転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
135 / 1,052
第ニ章

名探偵ミノン

しおりを挟む

 ランの言葉に、ミノンは訝しげに目を細めた。

「ウォータードラゴンを倒した?あの上位のドラゴンをですか?」

「えぇ、間違いないわよ?」

 ミノンはチラッとドーナの方を見て、表情の変化をうかがった。それに気が付いたドーナは一つ頷く。

「アタイも目の前で見たから間違いない。現に今、湖でウォータードラゴンの被害はないんじゃないのかい?」

「確かに被害も目撃情報もないわ。でもね、銀級の冒険者が上位のドラゴンを倒すなんて、にわかに信じられないわ。」

「だから、ヒイラギは実力だけで言えば白金級でもおかしくないんだって……。」

 ドーナがミノンを説得しようとするが、どうにも疑いの目は晴れないようだ。

 まぁ無理もないよな。位が高く、ギルドからの信頼もある冒険者がドラゴンを倒したと宣言したのならば信憑性は高いだろうが……。

「それとあなたとドラゴンが姿を消してから、上級のデーモンが確認されて五人の金級の冒険者が犠牲になったわ。」

「……そうか。」

「五人の尊い命は失われてしまったけれど、街への被害は一切無かったわ。おかしいと思わない?」

「その犠牲になってしまった彼らが命を懸けてデーモンを倒したのなら……なにもおかしくはないと思うが?」

「あのね、上級のデーモンなんて金級の冒険者がいくら束になったって勝てるわけないのよ。……だけど、突然デーモンの魔力反応が消えたのもまた事実。」

「…………つまり何が言いたいんだ?」

「デーモンは街に被害を出す前に何者かによって討伐された……って私は考えてるわ。」

 そう言ってミノンは俺の瞳の奥を、じっ……と覗き込んでくる。

「その何者かってのが俺だって言いたいのか?」

「もしあなたがウォータードラゴンを倒すほどの実力を持っていて、そのデーモンをも討伐したとなると今回の事件の一連の流れに辻褄が合うのよ。」

 そう述べたミノンの意思を汲み取ったドーナが口を開く。

「……つまりだ、遠回しに言ってるけどミノンはヒイラギの実力を確認したいってことだろ?」

「その通りよ。私はこの街のギルド長として今回の事件をハッキリさせる必要があるの。犠牲になった五人の冒険者達の為にも……ね。」

 使命感に満ちた表情でこちらをじっと見つめてくるミノン。

 ここまで言われると、トンズラするのは気が引けるので……。

「わかった。だが、どうやって実力を確認するんだ?」

「今からあなたには、この人と模擬戦をやってもらいたいの。お互いに全力でね。」

 そうミノンが言うと、奥の扉から一人の男がこちらへと歩み寄ってきた。

「俺はのセドルだ。よろしく頼む。」

 現役の白金級の冒険者か。またまたとんでもない相手を用意してくれたものだ。

 大きくため息を吐いていると、セドルがまた口を開く。

「本当はドラゴンとデーモンの討伐に来たんだが……ミノンギルド長の要望で急遽君の実力を測ることになった。」

「はぁ……どうぞよろしく。」

 互いに軽い挨拶を済ませると、ミノンが立ち上がった。

「それじゃあ闘技場にいくわよ。もう人払いはすんでるから安心して。」

 人がいるかどうかなんて、そこは別に問題じゃないんだが……。

 それにしても、ここまで用意周到ってことは最初からこのつもりだったんだなこの人。ミノンとセドルに案内され、俺はため息を吐きながら闘技場へ向かうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

処理中です...