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第一章

ギルドへ

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 ハウスキットを出発し、森を抜けて関所でシアとランの分の銀貨を払い街へ入った。そしてまっすぐギルドへ向かう。

「何もないといいんだが。」

 ギルドに向かう途中でぽつりとつぶやく、なんせミースにドーナとの一部始終を見られているため、噂が立っている可能性がある。
 内心少し不安になりながら歩いていると、あっという間にギルドに着いた。しかしギルドに着くと、そこにあるはずの扉がなかった。

「あ、またやっちまったねぇ。夢中で飛び出しちまったから、ぶち破ってたみたいだ。」

 どうやら犯人はここにいたらしい。ドーナが思い出したようにつぶやいている。言動からして、戦っていた現場に駆け付ける時に蹴破ってしまったのだろう。

 苦笑いする彼女とともにギルドの中に入ると……。

「お待ちしてましたよヒイラギさん、ドーナさん♪」

「げ、ミース。」

 まるで俺たちを待ち構えていたように、ギルドの中でミースがにこやかに微笑みながら待っていた。そしてドーナに近づくと、彼女の耳元で囁くように言う。

「うふふっ、ドーナさん?ギルドのお仕事の事が気になって仕方ないんですよねっ?」

「うっ、なんでそれを……。」

「そんなドーナさんに朗報で~す!!ただいまより私、ミースがこのギルドの取締役に就任しました~♪」

 思わぬミースの言葉に混乱するドーナ。

「なっ、なにがどうなってんだい!?」

「ですから~、ヒイラギさんと楽しんでくださいねってことですよ!!と、いうわけでドーナさんはもうお仕事気にしなくていいですからね?」

 彼女なりの優しさなんだろうか?急に言われたせいでドーナはひどく混乱しているが……まぁ、せっかくミースが彼女の気持ちを汲み取って行動したのだ。それを無碍にすることはないだろう。

 新たにギルドの取締役になったらしいミースに、俺は一つお願いをすることにした。

「あー、それじゃあドーナに最後の仕事を任せたいんだが……。」

「なるほど、記憶に残るような最後の仕事ですね!?」

「いや……そういうことじゃなくてだな。」

「いえいえ、わかりますよ。出会った場所は記憶に残しておきたいですもんね。それではどうぞごゆっくり~!!」

 あぁ……凄い勢いで勘違いをされている。とはいえ何とかうまいこと進んだし……この後の処理はドーナに任せよう。

「ど、ドーナ?混乱している所悪いんだが、二人のステータスカードを作ってくれないか?」

「あ、あぁ!!わかったよ。」

 やっと正気に戻ったらしいドーナは、シアとランを連れて2階へ歩いていった。そして待つこと5分ほどで三人とも戻ってきた。

 ちなみに待っている間、俺はミースを含むたくさんの受付嬢たちに質問攻めにされていた。

「待たせたねヒイラギ、ラン達のステータスカードはちゃんと作ってきたよ。」

 シアとランは各々自分のカードを持っている。

 そしてドーナはチラリとミースに視線を向けた。

「まったく、人がいない間に勝手にいろいろやってくれたねぇ。」

「ふふっ、でもドーナさんとっても嬉しそうな顔してますよ?」

「う、うるさいよ……。」

 そうぼやくドーナをミースがからかう。確かにミースの言う通り、今のドーナの表情はとてもうれしそうだ。

 さてさて、シア達のステータスカードも作れたし今日のところは退散しようかな。ミース達に見送られ俺たちはギルドを後にする。

 その帰り道……。

「少し買い物をして帰りたいんだが、いいか?」

「何か買うのかしら?」

「人数分の布団と毛布を買わないと。」

「あら、そんな細かいこと気にしてたの?ワタシ最初から一緒に寝るつもりだったけど?」

「はへ?」

「アタイもヒ、ヒイラギと一緒でいい……けど。」

「いや、ダメだ買おう。」

 二人の意思を尊重したい気持ちはやまやまだが、それはそれでいろいろと問題が……な。

 いざ寝具を扱っているお店へと入ろうとすると、急に二人に両腕をがっちりとホールドされてしまう。

「ダメよ?ワタシ、ヒイラギと一緒じゃなきゃ嫌だもの。」

「そ、そうだぞ。」

「シアもお兄さんと一緒がい~い!!」

「え、あ……あぁ……。」

 いくら手を伸ばそうとしても、二人にホールドされた腕は全く動かせない。そのままずるずると引きずられ、関所を通り森への道を強制的に引き返す羽目になったのだった。
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