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3章 ダンジョンと仲間

第84話 政府からの渋い回答

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 師匠の補助スーツを注文してから1週間後、朝礼の時間になると、桜先生が渋い顔をしながら教室に入ってきた。

「桜ちゃん?どうかしたの?」

「はい……まだ何か決まったというわけではないのですが、政府からの回答が気がかりでして」

「なんか嫌な予感がするわね」

「今から、政府からの回答についてお話しますね」

「お願いします」

 オレたち4人は自分の席につき、姿勢を正して桜先生の話を聞くことにした。

「池袋駅ダンジョンを攻略して、政府から報奨金を受け取るまではスムーズでした。池袋駅ダンジョンには、約500人もの方が囚われていたので、多くの方からお礼のメッセージも届きました。でも、東京駅ダンジョンの封鎖を解くようにお願いしたメールに対しては、今日まで返答が遅れていたんです」

「ふむふむ。そうですよね。そこまでは知ってます」

「だったんですが……今朝がたメールが届きまして……回答をあと3ヶ月待ってくれないか、と言われたんです……」

「3ヶ月もですか?うーん……政府機関として審査部門が多いのかもしれませんが、少し長すぎる気もしますね?」

「ええ、私も栞さんと同じ意見です」

「そもそも、〈もう一つダンジョン攻略したら東京駅ダンジョンのこと検討する〉って言ってきたのは政府のやつらじゃない。あれから、わたしたちは半年間修行してたし、検討する時間は十分にあったと思うけど?」

「鈴さんの言うとおりだと思います。その旨はすぐに返信しておきました。回答を急いで欲しい、と」

「じゃあ、大人しく3ヶ月待てばいいってことなのかなぁ?」

「んー……悩ましいところだけど、桜先生はどう思います?」

「はい。私としては、以前、鈴さんから提案されたことを実行するのがいいのでは、と思っています」

 桜先生が厳しい顔をして、モニターを操作する。そこに表示されたのは、半年前に政府から届いたメールだった。
 そのメールには明確に〈ダンジョンをもう一つ攻略したら東京駅ダンジョンの解放について検討する〉という文章と、政府の印鑑が押印されている。

『えっと、これがなんなんだっけ?』と思いながら鈴の方を見る。

「マスコミに公表して、世論の同情を誘うって作戦のことね。政府の人がこんなメールをよこしたから頑張ってダンジョン攻略したのに約束守ってくれません~って、みんなに言うのよ」

「あ、なるほど、そんな話してたな」

「はい。なので、みんなの同意をとってから実行しようと思って相談に来たんです」

「なるほど~。でも、前話したことなら、ゆあたちに聞かなくても桜ちゃんの判断でやっちゃえば良かったんじゃない?」

「いえ、これをやると、政府機関からは少なからず嫌な顔をされるでしょう。みんなの将来やご家族に何かしら影響があるかもしれません」

「というと?」

「例えば、陸人くんのお父さんの防衛大臣としての立場が危うくなるとか……大人になったときに国家機関に勤めれなくなるとか……などか考えられます」

「ま、そんなことしてきたら、いよいよマスコミを使って戦争みたいになるわよね」

「はい。そんなくだらないことになるのも気が滅入りますし、なによりみんなのことが心配です」

「んー……たしかにお父さんに迷惑をかけるのはヤダな……将来の仕事についてはわかんないけど」

「じゃあ、やっぱり、このアイディアはやめときますか?」

「そう、ですね……一旦、大人しく待つことに……」

「……ちょっと待って、陸人」

 ここで、鈴のやつが口を挟む。みんなが鈴に注目した。

「んー?」

「わたしに、もう一つアイディアがあるの。みんなも聞いてくれる?」

 そして、鈴が前々から考えていたというアイディアを語ってくれる。聞いている分には、なかなか効果がありそうなアイディアだ。

「たしかに……それなら真っ向から政府に反抗した形にはなりませんね……あくまで、趣味レベルだと言い張れなくもありません」

「ちょっと恥ずかしいけど!ゆあは賛成!」

「オレもいいと思う!さすが鈴!やっぱおまえ頼りになるよ!」

「む……どういたしまして?」

 鈴が少し照れたような仕草をして、そっぽを向く。

「ふふ、鈴ちゃんのたまに素直なところ、可愛いですよね。あれです。ギャップ萌え?ってやつですね」

「はぁ?栞、あんた、なんなわけ?」

 鈴のやつが栞先輩に絡み出したところで、桜先生が仲介に入る。そして、「後の段取りは任せて」と言って職員室に戻っていった。

 鈴が提案してくれた作戦が上手くハマるのか、見ものである。
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