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第ニ章
仲間
しおりを挟むできあがった朝食を持っていつものテーブルへ向かった。皆はまだ起きていないようだ。
「とてもいい匂いですね。」
一人既に座っているイリスは、クンクンと鼻を鳴らすと表情を蕩けさせた。
「イリスも何も食べていないんだろう?」
「えぇ、まぁそうですが私は基本食事を必要としませんので問題ありませんよ。」
流石は女神か……普通の人間とは体の作りが違うらしい。
さてさて、疲れて眠ってしまっているところを起こすのは、なかなか気が引けるが……しっかり食べて栄養補給もしてもらいたい。
少々酷だが、目を覚まして貰おう。
俺は寝ているシアに近付き、肩をポンポンと叩いた。
「ん~、あ…れ?お兄……さん?」
「おはようシア、心配かけてすまなかったな。」
「お兄さぁぁぁん!!」
俺のことを認識したシアはガバッと起き上がり、勢いよく胸に飛び込んできた。
「寂しかった……すっごく寂しかったぁぁ!!」
「ごめんな。」
泣きじゃくるシアの頭を撫でながら謝った。そしてシアの声で他の皆も目を覚ます。
「あ、あぁっ!!ヒイラギっ!?心配したんだよ!!」
「よかった……本当によかったわ。もうっ!!心配したのよ!?」
「ヒイラギさーん!!自分も心配しま……ぐえっ!?」
「すまなかった。」
皆がそう温かい声をかけてくれた。グレイスはドーナとランの間に押し潰され、もみくちゃにされている。
「謝罪の意味も込めてたくさん朝御飯を作ったから、お腹いっぱい食べてほしい。」
料理が並べられたテーブルを指差すと、次の瞬間きゅるるぅぅ~と、皆のお腹から音が鳴った。
「えへへ、もうおなかペコペコ~。」
「わ、ワタシもペコペコだったのよ。」
「ここ2日間付きっきりだったからねぇ~。」
「ん~ッぐぐっ!!ぷはぁっ、抜けたっす……自分ももう限界っす!!」
料理から漂ってくる香りが、みんなの空腹のお腹を刺激したらしい。二日も食べていなければ当たり前だろう。
「俺の事を心配してくれたのは嬉しいが、ご飯はちゃんと食べてくれよ?冷蔵庫のものとかなんでも使っていいから。」
そうドーナとランの2人に向かって話していると、隣でクスクスとイリスが笑う。
「ふふっ、ヒイラギさんがいると皆さんも元気ですね♪昨日までと違って、お腹も正直です。」
「い、イリスだってご飯食べてなかったじゃない!!お腹空いてるんじゃないの?」
「ふふっ♪私は女神なので空腹は感じないのですよ。」
「なんて都合の良い体だい……。」
わいわいと騒ぐみんなの姿を眺めていると、シアがこちらを見て首を傾げた。
「お兄さん?どうかしたの?」
「ん?あ、あぁすまない考え事をしていた。さぁ、冷めないうちに食べよう。」
「うん!!」
みんなで食卓を囲み、手を合わせる。
「「「いただきます!!」」」
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