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第ニ章
死の女神の魔物襲来
しおりを挟む「これで一段落つきそうだな。」
ウォータードラゴンが湖に向かって走っていったのを見てそう言った。
「ホント昔と変わらず食いしん坊なんだから。」
「昔からあんな感じなのか?」
「そうよ、前に魚を取りすぎた国を一国滅ぼしかけたこともあったわね。」
「とんでもないドラゴンだねぇ。」
食の恨みはなんとやら……ってやつだな。
そして一安心していたその時だった……俺の背筋にぞわりと嫌な感覚が張り付く。直後、ドオォォンとまた湖から大きな音がした。
「あの子またやったのかしら?」
「いや違う。嫌な感じのやつがいる。みんなはここを動くなよ?」
ダンッ!!と地面を踏みぬき駆け出した。
さっきとは違う、体にまとわりつくような感じの嫌な気配がここまで漂っている。ふと、イリス達が言っていた言葉を思い出した。
確か、死の女神が全種族に同時進行を開始したって言ってたよな。
この背筋にべっとりと張り付く嫌な感じの気配。この気配には覚えがある、カオスドラゴンと対峙したときに感じたものとかなり似ているのだ。
「こういう時の嫌な予感っていうのは当たるから怖いんだよな。」
駆け抜けて爆発音のした場所にたどり着くと、そこにはすさまじい光景が広がっていた。
「ッ!!これは……。」
先程まで冒険者達がウォータードラゴンと戦っていた場所は大きなクレーターができており、辺りからは肉が焼け焦げたような鼻をつく匂いが充満していた。
「まだ人間が残っていたか。」
左のほうから声が聞こえた。声のした方を即座に振り向くと……。
「ぐぅっ、ぐっ!!」
人化したウォータードラゴンの首を右手で締め上げている不届き者を見つけることができた。ウォータードラゴンもバタバタと必死に抵抗しているが、奴はその抵抗をものともしていない。
即座に体が動いた。高速で移動している最中に確かにそいつと目があった。そして、何を思ったのか締め上げていた手をフッと離し口角をつりあげた。
俺は重力にしたがって崩れ落ちようとするウォータードラゴンを抱き抱え距離をとった。
「大丈夫か?」
「ゲホッゲホッ!!な、なんとか生きてますぅ。」
「ここで休んでてくれ。」
彼女を離れたところに寝かせそいつと向き合った。
「ククク、ようやくおでましだな転生者。」
「お前は死の女神の手先か?」
「あぁそうだ。」
目の前から突然奴が消えた。
「貴様を殺しに来てやったぞ。」
次の瞬間後ろから声が聞こえ、右の脇腹にとてつもない衝撃が走る。
「ぐっ!!ガハッ…。」
右の脇腹を蹴られ木に叩き付けられると、腹から血がせりあがってくる。
今の蹴りはヤバい……。内臓がやられたかもしれないな。腹の底からせりあがってくる血液を地面に吐き捨てると、俺は奴へと向き直った。
「ほう、今ので死なないか。流石に普通の人間ではないな。」
「はぁっ、はぁっ……。次はくらわない。」
「ククク…そうか、まぁ防げなければ死ぬだけだ。」
奴はそう言ってもう一度姿を消した。そしてまた背後から首に向かって鋭い手刀が繰り出される。
「やっぱり後ろから来るんだな!!」
その手刀が当たる直前、俺は右腕を鞭のようにうねらせ絡めとった。その絡めた腕を起点に関節技で腕の破壊を試みたが……。
「ッ!!」
奴は体を急速に回転させ、俺の手を弾いてしまった。
「今のはいい動きだったな。そこそこやる……流石は転生者といったところか。」
そこそこ…か。この余裕まだ実力を隠しているな。
警戒心を強めていると、奴は俺の目の前で高らかに名乗りを上げた。
「私の名はレス、死の女神イース様に頂いた名だ。この名を地獄まで持っていくがいい。」
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