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第ニ章
唐突な来訪者
しおりを挟むランに寝ているシアをおぶって馬車を降りてもらった。
「今日はもう中に入ってゆっくりしよう。」
「えぇ、そうね。シアも疲れて寝ちゃってるし。」
みんなで中に入りソファーに腰かけた。
「ふぅ、グレイスは疲れてないか?」
「自分はまだまだ大丈夫っすよ~。」
あれだけ大きな馬車を引っ張っても余裕があるのか……凄まじい体力だな。
「二人は大丈夫か?」
「ワタシは全然大丈夫ね、ただ、あんまり景色が変わらないから退屈ではあったけど。」
「アタイも大丈夫だよ、このぐらいの旅は慣れてるからねぇ。」
「そうか、一先ず今はゆっくり休んでくれ。」
ゆったりしながら俺は淹れたコーヒーを口にする。その最中あることを思い出した。
そういえば神華樹の種……だったか。あれはどうすればいいんだろうな?植物なら土に植えてみるか。
おもむろにバッグから神華樹の種を取り出した。
「それはダンジョンで手に入れた種だね?」
「あぁ、試しに植えてみようと思ってな」
植木鉢を店の奥から持ってきて、観葉植物の土を少し貰って種を埋めた。
「どんな木になるのかしらね。」
「図鑑にも載ってない植物だから楽しみだな。」
少し土に水を含ませ窓際の日の当たる所に置く。普段はバッグの中にしまっておくからな。芽がでるのに時間がかかるかもしれない。
それからゆったりと過ごしていると不意にハウスキットのドアが叩かれた。
「ん、こんな時間に……いったい誰だ?」
陽はすでに沈んできて、辺りもだいぶ暗くなってきている。こんな時間に歩き回るだろうか?
俺は警戒しながらも、ドアに手をかけて向こうの人物に声を掛ける。
「こんな時間にどうしました?」
「おぉ!!やはり人がいらっしゃいましたか!!失礼、私は行商人をやっております。ミルタと申します。」
ミルタ……ん?どっかで聞いたような名前…………あぁ!!思い出したぞ、ギルドの依頼書にあった名前だな。
「実はシュベールへ向かっている途中に、強い魔物に襲われ馬車を破壊されてしまいまして……。」
なるほど、この人は命からがら逃げてきたって訳だな
「状況は理解しました。取りあえず中へどうぞ。詳しい話は中で伺います。」
「かたじけない、失礼します。おぉ!!なんと明るい……。」
取りあえず話を聞いてみようか、悪人には見えないしな。
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