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第一章

ミニグレイス

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 気が付けば、周りが薄暗くなり始めていた。夕飯の仕込みをしなければならないな。

「さ、そろそろ中に入ろうか。」

「そうね、お腹も空いてきたわ~。」

「今日は動いたからアタイもお腹ペコペコだよ。」

「お兄さんのお料理…今日も楽しみ!!」

 そしてみんな普通にハウスキットの中に入って行くが、俺はひとつあることが不安だった。

「あぁ~、グレイス入れるかな。」

 グレイスが扉を通れるか……なかなかきわどいラインなのだ。

 扉とグレイスを交互に眺めていると、グレイスが口を開く。

「あっ、自分小さくなれるんで大丈夫っすよ!!んん~っ!!」

 いったいどういう事かと思っていると、グレイスが体に力を入れ始めた。すると、手に抱えられるサイズのぬいぐるみのようなサイズまで小さくなった。

「便利なスキルだな。」

「ワタシの人化には及ばないわね。」

「人化は上位のドラゴンしか覚えれないっすからね~。ワイバーンの自分には無理っす。」

 ランが勝ち誇っていると、こちらの騒ぎに興味を惹かれたシアが駆け寄ってきた。

「ふわぁぁ~、可愛い!!」

 シアが小さくなったグレイスをみて目を輝かせている。

「グレイス、良かったらシアに抱かれててくれないか?」

「お安いご用っすよ~。」

 グレイスがパタパタと翼を羽ばたかせ、シアの胸付近まで飛んで行った。

「えへへ~♪ぎゅ~っ!!」

「ぐえっ!!えっ!?あれ?この子ちょっと子供の力じゃなくないっすか!?ちょ、ちょっとヒイラギさん!?」

 どうやらシアは喜んでくれているようだ。グレイスが何か言っているが、聞こえない振りをしておこう。

「今日はダンジョンで狩ったエルダーシュリンプをつかってエビチリでも作ろうか。」

「エビチリ……どんな料理なのかしら?」

「エビを少し辛いソースに絡めて食べる料理だ。」

 そう説明していると、シアが首をかしげている。

「お兄さん、辛いってどんな味?」

「舌が少しピリッとする味だな。」

「舌がピリッ?」

「食べればわかるよ。」

「楽しみ~♪今日もお手伝いしてもいい?」

「あぁ、もちろんだ。」

「ワタシ達もやるわよ!!今日は負けないわよドーナ!!」

「上等だよ!!」

 二人も手伝ってくれるらしい。これなら今日もすぐに作れそうだ。

「自分も手伝った方がいいっすか?」

 そうグレイスが聞いてきた。周りがみんな手伝うから自分もやらなければ、とか思っているのだろうか?

「いや、大丈夫だ。グレイスはシアの事を見守っててくれ。」

「そういうことならお安いご用っす!!」

「よし、それじゃあ作ろう。」

 今日もみんなで一緒に厨房に入って料理を始めるのだった。
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