107 / 977
第ニ章
実食!!ソードフィッシュの甘酢あんかけ
しおりを挟むみんなが待っているテーブルへと料理を運んでいくと、ドーナとランの二人がいまだに言い争っていた。
彼女たちの前に料理を並べると、俺は二人の矛を収めさせるため、二人の頭にポンと手を置いた。
「二人とも、そこまでだぞ。もうご飯の時間だ。」
「「あっ……。」」
少し頭を撫でながらそう言うと、二人は同時に一気に顔を赤くして俯いてしまった。
「あれあれ~?どうしたんすか、そんなに顔を赤くして~、らしくないっす……ぎゅうっ!?」
「う、うるさい。」
ランのことをからかうべく、グレイスがパタパタと飛んで彼女に近づいたが、ランに首を鷲掴みにされてしまっている。
何はともあれ、二人の矛が収まったようで何よりだ。
できた料理をみんなで囲むと、一斉に手を合わせた。
「それじゃあいただきます。」
「「「いただきます!!」」」
みんなで一斉に食べ始める。一度料理を口にすると、先ほどいろんな感情を二転三転させていたドーナたちも自然と笑顔になっていく。
「自分で切ったからかしら……なんだかすごく野菜も美味しく感じるわ。」
「手をかけた分、美味しさもひとしおってやつだな。」
「最終的に美味しくしてくれたのはヒイラギなんだけどねぇ。」
「料理っていうのは最終的に美味しくなるものじゃない。いろんな工程、それこそ調味料を計ったり、野菜を切ったり……全部がかみ合って本当の意味で美味しくなるんだ。」
「シアたちが頑張ったからお兄さんの作る料理が美味しくなったの?」
「あぁ。」
「じゃあもっともっと頑張ったら、もっともっと美味しくなるかな!?」
「そうだな。」
「えへへぇ~じゃあシアいっぱい頑張る!!」
そう言ってくれたシアの頭を撫でる。
本当にいい子だ。こんな健気な子を差別する文化があるとは……獣人族というのはわからない。だが、もし今後獣人族の偉い奴に会う機会があったら絶対にこんなことは間違っていると、ハッキリ言ってやろう。
そんな想いを抱えながらも、俺はみんなで作ったソードフィッシュの甘酢あんかけを堪能することにした。
からりと揚がったソードフィッシュのから揚げに、たっぷりと甘酢餡をからめて口に運ぶ。
サックっとしたから揚げの食感に、シャキシャキの野菜の食感が合わさり噛んでいて心地いい。
ソードフィッシュのから揚げに、またこの甘酸っぱい餡がまたよく合う。後味はさっぱりでこれは箸が止まらない。
「美味しいなぁ……。」
そうぽつりと溢すと、隣に座っていたシアが満面の笑みでこちらを向いた。
「ね!!やっぱりすっごく美味しいの!!だからね、おかわり欲しい!!」
「はいよ、ドーナたちもおかわりするか?」
「もちろんもらうわ!!」
「アタイもあとちょっとだけ……。」
「自分はいっぱいほしいっす~!!」
そうしてみんなで今日もワイワイと夕食に舌鼓を打つのだった。
109
お気に入りに追加
631
あなたにおすすめの小説
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。
とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。
…‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。
「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」
これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め)
小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる