?」
「ぐぎッ…ぎざ、ま゛ッ!!」
セドルは必死に声を絞り出して、俺の事を睨んできた。その目には明らかな殺意が宿っている。
「まだ喋れるのか、なかなかタフだな。」
セドルが一方的にやられて、シン……と静まり返っている最中、彼が立ち上がるのを俺はずっと何もせず待っていた。
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