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第ニ章
死闘の反動
しおりを挟むレスとの熾烈を極める戦闘から丸二日経ったが、ヒイラギは未だに目を覚まさなかった。
「もう二日……まだ目を覚まさないわね。」
「それだけ体にダメージが残ってるってことだよ。」
「お兄さん。」
現在ヒイラギは布団で寝かされており、その周りをシア達が囲むように座っていた。看病していたイリスがぽつりと口を開く。
「想定以上に死の女神は強力な魔物を生み出しているようですね。カオスドラゴンの力を吸収したヒイラギさんでもここまで追い詰められるなんて。」
イリスはヒイラギの額に手を当ててそう言った。
「ワタシ達も何かできなかったかしら。」
「そう思う気持ちはわかります。ですが……今のあなた方の力ではきっと、足を引っ張ることしかできなかった。非情ですが、それが現実です。」
「アタイたちがもっと強くなんなきゃダメってことかい……。」
「ただ強くなるだけではいけませんよ。それだけではきっと、ヒイラギさんはまだ一人で戦うと言うはずです。」
「じゃあどうすればいいの?」
縋るようにランがイリスを問い詰める。
「ヒイラギさんは皆さんのことを危険に晒したくないんです。仮にもし、ランさんとドーナさんが強くなったとしても……少しでも危険な可能性があれば、それを一身に背負ってしまうのがヒイラギさんなんですよ。」
「そ、それは……確かにそう…かも。」
「今回だってアタイ達にはここを動くなって言ってたし。」
「……ってか、なんでイリスはそんなにヒイラギの心の中がわかるのよ?」
そのランの問いかけにイリスはにこりと笑って、胸を張りながら言った。
「それは私がヒイラギさんを転生させた張本人だからですよ。この世界に転生させるために何年もかけて性格とか、そういうものを徹底的に調べあげたんですから。」
「どおりで、詳しいわけね。」
「そんな私からお二人へと助言をするのなら……強くなった上でヒイラギさんの信頼を得ることが最も大事です。」
「信頼……ねぇ。単純に強くなるよりよっぽど難しいことだよ。」
「そうねぇ、どうすればいいのかしら。」
思い悩む二人に、イリスは微笑みながら再び助言をする。
「そんなに難しく考える必要はありません。信頼というものは時間をかけて積み上げていくものです。強くなることも一朝一夕でできることではありません。ヒイラギさんと過ごすうちにお互いのことを理解しあっていれば、自ずと得られるはずですよ。」
そう二人に助言をするイリスの姿は神々しく、女神という肩書にふさわしいものだった。
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