上 下
117 / 1,052
第ニ章

血の盟約

しおりを挟む

 突如として天から不気味な声が響いた。

「血の盟約?」

 その声が響いた直後、レスの亡骸に変化が起きた。血の魔法陣から不気味な光が出始めレスを包み込み始めたのだ。

 レスの体を不気味な光が覆い尽くすと、それはまるで心臓のようにドクドクと脈打った。そしてパン……と光が突然弾けると、そこから1体のおぞましい魔物が姿を現した。

《個体名レスを種族名に進化しました。》

 再び空から不気味な声が響く。そしてその声曰く進化したレスが口を開いた。

「さっきは世話になったな転生者。」

 こいつは不味い……俺の第六感が全力で死の危険を伝えてくる。だが、引くわけにはいかない。

 更に警戒を強め、レスの一挙手一投足を見逃さないように注視していた。しかし……。

「そんなに怯えるな、これでは戦いにならない。」

 と、唐突に後ろから声がした。

「ッ!!」

 バッと振り返るとそこにはレスが立っていた。音もなく、移動する瞬間も挙動も見えなかった。

「随分進化したみたいだな。」

「ククク、おかげさまでな。さぁ戦いを始めようか?」

 絶望の第2ラウンドの火蓋が切り落とされた。

「フッ!!」

 先に動かれたらまず避けることは不可能。ならこちらから仕掛けるしかない。そう踏んだ俺は、縮地で距離を詰め奴の水月に拳を叩き込んだ。

「どうした?」

「なッ!!」

 モロにくらっているはずだが、奴は平然としている。

「今度はこちらの番だな。」

 次の瞬間レスの右手がかき消えた。それとほぼ同時に俺の水月にレスの拳が深くめり込んでいた。

「ぐぶっ……ガハッ!!」

 一瞬で口のなかを血が満たし、それを吐き出した。強烈な痛みが腹部を襲っている。胃のあたりが焼けるように痛い……今ので胃がやられたらしい。

「ぐあぁっ!!ッツ!!」

 痛みを気合でこらえ構えをとり、レスを睨み付けた。

 奴の表情には格上特有の明らかな余裕と、歪な笑みが張り付いていた。

「ずいぶん痛そうじゃないか?これは情だ……今楽にしてやる。」

 まただ、また目の前からレスが消えた。同時に後ろから殺気を感じた時にはもう遅かった。

 首に襲いかかる強い衝撃……急速に意識が遠のく。

 だが、暗くなっていく意識の中……みんなの姿が何故かとても鮮明に浮かんできた。

(まだだ、俺がやられたらコイツはみんなを……。)

 

「ッ!!ああ゛ッ!!」

 遠のく意識を気合で繋ぎ止める。そして反射的に体を動かし、衝撃を受けた方向へ体を回転させて攻撃の威力を流した。

「情をかけてやったというのに……そんなに苦しんで死にたいのか?」

「違うな、死にたいわけじゃない。お前にはんだよ。…………師匠、アレ使います。奥義……

 俺は人間という存在が体にかけている鍵を解き放った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い異世界転生。何も成し遂げることなく35年……、ついに前世の年齢を超えた。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

処理中です...