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第ニ章
辛勝
しおりを挟む「た、助けて下さいぃ!!」
「大丈夫だ、そこでじっとしてろ。」
慌てふためくウォータードラゴンの前に立つと、右手を火球へと向かって突き出す。
「ウォーターブレス!!」
直後右手から大質量の水が放たれる。それはレスの火球とぶつかると、大量の水蒸気となって相殺された。
辺り一帯に水蒸気が広がり視界がとりにくいが、今の俺には好都合だ。
「くッ!!どうなった!!」
「こうなったんだよ。」
水蒸気に紛れてレスの背後を取る。
「小賢しい!!」
俺の声を頼りに放たれた裏拳を屈んで躱すと、右手でまたブレスの構えを取る。
「サンダーブレス……。」
右手の手のひらに雷の球が一瞬にして精製された。それが放たれる直前に力強く握り込む。
すると、行き場を失ったサンダーブレスは俺の手の周りでバチバチと帯電し始めたのだ。
「今度は蘇るんじゃないぞっ!!」
サンダーブレスを纏った拳をレスに打ち付ける。
「破槌っ!!」
サンダーブレスを纏った破槌は、レスの体に触れた瞬間から奴の体を崩壊させ、最終的には跡形も残さずに消し去った。
今度こそ終わりだ。空からあの不気味な声も聞こえない。
「かっ…た。」
散桜を解くと、足に力が入らず地面に倒れた。全身の筋肉がまだボロボロだ。超回復でもカバーしきれていなかったらしい。
仰向けになって空を眺めていると、コロコロと光輝く宝玉が顔の近くに転がってきた。
「これは、あいつの宝玉か?」
残った気力で俺はそれに向かって鑑定を使う。
「か、鑑定…。」
・ディザスターデーモンの宝玉
さらに詳しく鑑定して、この中に求めていたとあるスキルを発見した。
「ははっ、やっ…たぞ。」
その宝玉には言語理解のスキルがついていたのだ。ズキズキと痛む手でそれをマジックバッグへとしまう。
「これでようやくシアも…一緒に……。」
そこで俺の意識は途切れた。
◇
???side
「イース様、レスが例の転生者に敗れました。」
「※※※※※※※※※※※※※※※」
「はっ、ただちに……。」
そして死の女神イースは姿を消した。
辺りを静寂が包んだ。それもそのはずで、ここにはたった一匹の魔物しかいない。
イースと話をした部屋をその魔物は後にした。そして、円卓のある部屋に入る。その部屋では何人かがその魔物を待っていた。
「よう、おそかったじゃねぇか。」
「イース様へのご報告が終わった。」
「それにしてもぉ~レスがやられるなんて、相当強いのねぇその転生者。」
「あぁ、血の盟約を成し遂げたレスでも敵わない相手だ。これからの侵略での大きな障害になるだろう。一先ずは、獣人族に戦力を集中させろとのお告げだ。」
「なるほどねぇ、取りあえず1つ潰しておくって感じか。」
「あいつらはバカが多いから、少し策をはれば簡単に潰せるんじゃなぁい?」
「うむ、ではこれより獣人族への侵略を開始する。女神イースの名のもとに。」
「「女神イースの名のもとに。」」
その一言で死の女神の魔物達の集会は終わった。
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