転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
38 / 1,052
第一章

チキンライス

しおりを挟む

 二人で夕食を済ませたあと、満腹になったシアが眠くなったらしいので、泊まり込みで仕込みをするときに使っていた布団を出した。

「ふわぁぁ、これふっかふかぁ。」

 シアは布団に入って毛布に包まれるとすぐに眠ってしまった。今日はいろんな事があったから疲れたんだろう。

 さてと、シアも寝たことだし始めるとするか。

 厨房に明かりをつけ、俺は一人黙々と作業を始めたのだった。



 そして朝日が昇ってくる頃、俺は厨房で椅子に座り肩で息をしながら盛り付け台に突っ伏していた。

「あ゛~…………もう朝か。」

 一人厨房で何をしていたのかというと、冷蔵庫や冷凍庫に合った余り物の食材を使って、ある程度料理を作り置きしておいたのだ。これから食べることに困らないようにな。
 作った料理はマジックバッグに入れておけば、温かいまま保存されるから、いつでも美味しく食べられる。

「シアの朝ご飯作らないと……。もうひと頑張りだ。」

 とは言ったものの、何を作ろうかな。子供が喜ぶものといえばなんだ?

 徹夜明けで妙に覚醒している頭を働かせ、シアが喜ぶようなメニューに思考を巡らせる。

「……オムライスなら喜んでくれるかな?」

 子供受けする定番といえばオムライスだろう。あれなら間違いないはずだ。

「さて、そうと決まればさっそくチキンライスから炊いていくか。」

 家庭的なチキンライスは鶏肉を炒めてご飯とケチャップを混ぜて終わりだが、実は炊いた方がとても美味しく、お店で食べるような本格的なものになるんだ。

「じゃあまずは玉ねぎと鶏肉を切ってしまおう。」

 玉ねぎは小さめの色紙切り、鶏肉は一口サイズより少し小さめに切っていく。

「鍋にバターを入れてっと。」

 バターで鶏肉と玉ねぎを炒める。十分に玉ねぎに火が入ったら洗っていない米を入れて炒める。米を洗わない理由は余計な水分を吸わせないためだ。

「そんで米をさわって、よし大丈夫だな。」

 炒めている米が手で触って熱い位になったらコンソメ、塩、ケチャップで味付けしたスープを入れる。
 ここで注意だが、スープは入れる直前に必ず沸騰させておくこと。

「後はオーブンで火を入れよう。」

 スープを入れたあと2分位火にかけ蓋をする。そして、150℃に余熱しておいたオーブンで30分じっくりと火を入れる。
 途中で一回中身をかき混ぜてあげると炊き上がりにムラが無くなる。

「よっし、30分経ったな。」

 30分経ったらオーブンから取り出し、蓋をしたまま10分程蒸らしておく。この炊くチキンライスは時間がかかる分、美味しさは比べ物にならない。

 そしてチキンライスが炊き上がる頃、シアが重たそうな瞼をこすりながら厨房へと入ってきた。

「ヒイラギお兄さんおはよぉ~。」

「おはようシア。あともう少しで朝ごはんができるから、あっちで座ってていいぞ?」

「うん~、待ってる。」

 ふわぁぁ~っと大きなあくびをしながら、シアはホールのほうへと歩いて行った。

「さて、ぱっぱと仕上げよう。」

 卵に粉チーズ、生クリーム、牛乳を加えた卵液を、バターを馴染ませたフライパンに流し込む。
 そうしたら鍋と手を両方動かし、手早く半熟の状態にする。後は手前から奥に卵を寄せ、手首を叩いてオムレツをひっくり返す。簡単に言ってるがコツを掴むのがなかなか難しい。

「そしたらチキンライスを盛った上にオムレツをのせて完成っと」

 ちなみにオムライスは俺の得意料理の一つだ。

 1年目の時に毎日卵を1ケース分使って何十個もオムレツを作って練習したからな。
 いや~、あれは食べるのが辛かった……まぁ、そんな話はさておきだ。

「さ、朝ご飯だ。」

 出来立てで、ふわっふわのオムライスをシアのいるテーブルへと運ぶのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...