115 / 1,052
第ニ章
死の女神の魔物襲来
しおりを挟む「これで一段落つきそうだな。」
ウォータードラゴンが湖に向かって走っていったのを見てそう言った。
「ホント昔と変わらず食いしん坊なんだから。」
「昔からあんな感じなのか?」
「そうよ、前に魚を取りすぎた国を一国滅ぼしかけたこともあったわね。」
「とんでもないドラゴンだねぇ。」
食の恨みはなんとやら……ってやつだな。
そして一安心していたその時だった……俺の背筋にぞわりと嫌な感覚が張り付く。直後、ドオォォンとまた湖から大きな音がした。
「あの子またやったのかしら?」
「いや違う。嫌な感じのやつがいる。みんなはここを動くなよ?」
ダンッ!!と地面を踏みぬき駆け出した。
さっきとは違う、体にまとわりつくような感じの嫌な気配がここまで漂っている。ふと、イリス達が言っていた言葉を思い出した。
確か、死の女神が全種族に同時進行を開始したって言ってたよな。
この背筋にべっとりと張り付く嫌な感じの気配。この気配には覚えがある、カオスドラゴンと対峙したときに感じたものとかなり似ているのだ。
「こういう時の嫌な予感っていうのは当たるから怖いんだよな。」
駆け抜けて爆発音のした場所にたどり着くと、そこにはすさまじい光景が広がっていた。
「ッ!!これは……。」
先程まで冒険者達がウォータードラゴンと戦っていた場所は大きなクレーターができており、辺りからは肉が焼け焦げたような鼻をつく匂いが充満していた。
「まだ人間が残っていたか。」
左のほうから声が聞こえた。声のした方を即座に振り向くと……。
「ぐぅっ、ぐっ!!」
人化したウォータードラゴンの首を右手で締め上げている不届き者を見つけることができた。ウォータードラゴンもバタバタと必死に抵抗しているが、奴はその抵抗をものともしていない。
即座に体が動いた。高速で移動している最中に確かにそいつと目があった。そして、何を思ったのか締め上げていた手をフッと離し口角をつりあげた。
俺は重力にしたがって崩れ落ちようとするウォータードラゴンを抱き抱え距離をとった。
「大丈夫か?」
「ゲホッゲホッ!!な、なんとか生きてますぅ。」
「ここで休んでてくれ。」
彼女を離れたところに寝かせそいつと向き合った。
「ククク、ようやくおでましだな転生者。」
「お前は死の女神の手先か?」
「あぁそうだ。」
目の前から突然奴が消えた。
「貴様を殺しに来てやったぞ。」
次の瞬間後ろから声が聞こえ、右の脇腹にとてつもない衝撃が走る。
「ぐっ!!ガハッ…。」
右の脇腹を蹴られ木に叩き付けられると、腹から血がせりあがってくる。
今の蹴りはヤバい……。内臓がやられたかもしれないな。腹の底からせりあがってくる血液を地面に吐き捨てると、俺は奴へと向き直った。
「ほう、今ので死なないか。流石に普通の人間ではないな。」
「はぁっ、はぁっ……。次はくらわない。」
「ククク…そうか、まぁ防げなければ死ぬだけだ。」
奴はそう言ってもう一度姿を消した。そしてまた背後から首に向かって鋭い手刀が繰り出される。
「やっぱり後ろから来るんだな!!」
その手刀が当たる直前、俺は右腕を鞭のようにうねらせ絡めとった。その絡めた腕を起点に関節技で腕の破壊を試みたが……。
「ッ!!」
奴は体を急速に回転させ、俺の手を弾いてしまった。
「今のはいい動きだったな。そこそこやる……流石は転生者といったところか。」
そこそこ…か。この余裕まだ実力を隠しているな。
警戒心を強めていると、奴は俺の目の前で高らかに名乗りを上げた。
「私の名はレス、死の女神イース様に頂いた名だ。この名を地獄まで持っていくがいい。」
82
お気に入りに追加
636
あなたにおすすめの小説
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない
兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる