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第ニ章
名探偵ミノン
しおりを挟むランの言葉に、ミノンは訝しげに目を細めた。
「ウォータードラゴンを倒した?あの上位のドラゴンをですか?」
「えぇ、間違いないわよ?」
ミノンはチラッとドーナの方を見て、表情の変化をうかがった。それに気が付いたドーナは一つ頷く。
「アタイも目の前で見たから間違いない。現に今、湖でウォータードラゴンの被害はないんじゃないのかい?」
「確かに被害も目撃情報もないわ。でもね、銀級の冒険者が上位のドラゴンを倒すなんて、にわかに信じられないわ。」
「だから、ヒイラギは実力だけで言えば白金級でもおかしくないんだって……。」
ドーナがミノンを説得しようとするが、どうにも疑いの目は晴れないようだ。
まぁ無理もないよな。位が高く、ギルドからの信頼もある冒険者がドラゴンを倒したと宣言したのならば信憑性は高いだろうが……。
「それとあなたとドラゴンが姿を消してから、上級のデーモンが確認されて五人の金級の冒険者が犠牲になったわ。」
「……そうか。」
「五人の尊い命は失われてしまったけれど、街への被害は一切無かったわ。おかしいと思わない?」
「その犠牲になってしまった彼らが命を懸けてデーモンを倒したのなら……なにもおかしくはないと思うが?」
「あのね、上級のデーモンなんて金級の冒険者がいくら束になったって勝てるわけないのよ。……だけど、突然デーモンの魔力反応が消えたのもまた事実。」
「…………つまり何が言いたいんだ?」
「デーモンは街に被害を出す前に何者かによって討伐された……って私は考えてるわ。」
そう言ってミノンは俺の瞳の奥を、じっ……と覗き込んでくる。
「その何者かってのが俺だって言いたいのか?」
「もしあなたがウォータードラゴンを倒すほどの実力を持っていて、そのデーモンをも討伐したとなると今回の事件の一連の流れに辻褄が合うのよ。」
そう述べたミノンの意思を汲み取ったドーナが口を開く。
「……つまりだ、遠回しに言ってるけどミノンはヒイラギの実力を確認したいってことだろ?」
「その通りよ。私はこの街のギルド長として今回の事件をハッキリさせる必要があるの。犠牲になった五人の冒険者達の為にも……ね。」
使命感に満ちた表情でこちらをじっと見つめてくるミノン。
ここまで言われると、トンズラするのは気が引けるので……。
「わかった。だが、どうやって実力を確認するんだ?」
「今からあなたには、この人と模擬戦をやってもらいたいの。お互いに全力でね。」
そうミノンが言うと、奥の扉から一人の男がこちらへと歩み寄ってきた。
「俺は白金級冒険者のセドルだ。よろしく頼む。」
現役の白金級の冒険者か。またまたとんでもない相手を用意してくれたものだ。
大きくため息を吐いていると、セドルがまた口を開く。
「本当はドラゴンとデーモンの討伐に来たんだが……ミノンギルド長の要望で急遽君の実力を測ることになった。」
「はぁ……どうぞよろしく。」
互いに軽い挨拶を済ませると、ミノンが立ち上がった。
「それじゃあ闘技場にいくわよ。もう人払いはすんでるから安心して。」
人がいるかどうかなんて、そこは別に問題じゃないんだが……。
それにしても、ここまで用意周到ってことは最初からこのつもりだったんだなこの人。ミノンとセドルに案内され、俺はため息を吐きながら闘技場へ向かうのだった。
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