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第ニ章

ちゃっかり女神イリス

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 イリスはたらふく親子丼を食べると、手を合わせてごちそうさま……と満足そうに言った。

「ごちそうさまでした。やはり私の見立て通り…とても美味しかったです。」

「女神の口に合ったのなら何よりだ。」

 てっきり、めちゃくちゃに舌が肥えていると思っていたのだが……イリスは案外そうでもないらしい。

 食後の紅茶を飲んでいる彼女へと、俺はある質問を投げかけた。

「そういえばだが、なぜイリスの姿が皆に見えるんだ?」

 女神は普通の人には見えないという話を聞いたばっかりなんだが。

「ふふっ♪それはですね、この空間に神気が満ち溢れているからです。神華樹は空間に神気を放出する習性があるので、皆さんも少なからずその影響を受けているのです。簡単に言ってしまえば、ここが簡易的な神界に近い場所になっているのですよ。」

「アレのせいってわけか。」

 チラリと神華樹へと視線を向ける。

「ちなみに、どうしてこんなに早くこの樹は成長したんだ?」

 明らかに異常なスピードで育った神華樹。絶対に何かがあるに違いない。

「それはですね、ちょっと私の神気を注いで成長をうながしちゃいましたっ♪」

 イリスはてへっ♪と舌を出してそう言った。下界に手は出せないとか言っておきながらこの女神は……やることはやってるなぁ。

「下界に手は出さないんじゃなかったのか?」

「あれ~?私そんなこと言いましたっけ~♪アルちゃんは言ってたかもしれませんけど~……。」

 すっかりとぼけている。こういう様子からは神々しさはまったく感じられないが……これでも本当に女神なんだよな。

 彼女の女神らしからぬ振る舞いにランも疑問を抱いたようで……。

「イリスってホントに女神なの?なんか全然そんな雰囲気ないけど。」

「ふふっ本当ですよ♪えいっ!!」

 イリスがおもむろにポーズを決めて手をかざすと、どこからともなく後光が射した。

「む、無理矢理感が凄いけどねぇ。」

「あははっ!!ピカーっ!!」

 イリスのポーズをシアは面白がって真似している。

「信じていただけましたか?」

「うーん、まぁでもヒイラギがそう言うんだから間違いないのよね?」

「あ、あぁ………………多分。」

 最初に出会ったときはしっかりしてたんだがな……。いや、あれもキャラを作っていたようだし。本性はこっちなんだろうなぁ。

 なんだかんだ、その女神らしからぬ振る舞いでみんなとの距離を急速に縮めたイリス。彼女のことを敵視していたドーナとランでさえ、すっかり懐柔されてしまっている。

 イリスの話だと、いつでもここに現れることができるようになったみたいだし……これから更により一層賑やかになりそうだ。
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