上 下
92 / 977
第ニ章

市場の異変

しおりを挟む

 街の中を歩いていると、やはり一番目につくのはこの水路だ。

「この水路は湖から引いているのかな?」

「そうだよ、近くにある大きな湖から引いてきてるのさ。」

 湖からか……。馬車で来たときは見えなかったが、奥の方にあるのかな?

「お兄さん、湖ってどんなところ?」

「とても大きい水溜まりだ。」

「ふわあぁ~、面白そう!!」

 シアだけでなく、俺も楽しみで仕方がない。どんな生き物が湖にいるんだろうか?興味が尽きない。

「そろそろ大きな市場が見えてくるよ。」

「市場か……水の街ってぐらいだからきっと魚がたくさん並んでそうだな。」

「どんな魚がいるのかしらね?美味しそうなのがいるといいんだけど。」

「そうだな、良いのがあったら買ってみようか。」

「ホント!?お兄さん!!」

「あぁ。」

 わーいとシアが喜び、グレイスをおもいっきりギューって抱き締めている。

「きゅぅっ……。」

 ……あっ、グレイスが落ちてる。

 目が若干白目になりグロッキーになっているグレイス。やはりシアの魔改造された力で抱きしめられると、ワイバーンでもキツイらしい。

「おぉ、着いたな。」

 市場に着くと魚の匂いがしてきた。この匂いを嗅ぐと市場に来たって感じがするな。

「おさかなの匂い!!」

 シアは早くもよだれを垂らしそうである。しかし、ここである異変に俺は気付いた。

「なんかまだ朝なのに閉まってる店が多いな。」

 まだ陽は半分も昇っていない。普通ならばまだ魚が残っていて営業している店の方が多いはずだ。
 しかし今の状況を見た限り、閉店している店の方が多いような……。

 あそこの店の人に聞いてみるか。

 唯一店を開いていた魚屋へと赴くと、その店の店員に話しかけた。

「すみません、今日はあんまり魚とか入ってないんですか?」

「あぁ、最近湖で魔物が増殖しててな……漁に入れないんだ。」

 よし決めた、その魔物倒す。せっかくここまできて、湖の魚が食べられないなんて笑えないからな。

「なるほど、そうだったんですね。ちなみに、どんな魔物かってわかります?」

「あぁ、鋭い牙を持った魚でな。網にかかった魚を群れで根こそぎ食いつくしちまうんだ。」

 ふむ、あれか?ピラニアみたいな感じなのかな?それなら魚を餌に釣りしてればかかりそうだが……。

 その魔物をどう倒そうか考えていると、ランが店員へと問いかける。

「ねぇねぇ、その魔物って美味しいのかしら?」

「え?あ、あぁ一応高級食材らしいが、何せ数が多いから相手にするのは大変だぞ?今、ギルドが金級冒険者かき集めてるところなんだ。」

「だそうよ?」

「うん、ひとまず一回様子を見に湖に行ってみるか。」

「あ、あんた達正気か!?今の湖に近づくなんて自殺行為だぞ!?」

「危なかったら逃げるんで、大丈夫です。」

 まぁ絶対逃げないけどな!!意地でも湖の平和を取り戻してやる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

処理中です...