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第一章

実食!!三日月草

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 ギルドを出た俺は、足早に昨日夜中に見つけていた宿屋へと足を運んでいた。まだ夕方前だったのもあり、部屋は何部屋か開いていて簡単に宿をとることができた。

「201…ここだな。」

 部屋の番号を確認し、鍵を開けて入る。

 中は意外と広く、ベッドもふかふかで寝心地がよさそうだ。

「さて、始めるか。」

 ふかふかのベッドに座り、おもむろにマジックバッグに手を入れ三日月草を1本取り出した。今から始めるのは、他でもないこの三日月草の味見だ。

「楽しみだな、できればおいしいことを願いたいが。」

 一応分類としては薬草らしいからな、苦いかもしれない。まぁでも食べてみないことには詳細な味はわからない。

「とりあえず葉っぱから食べてみるか。」

 三日月草の葉っぱの部分を一枚千切って口へ運ぶ。

「ん~?意外と甘みがある。」

 シャキシャキとした歯ごたえで、噛めば噛むほど甘味が口を満たしていく。

「後味は少し苦味があるな。葉物特有の苦味って感じだ。」

 後味の苦味のおかげでさっぱり食べれる。うん、普通に美味しい。サラダで山盛り食べたいぐらいだ。

「さて、茎はどうかな?」

 茎の部分を齧ってみると、これまた違った触感が楽しめた。

「同じような味だけどサクサクとした食感だから、スティックにしてマヨネーズなんかをつけるといいかも。」

 この世界のものだけで野菜スティック……なかなか夢があるな。後で市場も見に行きたい、きっとたくさん見たことがないものがあるはずだ。

「さて、残るは花の部分か。」

 最後に残った三日月の形をした花びらを見つめる。日本にいた頃は、よく飾り付けでエディブルフラワーを仕入れていたな。あれは、特に美味しいわけでもなかったが……。

「いただきます。」

 三日月型の花びらを一口で頬張る。すると、とろりと甘い蜜が溢れてきた。

「蜜が甘い、それにわずかだけどバニラのような甘い香りがする。」

 これは何に使えるだろう、乾燥させたら香りが強くなったりしないかな?それならバニラ風味のアイスも出来そうだ。

 こう、一つの食材からいろいろな料理を発想するというのは、とても楽しいものだ。

「これだから、料理ってのは面白いんだよな。明日はオーリオの実の依頼を受けてみるか。」

 オーリオの実……楽しみだな。まだ見ぬ新しい植物を探しに行くのはとても楽しい。失った子供心が蘇ってくるようだ。

「あっ、そういえば森入っても大丈夫かな?」

 今あの森は、俺が放ってしまったサンダーブレスのせいで入れなくなってしまっているはずだ。

「好奇心で使ってしまったとはいえ、自業自得にもほどがあるな。」

 自分は好奇心旺盛だという自覚はある。だが抑えようと思ってもこればかりは自制できないんだ。働いてた頃も「これにこれ入れたらどーなるの?」っていうのを幾度となく試したからな。
 時にはこの世のものとは思えないものが出来上がり、食べるのが億劫になったのも何回かある。

「イカのオレンジマーマレード煮とか黒歴史すぎて笑えなかったからな。」

 あれは完全に暗黒物質ダークマターだった。何度も嗚咽しながら食べた記憶がある。昔の自分の黒歴史を思い出していると……。

「お客様~、夕食が出来上がりましたので食堂の方にいらっしゃってくださーい。」

 ドアの向こうから声がかかった。

「おっと、意外と時間が経っていたか。」

 俺の悪いクセだ、料理のことになると時間を忘れてしまう。せっかく作ってくれた料理が冷めてしまう前に、食堂に行くとしよう。
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