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第ニ章
不吉な当たり
しおりを挟む釣りを始めて一時間ほど経ったが、いまだにソードフィッシュは入れ食い状態だ。
因みに未だに俺の竿には一匹も食らいついていない……。
「しかし、どんだけいるんだ?まだまだ釣れるじゃないか。」
「おさかないっぱい!!でも少し疲れた~。」
「こんなにたくさんいたのは予想外よね~。」
「食物連鎖がきちんと行われていれば、こんなことにはならないはずなんだけど。」
確かにそうだな。これだけ広い湖だ、こいつらより強い存在がいてもおかしくはない。
仮にもし……そのような存在がいるとして考えると、そいつが意図的に食物連鎖を崩している。もしくは食物連鎖の頂点が最近になって変わったのか?
等々、脳内で様々な思考を巡らせていると……やっと俺の竿に待望の当たりがきた。
「ようやくきたかっ!!」
釣り竿をおもいっきり引っ張った。かなり大きな手応えだが……俺はある違和感を感じた。
「ん?なんか自分からこっちに来てないか?」
そう、何も抵抗せずにまっすぐこっちに向かってきているのだ。
…………なんだか嫌な予感がする。
「お兄さん頑張って!!」
そして水面にとんでもなく大きな影が浮かび上がる。
「みんな!!少し離れてくれ!!」
最後にぐいっと力を込めそれを釣り上げた。釣り針の先についていたものは…………。
「いひゃい!!いひゃいぃぃ~!!これとっへぇぇー!!」
…………なにも見なかったことにして帰ろうか。何でまた湖からドラゴンみたいなのが出てくるんだ。
口元に引っ掛かった釣り針をとろうと、必死になっているドラゴンのような魔物に目を向け、深いため息を吐く。
俺がため息を吐いていると、ランがそれを見て口を開いた。
「あら?あなたウォータードラゴンじゃない。こんなところに住んでいたのね。」
「んぐぐっ!!はぁっ!!やっと取れたぁ……。そういうあなたはサファイアドラゴンじゃないですかぁ。どうしてこんなところに?」
「ワタシはツガイのヒイラギに着いてきただけよ?」
「えっ!?あなたツガイできたんですかぁ!?あのオスとは無縁だったサファイアドラゴンに先を越されるなんて……不覚。」
ウォータードラゴンとやらはガックリとうなだれている。余程ショックだったらしい。
「あー、落ち込んでいるところすまないが、聞きたいことがあるんだ。」
「なんですかぁ?」
「最近ソードフィッシュが大量繁殖しているみたいなんだが、何か知らないか?」
「あー、それ多分私が原因ですねぇ。今まではお腹が空いたら適当に食べてたんですけど、流石に最近飽きてきちゃってあんまり食べてないんですよぉ。」
お前が原因か!!と、思わず声に出しそうになったが、それをぐっ……と飲み込んだ。
このウォータードラゴンが、またソードフィッシュ達を食べてくれるように何か手立てを考えないといけないようだな。
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