5 / 1,052
チュートリアル
予期せぬ異変
しおりを挟む《おめでとうございます。スライムを倒せたみたいですね。》
再び草原に声が響く。
やはり先ほどの魔物はスライムだったようだな。スライムを倒し終えた俺は声の主に問いかける。
「で、さっきので身体能力は測れたのか?」
《解……あと3体の魔物を倒してもらいます。》
ふむ、あと3体か。さすがに一回の戦闘では身体能力を測るのは無理だったらしい。
「それじゃあ次の魔物を出してくれ。」
そう俺は急かすように言った。別に長引かせるつもりもないからな。するとこちらを心配したのか声が響く。
《休憩等はよろしいですか?》
「あいにく体力は自信がある、大丈夫だ。」
《それでは次の魔物を召喚します。》
声が響いたと同時に、先程と同様に俺の前に魔法陣が現れ光を放ち始めた。
さて、今度は何が出てくるのやら……軽く体を動かしながらモンスターが現れてくるのを待っていると、急にその魔法陣がどす黒くなり紫色の光が溢れだした。
「なんだ?さっきと様子が違うぞ。」
ちょっと強いのが出てくるのかな?
そう能天気に思っていると、ノイズが走って聞こえづらいが明らかに焦った草原に声が響いた。
《※※※※※※※※※※※※※……さいっ!!》
どうやらあちらで想定外の出来事が起こっているらしい。
目の前の魔法陣を警戒しながら見つめていると、紫色の光の中から黒色の大きな翼が現れ、光が消えていくとともにそれは現れた。
「おぉぅ、マジか。」
紫色の光の中から現れたのは、光をも吸い込むような漆黒の鱗を身に纏った一匹のドラゴンだった。その黒いドラゴンは、俺を見つけると大きく吠えた。
「ゴアアアァァァァァ!!」
そのとてつもない咆哮から発せられる明らかな死の予感に、体が一瞬固まってしまう。それがいけなかった。
次の瞬間目の前のドラゴンが大きく口を開け、雷を纏ったレーザーのような光線を吐いてきた。
光を利用した攻撃は見てからは避けられない、だから予備動作等の体の動きを見て先読みして避けるのが正しい避け方である……と何かの本で読んだことがある。
がしかし、現実世界でそんな兵器で攻撃を受けたことなんてあるはずがない。さらには体が一瞬硬直してしまって動くのがワンテンポ遅れた。
「ッツ!!」
硬直した体に鞭を打ち無理矢理体を動かす。その甲斐あって間一髪……致命的な直撃は免れた。
しかし……。
「があぁぁぁッ!!ぐぅぅぅぅぅっ!!」
雷の光線に呑み込まれた右腕が、肩までゴッソリと抉られていた、不幸中の幸いか傷口が炭化しているため血は出ていない。
「ぐうぅッ……あ゛ぁ゛ッ!!」
痛みをこらえながら俺は構えをとる。右腕が無いため不恰好ではあるが、構えをとると頭が冴え少し痛みが和らいだ。脳内麻薬がドバドバ出始めているようだ。
「ふぅ~ッ、ふぅ~ッ!!やってやるよ!!」
荒く息を吐き出し呼吸を整えて、俺はキッ……と目の前のドラゴンを睨み付ける。
心なしかあのドラゴンは笑っているように見える、獲物を追い詰めどう惨たらしく殺すか嬉々として考えているのだろうか。
圧倒的捕食者だからこそできる余裕……。
俺に残された勝ち筋はそこをつく以外ない。
281
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。


黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

隣国から有能なやつが次から次へと追放されてくるせいで気づいたらうちの国が大国になっていた件
さそり
ファンタジー
カーマ王国の王太子であるアルス・カーマインは父親である王が亡くなったため、大して興味のない玉座に就くことになる。
これまでと変わらず、ただ国が存続することだけを願うアルスだったが、なぜか周辺国から次々と有能な人材がやってきてしまう。
その結果、カーマ王国はアルスの意思に反して、大国への道を歩んでいくことになる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる