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第一章
みんなで料理を
しおりを挟むドーナ達に引きずられ森の中のハウスキットを展開した場所まで帰ってくると、もう陽は落ちかけていた。
「つ、着いてしまった。」
やっと解放された俺は、ハウスキットのドアを開けて中に入り電気をつけた。陽が落ち始めているため、余計に明るく見えたのかランがポツリとつぶやく。
「それにしても明るいわね~。」
「ちなみにこれは火の灯りじゃないんだぞ?」
「えっ、そうなのっ!?じゃ、じゃあいったいどういう原理でこれは……。」
興味をそそられたのか、食い入るようにランは電球をのぞき込み始める。
あんなに近くで見てまぶしくはないのだろうか。まぁそんなことはさておき、今晩の夕食について考えるとしよう。
「みんな、夕飯は何がいい?」
ひとまずみんなの意見を聞くことにする。これで好みの食べ物とかがわかればいいな。
そんな思惑を含んだ俺の問いかけに、真っ先にシアが手を挙げて答えてくれた。
「シアはお魚さんがいい!!」
「ワタシも昼にいっぱいお肉食べたから魚がいいわね。」
「アタイもそれでいいよ。」
うまい具合に三人とも同じ気持ちのようで、魚が食べたいらしい。なら要望通り魚を使った料理を作るとしよう。
「そうか、なら何か魚を使って作るよ。」
そして1人厨房に向かおうとすると……。
「お兄さん、シアもお手伝いしたい!!」
突然シアが腰に飛びつき、こちらを見上げながら言った。
「そうか、ありがとう。それじゃあ一緒にやってみるか。」
シアの気持ちを汲み取り、簡単なお手伝いをさせてあげようかな……と思い、手を繋いで厨房に向かおうとすると、シアに感化されたのか二人も声を上げた。
「ワタシにも手伝わせてほしいわ!!」
「アタイもできることがあれば……。」
「わかったわかった、それじゃあまずみんなこれに着替えてくれ。」
ドーナとランの二人には俺と同じコックコートを手渡す。その様子を見ていたシアが目を輝かせながら自分の分をねだってくる。
「お兄さん!!シアは?」
「シアはこれだ。」
シアには子供用の可愛い刺繍が入ったエプロンを渡してあげた。これは以前、日本で親子向けの料理教室を開いたときに用意していたものだ。
「ふわぁぁ、かわいい~。」
どうやらシアは気に入ってくれたらしく、エプロンを身につけくるりと回っている。そしてコックコートに着替えたドーナ達も合流したところで、さっそく調理に入ろうと思う。
「それじゃあやろうか。今日はカグロの漬け丼にしよう。」
今日作るメニューをみんなに発表すると、ドーナが首をかしげながら質問を投げかけてきた。
「カグロは魚だって知ってるけど、そのヅケ?ってのはなんだい?」
「調味料を混ぜた液体に浸して、味を染み込ませる調理法だ。カグロを切るのは俺がやろう。ドーナとランは、二人でその漬けにするための調味料を計ってくれないか?」
「「わかった!!」」
二人に調味料を量る役割をお願いすると、快く引き受けてくれた。そして今か今かと自分の役割を伝えられるのを待っているシアには……。
「シアは今からお米のとぎかたを教えるからやってみような?」
「うん!!頑張る!!」
元気よく答えてくれたシアの頭をぽんぽんと撫でて、ドーナとランには漬け用の調味料の分量を記した紙を手渡した。計量器の使い方もすぐに理解してくれたようで、すぐに作業に取り掛かってくれた。
さぁ、こちらも始めよう。
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