40 / 1,052
第一章
舞い降りた災厄
しおりを挟む外でドオォン!!という大きな音がした。その衝撃波でハウスキットがぎしぎしと音を立てる。なにやらただ事ではなさそうだ。
一度外へ出て安全を確認してきたほうがよさそうだな。
「シア、絶対にここから出るなよ?ちょっと外の様子を見てくるからな。」
びっくりして縮こまっているシアにそう声をかけた。
「う、うん。ヒイラギお兄さんも気を付けてね?」
「あぁ、もちろんだ。」
戻ってくるとシアと約束をして、俺は音がした外のほうへと向かう。
「これは……。」
今の衝撃波のせいだろうか、オーリオの木が薙ぎ倒されている。いったい何が起こったんだ?
……その答えは空から舞い降りてきた。
風圧により舞い上がった土埃の中から姿を現したのは、どこまでも蒼く澄んだ鱗に身を包んだドラゴン。
その美しさに一瞬見とれそうになるが、俺はある違和感に気付いた。
(このドラゴンなんでこんなにボロボロなんだ?)
そう、蒼いドラゴンは体中ボロボロになり、いたるところから出血していた。警戒しながら蒼いドラゴンを観察していると、不意にドラゴンが口を開いた。
「不味い、ブレスか!?」
カオスドラゴンとの戦いで喰らったアレが頭をよぎり、すぐさま構えるが、その蒼いドラゴンは一向にブレスを撃ってくる気配がない。
その代わり、か弱い声で俺に助けを求めてきた。
「たす……けて。」
「……わかった、いったんこの中に入ってくれ。」
このドラゴンに敵意がないと判断した俺は、提げていたマジックバッグを広げた。すると言葉が通じたらしく、蒼いドラゴンは中に入っていった。
その次の瞬間、さっきまで蒼いドラゴンがいた場所に上空から火球が降り注いだ。そしてさらにもう一匹、今度は真っ赤な鱗のドラゴンが現れたのだ。
「オイ、人間。貴様アイツをどこへやった?」
先ほどの蒼いドラゴンとは打って変わり、この赤いドラゴンはとても攻撃的な口調で俺に話しかけてきた。
「残念だが教えてやれないな。」
「劣等種族がいきがりやがって、灰にしてやる。」
その言葉の後赤いドラゴンは口を開け、今度こそブレスの構えをとった。
「させるわけないだろ。」
ブレスを吐かれる前に縮地で間合いを詰め、赤いドラゴンの下顎を蹴りあげる。するとドラゴンの口で火球が爆ぜた。
しかし、カオスドラゴンの時のようにドラゴンの体ごと爆発することはなく、口から黒い煙を吐きながら、こちらに怒りのこもった視線を向けてくる。
「劣等種族があぁぁぁ!!」
懐にいる俺へ向けて、右の前足から鋭い爪の一撃が繰り出された。その攻撃を後ろに体重を預け飛び退いて避ける。
バックステップで下がりながらドラゴンを観察してみると、口で火球が爆ぜた時の火傷の痕がもうない。どうやらこいつもスキル超再生を持っているらしい。
ちょっと面倒な相手だな。
「そう簡単にはいかない……か。」
どうやってこいつを攻略しようか悩んでいると……。
「ヒイラギッ!!」
突然後ろからドーナの声が聞こえた。
それと同時に、目の前のドラゴンが不気味な笑みをうかべ、ドーナの方へと視線を向けた。
236
お気に入りに追加
636
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる