74 / 1,052
第一章
ミニグレイス
しおりを挟む気が付けば、周りが薄暗くなり始めていた。夕飯の仕込みをしなければならないな。
「さ、そろそろ中に入ろうか。」
「そうね、お腹も空いてきたわ~。」
「今日は動いたからアタイもお腹ペコペコだよ。」
「お兄さんのお料理…今日も楽しみ!!」
そしてみんな普通にハウスキットの中に入って行くが、俺はひとつあることが不安だった。
「あぁ~、グレイス入れるかな。」
グレイスが扉を通れるか……なかなかきわどいラインなのだ。
扉とグレイスを交互に眺めていると、グレイスが口を開く。
「あっ、自分小さくなれるんで大丈夫っすよ!!んん~っ!!」
いったいどういう事かと思っていると、グレイスが体に力を入れ始めた。すると、手に抱えられるサイズのぬいぐるみのようなサイズまで小さくなった。
「便利なスキルだな。」
「ワタシの人化には及ばないわね。」
「人化は上位のドラゴンしか覚えれないっすからね~。ワイバーンの自分には無理っす。」
ランが勝ち誇っていると、こちらの騒ぎに興味を惹かれたシアが駆け寄ってきた。
「ふわぁぁ~、可愛い!!」
シアが小さくなったグレイスをみて目を輝かせている。
「グレイス、良かったらシアに抱かれててくれないか?」
「お安いご用っすよ~。」
グレイスがパタパタと翼を羽ばたかせ、シアの胸付近まで飛んで行った。
「えへへ~♪ぎゅ~っ!!」
「ぐえっ!!えっ!?あれ?この子ちょっと子供の力じゃなくないっすか!?ちょ、ちょっとヒイラギさん!?」
どうやらシアは喜んでくれているようだ。グレイスが何か言っているが、聞こえない振りをしておこう。
「今日はダンジョンで狩ったエルダーシュリンプをつかってエビチリでも作ろうか。」
「エビチリ……どんな料理なのかしら?」
「エビを少し辛いソースに絡めて食べる料理だ。」
そう説明していると、シアが首をかしげている。
「お兄さん、辛いってどんな味?」
「舌が少しピリッとする味だな。」
「舌がピリッ?」
「食べればわかるよ。」
「楽しみ~♪今日もお手伝いしてもいい?」
「あぁ、もちろんだ。」
「ワタシ達もやるわよ!!今日は負けないわよドーナ!!」
「上等だよ!!」
二人も手伝ってくれるらしい。これなら今日もすぐに作れそうだ。
「自分も手伝った方がいいっすか?」
そうグレイスが聞いてきた。周りがみんな手伝うから自分もやらなければ、とか思っているのだろうか?
「いや、大丈夫だ。グレイスはシアの事を見守っててくれ。」
「そういうことならお安いご用っす!!」
「よし、それじゃあ作ろう。」
今日もみんなで一緒に厨房に入って料理を始めるのだった。
135
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
転生獣医師、テイマースキルが覚醒したので戦わずしてモンスターを仲間にして世界平和を目指します
burazu
ファンタジー
子供の頃より動物が好きで動物に好かれる性質を持つ獣医師西田浩司は過労がたたり命を落とし異世界で新たにボールト王国クッキ領主の嫡男ニック・テリナンとして性を受ける。
ボールト王国は近隣諸国との緊張状態、そしてモンスターの脅威にさらされるがニックはテイマースキルが覚醒しモンスターの凶暴性を打ち消し難を逃れる。
モンスターの凶暴性を打ち消せるスキルを活かしつつ近隣諸国との緊張を緩和する為にニックはモンスターと人間両方の仲間と共に奮闘する。
この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも連載しています。
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる