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第一章

ハウスキット

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 異世界の市場の風景を楽しみながら歩いていると、ようやく目的の店が見えた。

「あれが卵屋だな。」

 シアの手を引いて奥に見えた卵屋へと足を運ぶと、勝気な女性の店員が俺たちを出迎えてくれた。

「いらっしゃい、何の卵をお探しだい?」

「あまり卵には詳しくなくてな、どんなものがあるのか教えてほしいんだが。」

「そうかいそうかい、任せておくれ。じゃあまず、これは普通の鶏の卵だね。そしてこれがブラックバードの卵、そんでこれがこの店で最も希少価値が高くて高価なレインガルーダの卵だよ。」

 丁寧に店頭にある卵の説明をしてもらったが、別段普通の卵でいいな。レインガルーダとやらの卵も気になるが、なんせ高すぎる。

「鶏の卵を……そうだな一先ず100個くれ。」

「100個ね、まいどっ銀貨30枚だよ。」

「これでいいな?」

「丁度だね。ありがとさん。またきておくれ~。」

 よし、とりあえずこれで買い物は終わりだ。また何か必要なものがあったらその都度買いに来よう。

「それじゃあシア、今からちょっと森に行くか。」

 手をつないでいるシアにそう告げると、シアは首を傾げた。

「森に何しに行くの?」

「森に家を建てに行くんだ。」

 シアはどういう意味か分かっていないようだが、実際俺自身もアレを使ったことがないから、どういう風になるのかはわからない。
 だがまぁイリスの言うとおりであれば俺の思っている通りになるはずだ。

 おっと、その前に宿屋に寄ってチェックアウトしていかないとな。



 それから市場を出て、宿屋でチェックアウトを終えた俺たちは森の最深部へ来ていた。

「シア、ちょっと離れててくれ。」

「うん?わかった。」

「このぐらいの広さなら大丈夫だろう。」

 広さを確認してハウスキットを置いた。シアと出会ったときにここは木が無く広い場所だったのを覚えていたのだ。

 ハウスキットを置くとボン!!という音と共に急激にハウスキットが大きくなり、見覚えのある建物が現れた。

「イリスの言うとおりだったな。ほんの数日見ていないだけでどこか懐かしく感じる建物だ。」

「わっ!?急に大きなお家が出てきた!!」

「じゃ、さっそく中に入ってみるか?」

「うんっ!!」

 シアと手をつなぎハウスキットの中に入ると、壁にあるボタンを押して電気をつけた。するとレストランのホールの電気が点き、中を明るく照らした。

「あぁ、間違いない…あの店だ。」

 間違いなく生前まで俺が働いていた。あの店がここにあった。

「ヒイラギお兄さん!!ここすっごい明るいね!!」

「あぁ、とても明るいな。」

 今は日が沈んできているから尚更明るい。さぁこの店に来たらやることは1つだ。

「さぁ、飯を作ろう。」

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