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2章 金髪清楚シスター

第13話 好感度の変化

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 リリアーナが泣き止むのを待って、
 「もう大丈夫です」という言葉を聞くと、オレはリリアーナを抱きかかえて井戸の方へ向かった。

 お姫様抱っこされたリリアーナはオレの腕の中で大人しくしている。

 井戸に着くと、その側にリリアーナを座らせて井戸の水を汲む。水が入った桶にそっとリリアーナの左手をつけて、丁寧に丁寧にキレイなお手手をニギニギしながら、洗い流した。

「……」
 しばらくその様子をリリアーナは眺めていた。そして口を開く、

「…なにをやっているんですか?」

「オレのリリアーナに触れられたのが許せなくて、キレイにしてる」

「……べつに、あなたのじゃありません…」

 満足するまで洗い流すと、リリアーナの手首が少し赤くなっていることに気づく。あいつに掴まれたところだ。

「あのやろう……」

 またキレそうになるが、一旦落ち着いてポーションを取り出す。瓶からキュポッとコルク栓を抜き、リリアーナの腕にかけていく。2本使ったら、いつものキレイな腕に戻っていた。

「……ありがとうございます」

「ううん。こんなことになって…ごめん…」

「いえ、ライさんはなにも悪くないです。それどころか、助けてくださって本当に感謝しています」

 ギリギリまで待て、という指示にしたがったオレは、チクリと良心が痛んだ。素直に喜べない。

「だから、そんな顔しないでください」

 リリアーナの小さな手がオレの頬に触れる。

 目が合って、もう大丈夫だな。と確信がとれてから、やっとぎこちなく笑うことができた。

「よくできました」
 優しく語りかけてくれる。

「それじゃあ、オレは町に戻るからリリアーナは今日はゆっくり休んで。オレはまだやることがあるから」

「やること?なんですか?」

「さっきのあいつ、たぶんあいつが畑泥棒だと思う。自分の罪をリリアーナに着せようとしたんだ。だから罪を償わせる」

「……警備隊のところに行くんですね?」

「……」

「それでしたら私もお手伝いします」

 答えないオレにイヤなものを感じたのか、リリアーナは同行を申し出た。

「警備隊に申し出ましょう」

「……わかった。でも、現場を抑えないといけないと思う。だから、オレが先に畑に行く。リリアーナは警備隊を呼んできてくれ」

「わかりました」

 こうしてオレたちは村に向かった。



 村に着くと、あたりはもう暗くなっていて、民家から漏れる光だけが地面を照らしていた。畑の周りは真っ暗闇だ。

「いてー…いてー…あのやろー…ぜってぇ許せねぇ…
 くそー…腹が減った…あのババアのもんをまた食ってやる…」

 畑にこっそりと近づくと、ブツブツつぶやく声だけが聞こえてくる。

「こちらです!」

 リリアーナが警備隊員を2人率いて現れたところで、
「ライト」と唱える。

 周囲が明るくなり、ヤツがおばちゃんの野菜をかじっている姿があらわになった。

「なんだこの光は!やめろ!」

「なにがやめろだい!この泥棒が!さっさとコイツを捕まえておくれよ!」

 八百屋のおばちゃんが警備隊員を急かす。おばちゃんには、事前に声をかけて待機させておいたのだ。

「は!はなせ!オラはなんもわるくねぇ!やめろ!はなせ!」

 2人の警備隊員に両腕を掴まれた男は、そんなことを喚いていたが、もうどうでも良かった。死ねばいいのに。

「はぁ」と息をはき、やっとひと段落ついたと空を見上げる。

 随分と長い1日だったように感じる。

「あの、ライさん、大丈夫ですか?」

「ん?うん、大丈夫だよ。リリアーナの方こそ大丈夫?」

「はい、私は大丈夫です。いえ、本当はまだちょっと怖いです」

「だよね」
 ニコっと笑いかける。

「ええ」
 リリアーナも笑い返してくれた。

「じゃあ、帰ろっか」

「はい」

「送っていくよ」

「…ありがとうございます」

 一瞬、間があったが同行を許してくれる。

 教会への帰り道、リリアーナの方を見ると少し震えていたので手を握って歩く。教会に着くころには震えもすっかり治まっていた。

「じゃあ、ここで」

「……帰らないでください」

「え?」

「一緒にいてください」

 ?
 これは?
 そういう?

「あー……わ、わかった。オレはベンチで寝るから。近くにいるから大丈夫だよ。なにがあっても守るから」

「……は、はい。ありがとうございます」

 リリアーナは頬を染めていたが、それ以上なにか言うことはなく、夜は更けていった。



-翌朝-

 起きてきたリリアーナに「おはよう」と声をかけ、落ち着いた様子なのを確認してから、早々にギルドに戻ることにした。
 念のため、昨日のクソ畑泥棒がどうなったのかを確かめるためだ。

 ギルドに戻って受付嬢から話を聞くと、あいつは奴隷身分に落とされ奴隷商に引き渡されることになった、とのことだ。
 死刑でもいいと思うけどね。まぁよしとしよう。

 オレはその確認だけして、ギルドのいつものスペースで寝転ぶ。

「……」

 若干、気が進まないが、やはり誘惑には勝てずに攻略スキルを開く、好感度の確認だ。

-----------------------------
リリアーナ・クローバー
 好感度
  87/100
-----------------------------

「……」
 すごいことになっていた。

 その数値をみて、やはり昨日のことで罪悪感を感じずにはいられないが、やっぱ、
やっぱり嬉しいという気持ちは強かった。

 好きな子にも自分を好きになってもらえたという実感が沸いてきた。

 その日は特になにもする気になれず、ゴロゴロと惰眠をむさぼることにした。
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