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第ニ章
二人の女神
しおりを挟む昼食を済ませた後、みんなで次はどこに行こうかと話し合いが始まった。行きたい観光場所はまだあるが、その前に一か所寄っておきたい場所があったので一つ提案してみることにした。
「みんな、少し教会に寄っていきたいんだが。いいかな?」
「あら?ヒイラギは神を信じているのかしら?」
そうランに問いかけられた俺は、大きく頷いた。
「まぁな。」
なんて言ったって、俺がここにいるのがその確たる証拠なのだ。
「アタイは別に構わないよ。」
「シアもお兄さんについてく!!」
「そうか、それじゃあ悪いが少し付き合ってくれ。」
お店で会計を済ませると、シュベールの教会へと向かった。
シュベールの教会は、庭園の真ん中に綺麗な噴水が設置してあった。周りは花が咲き乱れていて、なんとも幻想的だ。
「おやこんにちは、お祈りかい?」
教会の敷地に入ると、修道服を着たおばあちゃんが話しかけてきた。
「えぇ、今日街へ来たのでせっかくなのでお祈りしようかな……と。」
「若いのにえらいねぇ、メル様もお喜びになるだろうよ。」
ここで祀っているのはメルという女神なのか。はてさて、どんな女神なんだろうな。
「さて、祈ってみるか。」
教会の中へと入り、中にあった女神像の前で祈りを捧げた。すると、前回祈りを捧げたときと同じ感覚が体を包んだ。
閉じていた目を開けると、目の前には大きな湖があった。その湖の中心にはテーブルとイスがあり、女性が二人向かい合うように座っている。
その内の一人はイリスで、俺に気がつくと微笑みながら手招きしていた。
「いらっしゃいましたね、こちらへどうぞ。」
「大丈夫よ、湖に沈むのは悪い心を持ってる者だけだから。」
二人に促され湖へ足を踏み出すと、不思議なことに水面が歩けるのだ。
湖の上を歩いて二人に近付く。
二人のすぐ近くまで歩み寄ると、イリスと一緒にいた女性が口を開いた。
「どうぞ座って?イリスから聞いてはいたけど、本当に淀みのない心を持ってるのね。」
「そう……なのか?」
「えぇ、あなたが歩いてきたとき……水面に波紋1つたたなかったでしょ?湖がこれだけおとなしくしてるってことはそういうことなの。」
「ふふっ、メルの湖には心が映りますからね。」
心の映る湖……。不思議なものだな。
そして用意されていたもう一つの椅子に腰掛ける。
「さてっと、はじめまして私の名前はメル。水の女神よ。よろしくね。」
「俺はヒイラギ クレハだ。縁あってイリスにこの世界に転生させてもらった。よろしく頼む。」
水の女神メルと軽い自己紹介をすませ、女神とのお茶会は始まった。
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