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第ニ章
魔物釣り
しおりを挟む市場を出て街の北の関所を目指す。ドーナが言うには、そこから出るとすぐに湖が見えるらしい。
「湖に行く前にちょっとここの店に寄っていくか。」
道中で立ち寄ったのは釣り具屋だ。
「いらっしゃいませ。」
「今、湖で増えている魔物を釣っても折れない竿が欲しいんだが。」
「それぐらい強度のある竿になりますと、結構お高くなりますがよろしいですか?」
「構わない。見せてくれ。」
「かしこまりました。」
俺達は店の奥に案内される。その途中でシアがあることを問いかけてきた。
「ねぇねぇ、お兄さん。釣りって何するの?」
「魚を湖から引っ張りあげる遊びだ。」
「おさかなを引っ張るの!?面白そう!!」
まぁ、釣るのは普通の魚ではないが。ステータス的に何も問題ないだろう……多分。
「こちらの竿であれば、あの魔物でも折れないですね。」
「よし、それじゃあこれを4本もらおう。」
「かしこまりました。白金貨2枚になります。」
おおぅ……本当に意外としたなぁ。4本で白金貨2枚か……。まぁ、これからも使えるだろうから一生ものと思えば、安いものか。
「これで、大丈夫か?」
「はい、確かに白金貨2枚いただきました。毎度ありがとうございます。」
買った竿をバッグにしまって店を後にする。次に関所を訪れると、そこにいた兵士にあることを勧告された。
「今、湖は危険な魔物が増殖していて危ないから、近づかないでくださいね?」
「わかりました、ありがとうございます。」
勧告を聞いたふりをして関所を通った。すると、すぐ向こうに大きな湖が見えてきた。
「おぉ、大きいな。」
「ふわあぁ~おっきい~!」
「でも、ここからだと魔物の姿は見えないわね。」
「水棲の魔物みたいだし、流石にもう少し近付かないとねぇ。」
まだ少し湖までは距離がある。あそこの兵士に見つからないように少し遠回りして、湖に近付こう。
「よし、行こう。」
みんなで歩きだし、すこし遠回りして湖の畔を目指した。
丁度関所からも死角になる位置に辿り着き、改めて湖を近くで眺めてみた。
「キレイな湖だな。」
水は透きとおって、水草が青々としている。これだけ綺麗な湖ならきっと美味しい魚もいるはずだ。
それ故に……漁師の人達を困らせている魔物は許せない。
「さて、やるか。」
買ってきた竿を取り出し、みんなに渡していく。
「お兄さん、これどうやって使うの?」
「今やってみせるからな。ここをこうしてほいっと!!」
巻き付けていた糸を外し、餌をつけた針を湖へと放り投げた。因みに今回、餌はシア達が大量に採っていた川魚を切り身にしてつけている。
「えっと、これをつけて……えい!!」
シアが釣り竿を放ると、餌のついた針が遠くまで飛んでいく。
「やったぁ!!シアもできた!!」
「ワタシもやろっと、えいっ!!」
「釣りなんて久しぶりだねぇ。」
みんな各々仕掛けを投げ終え、後は件の魔物が引っかかるのを待つのみとなった。
そんなとき、グレイスがパタパタと小さい体で俺の肩に飛んできた。
「あの~、自分はどうしたらいいっすか?」
「グレイスはシアが釣った魔物を倒してくれ。」
「了解っす!!頑張るっすよ~。」
グレイスは小さい体のまま張り切っていた。原寸大だとかなり厳つい見た目だが……こうして小さい体だと、なかなかどうして可愛く見えるな。
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