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第一章

チームプレー

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 こいつデモンより硬いな。ドーナとランの攻撃をモロに食らって平然としている。全く効いている様子がない。
 外側からの攻撃が効かないなら内側からだな……。

「ドーナ!!ラン!!今出せる全力の一撃をもう一回くれ!!」

 そう二人に声をかけると……。

「クク、貴様何を考えている?」

 余裕の笑みを浮かべながら羊の化け物が語りかけてくる。しかも一撃一撃が必殺の威力を持った拳を繰り出しながらだ。

「今にわかるさ。」

 拳を弾き、流しながら答えを返す。

 そして俺は繰り出される1つの拳に狙いを定めた。

「その拳……貰うぞ!!」

 後ろに流すのではなく力の流れを変える。腕の下へ手を当て上へ流す。そしてまた胴体が空いた。

 完璧なタイミングで二人が攻撃を加えた。二人の攻撃の力が化け物の中心でぶつかるほんの一瞬……その瞬間を狙って俺もさらに打撃を加える。

 すると、羊の化け物は苦しみながら口から吐血した。

「ガハッ!!」

 崩れ落ちた羊の化け物に俺は先ほどの攻撃の説明をしてやった。

「共振って知ってるか?2方向だけの力のぶつかり合いだとお互いの力は消滅するが、もう1つ追加で加えてやると中で反響するんだよ。」

 これは音の原理と同じで音波がぶつかり合って広がっていくのを取り入れた技だ。チームプレー向きの技だな。

「ぐぅ……クク、確かに効いた。」

「だろ?外側は強くても内臓は脆いだろうからな。」

 羊の化け物は膝をつき立ち上がれないようだ。

 まぁ、内臓に3人分の攻撃をモロに喰らったようなものだからな。立ち上がれないのも無理はない。

「グッ!!足に力が入らん。……殺せ我はもう闘えぬ。」

 潔くそう言った羊の化け物だが……俺はその言葉に対して首を横に振った。

「断る、最初からお前は俺達を殺すつもりがなかっただろ?だから俺もお前は殺さない。」

 きょとん……とした表情を浮かべた羊の化け物だったが、次の瞬間にはニヤリと笑い、こちらに質問を投げかけてきた。

「クク、いつ気づいた?」

「ドーナとランが攻撃した時だ、今の二人ならお前の拳で一撃で即死させられるはずだ。なのに気合いだけで弾き飛ばした……。殺せるチャンスで殺さないのはおかしいと思ってな。」

「あの一瞬でそこまで読んでいたのか?クク、長生きするものだな。こんなにも強い人間と出会えるのだから。して人間……名はなんという?」

「ヒイラギ クレハだ。そういうお前は何て言うんだ?」

「ヒイラギか覚えたぞ。我が名はだ。このダンジョンのキーパーを担っている。目当ての宝はこの先だ、行け。」

「あぁ、行かせてもらう。」

 バフォメットを倒し、三人で奥の扉の向こうへ向かうのだった。
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