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3章 白髪クソガキ魔女っ娘

第32話 お金の確保と不穏なアドバイス

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ソフィア・アメジスト
 好感度
  91/100
--------------------------

 ?
 なんで?
 なぜか好感度が更に上がっていた。

 好感度はもちろん毎日チェックしていたのだが、ここ数日伸び悩んでいたのだ。

 ベアウルフを連携してサクサク倒せるようになり、リリィとソフィアが仲良くなってからが〈81/100〉で、魔法を教えてもらってウォーターとファイアを覚えたころには〈82/100〉だった。

 魔法を覚えたころ、「センスあるわね」と褒められたから結構好感度上がったんじゃ!?
 と期待してみたら、そうでもなくてガッカリしたものだ。

 つまり、新魔法のウォーターファイアとシャワーのお披露目がきっかけで好感度がかなり上がったことになる。

 んー?ウォーターファイアはソフィアもすんなり出来てたしなー。そっちがきっかけとは思えない。
 
 実はシャワーの方に感心してたとか?
 あいつ、見たことないもの発明して天才じゃない。
 みたいな??
 
 いやー、でもそういう風にも見えなかったけどなー?まぁ、考えてもよくわからないので考えるのをやめた。

 さぁ今日もギルドに行くか。と思っていたところ、攻略さんから新しいアドバイスが表示される。

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2日以内に80万ルピーを確保してください。

3日後の早朝に南門へ行き、南門から入ってくる行商人からエリクサーを購入してください。

行商人は最初に偽物を出してきますので、値段が決まった後にそれらしい理由で偽物だと言い当ててください。

そして、その日はお昼前にはギルドに行かず、午後の鐘が鳴った後にギルドに入ってください。
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 ここ最近では珍しい、かなり文量があるアドバイスだった。

 まずは、80万ルピーの確保。今の貯蓄が50万ルピーだから、リリィに借りれば余裕でクリアできるだろう。
 
 んー、でも自分のサイフで確保したいところだな。

 次にエリクサー。エリクサーといえば万病に効く薬、どんな異常状態も治す薬というイメージがある。この世界でもそうなのだろうか?

 1つ目のアドバイスである80万ルピーを確保、というのは、このお金でエリクサーを買え、ということなんだろうか?

 だとすると、一本80万もするのか…ずいぶん高いな…

 1日3万ルピーくらいは稼げると思うが、1ヶ月分に近い収入を持っていかれることになる。

 最後にギルドに遅れて行け、という指示だ。つまり、ソフィアとの約束に遅刻しろ、という意味だろう。

「なんか…これは、イヤだな…」
 ついそう呟く。

 せっかく仲良くなったのに、なんでこんなことしないといけないのか。ソフィアがイヤな思いをすると想像すると、この指示に不快感を覚える。

 ふと、リリィが教会の前で男に乱暴されそうになったことを思い出した。

 あのときは、はらわたが煮えくり返ったが、今回もそんな気持ちを味わうのだろうか?

「……」

 でも、たしかにあれがきっかけでリリィとは親密になれた。やり方は気に入らないが、攻略さんの指示が間違ったことは今のところない。

 今回も信じますよ、攻略さん。

 心の中で呟いてから、オレはギルドに向かうことにした。



 オレたちは、いつも通りベアウルフを15匹狩ったところでギルドに帰ってきた。

 ソフィアは昨日、オレのシャワーを見てから顔を赤くして部屋を飛び出してしまったが、今日はいつも通りに見えた。

 でも、好感度は上がってるんだよな?あまり昨日との違いはわからない。

 ベアウルフの報酬を受け取り分配すると、オレの取り分は2万5000だった。つまり、明日も同じ金額で合計5万。で手持ちが55万になる。食費を引くと少し減るが、80万には届かない。

 んー、どうしたものかね。オレは一応のアイデアを持っていたので、帰り際にエマの防具屋に寄ることにした。

 まぁ、これがダメだったらリリィに借りることにしよう。

 カランッ

「おー、いらっしゃいませ、ライさん、今日は1人っすか?」

「うん、リリィには先に帰ってもらった」

「そっすか~、ならテンションあがらないっすね~」

 だから連れてこなかったんだよ。キミ、リリィがいると冷静に話せないじゃん。

「あのさ、この前作ってもらったアイテムだけど」

「あぁ、これっすよね?」

 そういって袋とシャワーヘッドの組み合わせを取り出す。

「あれ?複製したんだ?」

「えぇ、なにに使うのか気になったもので」

「なにに使うかわかった?」

「んー、たぶん水浴びですかね?」

 ぐ、やはり職人。そこまではたどり着いたか。

「ま、半分正解かな」

 オレはポーカーフェイスをきどりながら思わせぶりな言い方をする。

「ほう?半分ですか?」

「でさ、もう半分の答えを教えるから、このアイデアごと買い取ってくれない?」

「ふむ?独占販売権を買え、ということですね?」

 名称からして特許的なものだと想像がつく。

「まぁそうだね」

「んー、それはアイデア次第ですかねぇ」

「なら、教えられないな」

「む、そう言われると気になりますねぇ。ライさんもなかなか取引上手ですね。じゃあ、こういうのはどうでしょう。独占販売権を買うかは別にして、もう半分の答えを聞くのに10万出します」

「んー、30万」

「いやいや、高いっす、12万」

「25万」

「いや、15万、ここが限界っす」

「わかった、じゃあ、それでいいよ」

 ホントは30万あれば、アドバイスの80万は余裕で確保できたのだがしょうがない。

「んじゃ、まずはお湯の作り方から」

「お湯?」

 エマにシャワーの使い方を1から説明することにした。

 実演できるところはあるかと聞くと奥の工房なら濡れてもいいということで、そこで実演した。エマの頭を下げさせて頭をゴシゴシ洗ってやる。

「お、おぉぉぉ!これは気持ちいいっすね!」

 バッと顔をあげるもんだから、濡れた髪から水が滴って、着ていた服が濡れる。

「あぁもう」
 と言いながらタオルを被せた。

「あざっす!いや!これは面白いっす!平民の生活に革命が起きる予感がするっす!
……ただ、魔法が使えない人はお湯を沸かすのがめんどうっすよね?ん~、だとすると製品化は難しいかな~?」

 さっきまでテンション高かったくせに、急に欠点を指摘し出した。まさか、こいつ……

「まぁ、たしかにそうだよね。でも、そこはエマの発明でカバーできるんじゃない?
オレはアイデアを売りたいだけだし、実現方法はなんでもいい」

「なるほど、ライさんは口がうまいっすねぇ」

 ニンマリといやらしい笑顔を向けてくる。やっぱり適当な欠点を言って値切ろうとしてたな、こいつ。

「で、いくらで買う?」

「……1週間待ってもらえれば、200万」

 思ったより大金でビックリする。

「明日払ってくれるなら50万でいいよ」

「……ライさん、明日なにか入り用なんすか?」

「……」

 どうでしょうね?と肩をすくめて見せる。事情を話したら足元見られる気がしたからだ。

「わかりました!明日50万払いましょう!
 足元見てやろうと思いましたが、いいアイデアですし、リリアーナたんの彼氏さんだから大目に見てあげますよ!」

「ははは、いい性格してるな。でも、ありがとう、助かるよ」

 オレは、エマのやつにツッコミを入れることなく、「じゃあまた明日」と言ってから店を出る。

 資金面はクリアした。
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