転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

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第ニ章

奥義…散桜

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『散桜』

 日本の桜というのは美しいが散るのが早い。それと同様にこの技も凄まじい威力だが、そのぶん肉体の消耗が激しい。

 普段人間というのはどんなに全力を出してもその身体が出せる30%しか力が発揮できないという。この奥義は、その残りの70%を引き出すことを本懐としているのだ。

 しかし、普段扱えない力を扱う分その代償も大きい。100%の力に筋肉が耐えきれずブチブチと引き裂かれていく。
 幸い、筋肉が引き裂かれたところから超回復で回復しているから損傷自体はほぼ無いようなものだ。

 もし超回復が無ければ俺はこの奥義を30秒も使えない。だが、スキルの超回復があれば痛みを堪えるだけで半永久的に使うことが可能だろう。

「なんだ……最後の悪あがきか?」

「あぁ、徹底的に足掻かせてもらう。」

 身体の能力を全て引き出し、一歩を踏み出すとレスの目に捉えられる前に奴の懐をアッサリと侵略できた。
 握る拳に全身の力を一点に集中させて、奴の土手っ腹を打ち抜く。

「破槌っ!!」

 この技は身体にかかっている力を、全て拳の先に集めて相手に叩き込むというシンプルな技。だが、散桜を併用しているこの技の威力は普通の打撃の比ではない。

「グッアァァッ!!」

 俺が打った拳は、レスの腹部を突き破っていた。紫色の毒々しい返り血が体に降りかかる。

「人間ごときがァッ!!」

 俺の腕を強引に引き抜き、レスはバックステップで距離を取る。だが、よろめいているその隙を見逃すほど俺は甘くはない。

 縮地で距離を詰めている最中、レスが妙に不自然な動きで高速移動をしているのを目で捉えることができた。

「それがさっきの移動の正体か。」

 すかさず手を伸ばし、移動している最中のレスの左手を掴む。

「グッ!?グアァァッ!!きっ、貴様何をしたアァァ!!」

 そして俺の後ろに現れたレスには左腕がなかった。奴の左手は俺が掴んでいる。

「その移動をしている最中のお前の腕を掴んだ。ただそれだけだ。」

「瞬間移動している私の腕を掴んだだと!?」

 自分で言うのもアレだが、俺の動体視力は今凄まじいことになっている。相手の動きが全て鮮明に見え、スローモーションになっているのだ。余計、腹部を貫かれて鈍っている奴の動きなら尚更見える。

「グッ!!こうなったらッ……。」

 すると、レスは俺から視線を逸らす。その先に居たのは……。

「ひっ。」

 ウォータードラゴン……彼女だった。

「そこの女が大事だったなぁ?守ってみろ!!」

 奴は巨大な火球を作り出すと、彼女の方へと放った。

「下種が……。」
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