95 / 1,052
第ニ章
不吉な当たり
しおりを挟む釣りを始めて一時間ほど経ったが、いまだにソードフィッシュは入れ食い状態だ。
因みに未だに俺の竿には一匹も食らいついていない……。
「しかし、どんだけいるんだ?まだまだ釣れるじゃないか。」
「おさかないっぱい!!でも少し疲れた~。」
「こんなにたくさんいたのは予想外よね~。」
「食物連鎖がきちんと行われていれば、こんなことにはならないはずなんだけど。」
確かにそうだな。これだけ広い湖だ、こいつらより強い存在がいてもおかしくはない。
仮にもし……そのような存在がいるとして考えると、そいつが意図的に食物連鎖を崩している。もしくは食物連鎖の頂点が最近になって変わったのか?
等々、脳内で様々な思考を巡らせていると……やっと俺の竿に待望の当たりがきた。
「ようやくきたかっ!!」
釣り竿をおもいっきり引っ張った。かなり大きな手応えだが……俺はある違和感を感じた。
「ん?なんか自分からこっちに来てないか?」
そう、何も抵抗せずにまっすぐこっちに向かってきているのだ。
…………なんだか嫌な予感がする。
「お兄さん頑張って!!」
そして水面にとんでもなく大きな影が浮かび上がる。
「みんな!!少し離れてくれ!!」
最後にぐいっと力を込めそれを釣り上げた。釣り針の先についていたものは…………。
「いひゃい!!いひゃいぃぃ~!!これとっへぇぇー!!」
…………なにも見なかったことにして帰ろうか。何でまた湖からドラゴンみたいなのが出てくるんだ。
口元に引っ掛かった釣り針をとろうと、必死になっているドラゴンのような魔物に目を向け、深いため息を吐く。
俺がため息を吐いていると、ランがそれを見て口を開いた。
「あら?あなたウォータードラゴンじゃない。こんなところに住んでいたのね。」
「んぐぐっ!!はぁっ!!やっと取れたぁ……。そういうあなたはサファイアドラゴンじゃないですかぁ。どうしてこんなところに?」
「ワタシはツガイのヒイラギに着いてきただけよ?」
「えっ!?あなたツガイできたんですかぁ!?あのオスとは無縁だったサファイアドラゴンに先を越されるなんて……不覚。」
ウォータードラゴンとやらはガックリとうなだれている。余程ショックだったらしい。
「あー、落ち込んでいるところすまないが、聞きたいことがあるんだ。」
「なんですかぁ?」
「最近ソードフィッシュが大量繁殖しているみたいなんだが、何か知らないか?」
「あー、それ多分私が原因ですねぇ。今まではお腹が空いたら適当に食べてたんですけど、流石に最近飽きてきちゃってあんまり食べてないんですよぉ。」
お前が原因か!!と、思わず声に出しそうになったが、それをぐっ……と飲み込んだ。
このウォータードラゴンが、またソードフィッシュ達を食べてくれるように何か手立てを考えないといけないようだな。
103
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる