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3章 白髪クソガキ魔女っ娘

第26話 ポンコツ魔法使いだけど天才なのよ?

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「ヒール」

 ベアウルフとその取り巻きのモンスターを倒した後、リリィが肩に回復魔法をかけてくれる。
 そうすると痛みがすぅっと消えていった。

 ソフィアは腕を組んで偉そうに、しかし、どこか気まずそうにしていた。

 まぁ、そっぽ向いてるから感情はよくわからないけどね。

 回復が終わると、リリィはソフィアに何か言いたそうにしていたが、オレが頭を撫でてそれを抑える。

「リリィ、回復ありがとね」

「……はい」

 オレの意図を汲んでくれたようだが、不満そうであった。オレに怪我をさせたソフィアに文句を言いたいのだろう。

「ソフィアもありがとう!あれって上級魔法かな!?
 すごい威力だった!一撃で倒すなんてすごいよ!」

 空気が悪くなりそうなので、なるべく明るい声で褒めてみた。

「え?……ふ、ふんっ!あれくらい当然よ!」

 ソフィアは、オレを少し不思議そうに見てから、いつもの調子で強がってみせた。

 リリィはジト目である。

「よしっ!このパーティならあと何匹かは余裕そうだね!もうちょっとやってみようか!」

 オレはベアウルフの牙を剥ぎ取とりながら声をかける。そして次の獲物を探すことにした。

 次のベアウルフはすぐに見つかった。今度は1匹だけである。

 2人に合図してから、オレが前衛として飛び出す。

 次はオレが倒すぞー、と思っていると、

「ウォーターレーザー!!」
とソフィアの声

 イヤな予感がしたので、身体を少し右にズラす。

 左腕の服がスパッと切れるのがわかった後、鋭い水の柱がベアウルフの右手を切断した。

「ガアァァァ!!」と怒りの声をあげるベアウルフ。

「ライ様!」
 と心配そうに声をかけるリリィ。

「ふんっ!」
 と気まずそうにしているソフィア、を順番に確認する。

「服だけしか切れてないから!」
 オレは答えながら走り出した。

 ベアウルフと目が合うが、構わず剣を胴体に突き刺す。その後、サンダーボルトを数発叩き込み、2匹目の討伐は完了した。

 ベアウルフが絶命しているのを確認してから手招きすると、2人が近づいてくる。

 リリィは横目でソフィアを見ているが何も言わないようにしてくれていて、ソフィアは腕を組んでそっぽを向いていた。

「ソフィア援護ありがとう!火だけじゃなくて、水の上級魔法も使えるなんてスゴイな!さすが全属性持ちだ!」

 明るく声をかけて、右手でグッドポーズをとる。

「………あれくらい余裕よ!」

「そうだな!さすが天才魔法使いだ!」

 同じ姿勢のままソフィアが答えるので、グッドポーズのまま返しておく。

 オレは牙を剥ぎ取って、次の獲物を探すことにした。

-3匹目-

「ロックスピアー!!!」

「おおっと!」

 地面が盛り上がって土の槍が何本も出ながらベアウルフを串刺しにした。避けなかったらオレも串刺しにされていた。

-4匹目-

「ウィンドブレード!!!」

 四方八方から風の刃が発生しベアウルフを切り刻む。なんとか避けきったと思ったが、服がところどころ破れてしまった。

-5匹目-

「ライトニング!!!」

 巨大な雷の塊がオレの左頬を通過しベアウルフに直撃、感電死させる。少しビリビリするが、オレも雷魔法を使えるからなのか耐性があるらしく特に支障はない。

 5匹目のベアウルフの牙を剥ぎ取りつつ、
「いやー!ソフィアがいると討伐が楽で助かるよ!」と声をかける。

「………」
 ソフィアは答えない。

「………」
 リリィはジト目であった。

「じゃ!じゃあ!そろそろギルドに戻ろうか!」

 オレだけが明るい声で話していたが、それも続かなくなって、帰り道は特に目立った会話もなく、少し気まずい空気で帰ることになった。

 それにしても、5属性ともすべて上級魔法だったのが驚きだ。全属性持ちというのは珍しいらしいが、上級魔法ばかり使えるものなのだろうか?

 ゲームとかのイメージだけど、だいたい得意な属性があって、他の属性は弱い魔法しか使えない、とかなんだけどな。
 ちなみに、この世界の魔法には、あと闇属性と光属性があるのだが、そっちも上級魔法が使えるのか気になるところだ。

 考えごとをしていたら、森の入口まで戻ってきた。

 森を出ると「アイテムボックス」とソフィアが唱えて杖をしまっていた。

「やっぱりアイテムボックス便利だなぁ。どれくらいの容量が入るの?」

「……魔力量にもよるけど、わたしの場合、学校の教室1部屋分くらいは入るわ」

「へー!それはスゴイな!さすが天才!」

 褒め方が雑なような気もするが、気のせいだろう。

「あたりまえでしょ」

「ふんっ」と言いながら答えるソフィアはなんだか元気がなさげだ。

 疲れたのだろうか?

 ギルドに到着すると、まずはベアウルフの牙を納品する。

 3人でギルドプレートを出して手続きすると、オレが中級B、リリィが中級Cにランクアップした。

「あれ?この前のランクアップからずいぶん早いな?」

「上級のモンスター討伐だったからでしょうか?」

「……」

 オレたちの疑問に、ソフィアは答えを持ってないようなので、
「そうかもね」とリリィに相槌を打つ。

 報酬を受け取ったので、待合所のテーブルに向かう。ソフィアは朝と違って、普通に行儀良く座っている。腕も脚も組んでいなかった。
 怒った顔で下を向いているが大丈夫だろうか?

「それじゃあ、報酬を分配しようか」

 オレが声をかけると、ソフィアはビクッとする。

「えーと、報酬は5匹で3万ルピーか。つまり、1匹6000ルピーってことね。あの難易度なら割と稼げるもんだね」

「………」
 ソフィアは下を向いたままだ。

「そうですね」
 と笑顔で答えてくれるリリィ。

「じゃあ、3等分だから、1人1万ルピーで」
 言いながら、金貨をリリィとソフィアに1枚ずつ渡す。

「えっ!?」

 そこでソフィアが顔を上げた。ビックリした顔をしている

「?…どうかした?」

「えっ、いや…」

「ん?……あっ!ごめん!オレたち正式なパーティじゃないから、2等分の方が良かったかな?いやー、でもな…」

「ち、ちがうわ!3等分で大丈夫よ!」

「あ、ほんとに?なら良かった」
 笑顔でソフィアに答える。

「う、うん…」

「じゃあ、明日はどうする?明日もお昼ごろに集合でいい?」

「え?明日もわたしと組んでくれるの?」

「え?そうだけど、なんで??」
 首を傾げながら返答した。

「っ!なんでもないわよ!明日も同じ時間に!じゃあね!」

 ソフィアは金貨を受け取って、すぐに立ち上がると早足でギルドを出ていった。

 終始不機嫌そうだったけど、帰り際の様子はずいぶんおかしかったな、と思う。

「じゃあ、オレたちも宿に帰ろうか」

「はい」

 リリィが答えてくれたので2人して宿に帰る。いつものように宿の食堂で食事をとり、井戸で水を汲んでから部屋に戻った。

「あの、ライ様」

「なぁに?」

「あの方でよろしいのでしょうか?わたしは大丈夫ですが、ライ様は何度か危ない目にあったかと思いますが…」

 ソフィアの魔法のことだろう。今日は何度も彼女の魔法がオレに当たりそうになったし、実際軽い怪我もした。

 このままパーティを組んでいてもいいのか?という質問だ。

「うん。魔法の実力は本物だし、アイテムボックスも使える。そのうち、教えてもらえるかもしれないしね。あ!オレなら大丈夫!明日からは全部避けるよ!」

 心配顔のリリィに付け加えて説明する。

「……そうですか。ライ様がそう判断されたなら、わたしは大丈夫です…」

「ありがとう」

 オレはタオルを持ってきて身体を拭く準備をする。

 すると、クイクイッと後ろからリリィに袖を引っ張られた。

 首だけ振り向くと、
「あの方が……可愛らしいからでしょうか?」

 リリィがオレを掴んでるのとは、逆の手を口に当てて下を向きながら、そう言った。

 ソフィアが可愛いから、少し失敗しても大目に見るの?ということだ。

 オレはすぐに振り返り、リリィの口を塞ぐ。

「リリィも可愛いから。なにをしても許すよ?」

「そんな…あむっ…」

リリィが何か言おうとしたが、また口を塞いだ。

「なんでも言って?」

「あの、ライ様に怪我をさせたのは、正直腹が立ちました」

「うん、ありがとう。嬉しいよ。リリィに心配かけないようにオレが頑張るから、だから許してあげてくれないかな?」

 深めのキスをする。

「ん……ライ様はずるいです…わかりました…」

 ずるいらしいが、許してくれたので他のことも許してもらおうと思う。

 リリィの服を少しずつ脱がして、「今日はオレが拭いてあげるね」と優しめに声をかけながら、リリィの身体をすみずみまで拭いてあげることにした。

 途中で我慢できなくなり、また汗をかくことになったのは言うまでもない。
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