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第一章

依頼完了

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 しばらくして、魔力が回復すると先ほどまでの状態が嘘のように回復した。俺はドーナの膝枕から体を起こすと、彼女にお礼を告げた。

「ありがとう、世話をかけた。」

「いいんだよこれぐらい。……アタイの膝枕の心地はどうだった?」

 少し顔を赤くしながらドーナが問いかけてくる。

「思わず寝そうになるほどだった。」

「そ、そうかい。それは……よかったよ。」

 それから少しの沈黙が流れる。かなり気まずい時間だ。どんな話を切り出そうか悩んでいると、ドーナがあることを思い出したように言った。

「そ、そうだ!!ミースに依頼の報告しなきゃいけないんだろ?ほらほら早く行ってきなよ。」

「あ、あぁ行ってくる。」

 彼女に背中を軽く押され、そのまま闘技場を後にした。後できっちりお礼をしないといけないな。

 そして地下の闘技場を出て、一階の受付にやってきた俺はミースに話しかけた。

「さっきの依頼の報告に来たんだが。」

「あっヒイラギさん、もうお体は大丈夫なんですか?」

「あぁ、この通り何とか歩けるぐらいまでは回復したよ。」

 他愛のない会話をしていると、ミースが辺りをきょろきょろと見渡し、こそこそと周りに聞こえないような声で言ってきた。

「それでドーナさんとはどうなったんですか?」

「……?どうって特に何もないが。」

「えっ!?夜のお約束とかしてないんですか!?」

 さぞかし驚いたように彼女は言った。

 出会って何日もたっていないような女性と、そんな約束ができるわけないだろうに。

「そんなことよりも依頼の完了の手続きを始めてくれないか?」

「そ、そうですね……失礼しました。では、依頼の三日月草200gを納品お願いしますっ。」

 バッグから森で摘んできた三日月草を取り出して、ミースの前に置く。

「それでは計量しますね~。」

 それを手に取りミースは計量器のようなものの上に置いた。

 この世界にも計りはあるらしい。まぁ、それがないとグラムなんて概念は生まれないだろうからな。まじまじとその様子を眺めていると計量を終えたミースがこちらに戻ってきた。
 
「確かに200g納品を確認しました。報酬がこちらになります。」

 ミースは木でできた皿の上に銀貨を置いた。
 
「えっと、本来は銀貨20枚なんですけど。今回三日月草の状態がすごく良かったので、少し報酬に色を付けさせてもらいました。」

「なるほど、ありがたくもらっておく。それじゃあ少し街を歩いてくるよ。」

「またいらしてくださいね~。ドーナさんも待ってますよ~。」

 クスリといたずら顔でほほ笑むミースに見送られ、俺はギルドを後にした。次に向かうは宿屋だ。
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