上 下
93 / 1,052
第ニ章

魔物釣り

しおりを挟む

 市場を出て街の北の関所を目指す。ドーナが言うには、そこから出るとすぐに湖が見えるらしい。

「湖に行く前にちょっとここの店に寄っていくか。」

 道中で立ち寄ったのは釣り具屋だ。

「いらっしゃいませ。」

「今、湖で増えている魔物を釣っても折れない竿が欲しいんだが。」

「それぐらい強度のある竿になりますと、結構お高くなりますがよろしいですか?」

「構わない。見せてくれ。」

「かしこまりました。」

 俺達は店の奥に案内される。その途中でシアがあることを問いかけてきた。

「ねぇねぇ、お兄さん。釣りって何するの?」

「魚を湖から引っ張りあげる遊びだ。」

「おさかなを引っ張るの!?面白そう!!」

 まぁ、釣るのは普通の魚ではないが。ステータス的に何も問題ないだろう……多分。

「こちらの竿であれば、あの魔物でも折れないですね。」

「よし、それじゃあこれを4本もらおう。」

「かしこまりました。白金貨2枚になります。」

 おおぅ……本当に意外としたなぁ。4本で白金貨2枚か……。まぁ、これからも使えるだろうから一生ものと思えば、安いものか。

「これで、大丈夫か?」

「はい、確かに白金貨2枚いただきました。毎度ありがとうございます。」

 買った竿をバッグにしまって店を後にする。次に関所を訪れると、そこにいた兵士にあることを勧告された。

「今、湖は危険な魔物が増殖していて危ないから、近づかないでくださいね?」

「わかりました、ありがとうございます。」

 勧告を聞いたふりをして関所を通った。すると、すぐ向こうに大きな湖が見えてきた。

「おぉ、大きいな。」

「ふわあぁ~おっきい~!」

「でも、ここからだと魔物の姿は見えないわね。」

「水棲の魔物みたいだし、流石にもう少し近付かないとねぇ。」

 まだ少し湖までは距離がある。あそこの兵士に見つからないように少し遠回りして、湖に近付こう。

「よし、行こう。」

 みんなで歩きだし、すこし遠回りして湖の畔を目指した。

 丁度関所からも死角になる位置に辿り着き、改めて湖を近くで眺めてみた。

「キレイな湖だな。」

 水は透きとおって、水草が青々としている。これだけ綺麗な湖ならきっと美味しい魚もいるはずだ。
 それ故に……漁師の人達を困らせている魔物は許せない。

「さて、やるか。」

 買ってきた竿を取り出し、みんなに渡していく。

「お兄さん、これどうやって使うの?」

「今やってみせるからな。ここをこうしてほいっと!!」

 巻き付けていた糸を外し、餌をつけた針を湖へと放り投げた。因みに今回、餌はシア達が大量に採っていた川魚を切り身にしてつけている。

「えっと、これをつけて……えい!!」

 シアが釣り竿を放ると、餌のついた針が遠くまで飛んでいく。

「やったぁ!!シアもできた!!」

「ワタシもやろっと、えいっ!!」

「釣りなんて久しぶりだねぇ。」

 みんな各々仕掛けを投げ終え、後は件の魔物が引っかかるのを待つのみとなった。
 そんなとき、グレイスがパタパタと小さい体で俺の肩に飛んできた。

「あの~、自分はどうしたらいいっすか?」

「グレイスはシアが釣った魔物を倒してくれ。」

「了解っす!!頑張るっすよ~。」

 グレイスは小さい体のまま張り切っていた。原寸大だとかなり厳つい見た目だが……こうして小さい体だと、なかなかどうして可愛く見えるな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

実力を隠して勇者パーティーの荷物持ちをしていた【聖剣コレクター】の俺は貧弱勇者に【追放】されるがせっかくなので、のんびり暮らそうと思います

jester
ファンタジー
ノエル・ハーヴィン……16才、勇者パーティー所属の荷物持ちにして隠れ【聖剣コレクター】である彼は周りには隠しているものの、魔法や奇跡を使えない代わりにこの世のありとあらゆる剣の潜在能力を最大まで引き出し、また自由に扱えるといった唯一無二のスキル【ツルギノオウ】を持っていた。ある日、実力を隠しているために役立たずと勇者パーティーを追放されてしまうノエルだったが、追放という形なら国王に目を付けられずに夢だった冒険者ができると喜んで承諾する。実は聖剣の力を使い勇者達を助けていたがノエルが抜けた穴は大きく、勇者達は徐々に没落していく事となる。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い異世界転生。何も成し遂げることなく35年……、ついに前世の年齢を超えた。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...