上 下
50 / 973
第一章

ティータイム

しおりを挟む

 自己紹介も終わって一段落ついたから、いったん区切りをつけて、みんなでティータイムにしよう。

「さて、ホントはドーナへのお礼にと作ったものだが今回はみんなで食べることにしよう。」

 以前ドーナにごちそうしてもらった、焼き菓子のお礼に…と作っておいたベリリの実をふんだんに使ったケーキを取り出した。

「ふわぁぁ、凄いきれい。」

「何て言うかもう芸術よね?」

「こ、こんな凄いものまで作ってたのかい。」

 各々ケーキを見て目を輝かせている。どうやらみんなこのような造形のお菓子を見るのは初めてらしい。
 こっちの世界では、こういった類のお菓子はないのかな?後でお菓子とかを専門に扱っているお店とかにも行ってみたいところだな。

 まぁ、それはさておき俺はこのケーキがどういうお菓子なのかみんなに説明する。

「これはケーキと言って、よく誕生日とかお祝い事の時に食べるお菓子だ。切り分けるから待っててくれ。」

 ホールのケーキを1/8カットに切り分け、皿にのせフォークとともにみんなの前におく。

「シアはオレンジジュースでいいな?ドーナとランは何を飲む?」

「アタイは紅茶がいいねぇ。」

「ワタシもドーナと一緒でいいわ。」

 3人分の紅茶を淹れ、シアのオレンジジュース片手にテーブルへ向かった。そしてみんなに飲み物を配り席に着く。

「さて、食べようか。」

 再びいただきますと挨拶をしてから、シア達は一斉にケーキを食べ始めた。

 さてさて、どんな反応をしてくれるか楽しみだな。手元にある紅茶を飲みながらみんなの反応を観察する。

「ふわふわ~、とっても甘い!!」

「美味しいわ……芸術的な上に美味しいとか反則よ!!」

「アタイの知ってるどのお菓子とも違う。こんなふわっふわで甘酸っぱくて……最高だよ。」

 ケーキはやはりとても好評のようだ。

 みんなの反応に満足していると、おずおずとシアが俺に話しかけてきた。

「ヒイラギお兄さん。ケーキもう無くなっちゃった。」

 耳をぺたんとさせながら物足りなさそうにそう言った。

「もう一個食べるか?」

「うん!!」

「あっ!!ワタシも食べた~い!!」

「あ、アタイももう一個……。」

 シアがおかわりするのを皮切りに、ドーナとランも空になったお皿を手渡してくる。まさに大好評だ。

 また暇があるときに新しいお菓子を作っておこう。

 そしてあっという間にベリリの実を使ったケーキがなくなり、楽しいティータイムが終わりに近づいてきた。

 そろそろ今後のことについて話し合うことにしようか。

「さて、これからのことについて話し合いたいんだが。」

 そう新たな話題を切り出すと、シアが真っ先に手を挙げて答えてくれた。

「シアはお兄さんにずっと付いてく!!」

「もちろんワタシもそのつもりよ?」

「アタイも……と言いたいところだけど、ギルドの仕事がねぇ。」

 ドーナは残念そうに言った。ドーナはこの街のギルドの取締役だし、そう簡単に決められることではないだろう。

「そうだな、まぁまだこの街から動く気はないから。それはゆっくり解決していこう。」

「すまないねぇ。」

「大丈夫だ、気にする必要はない。あと、今後のためにシアとランのステータスカードを作らないとな。」

「あぁ、それはアタイの方で対応しておくよ。流石にシアやランの事が表沙汰になるとやばいからねぇ。」

 シアは獣人族だし、ランに関してはドラゴンだからな。二人のことが表沙汰になるのはまずい…それはドーナも重々承知してくれているようだ。

「すまない、助かる。」

「じゃあとりあえず、今からそのドーナのギルドに行けばいいのかしら?」

「ひとまずはそうだな。」

 暗くなる前に、俺達はシアとランのステータスカードを作るためにギルドへと向かうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

料理を作って異世界改革

高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」 目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。 「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」 記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。 いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか? まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。 そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。 善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。 神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。 しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。 現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...