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2章 ダンジョンと刀

第57話 荻堂の神器

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「まぁまぁ、だな」

 との第一声、それに対して、「ふんっ!」という声が隣から聞こえてくる。鈴は腕を組んでそっぽを向いていた。
 鈴の気持ちを想像するに、『ムカつくやつだけど、強いってことはわかったから黙っておいてあげるわ』そんなところだろう。

「それでは、わたしたちに指導をつけていただけますか?」

「ああ、いいだろう。厳しく鍛えてやる」

「ありがとうございます。あと、神器の方はどうでしょう?」

「悪いがそっちは断らせてもらう」

「え?なんでですか?」

 オレはつい口を挟んでしまった。認めてもらえたら神器も貸してもらえると思っていたからだ。

「なんで、だと?俺の仲間が文字通り命を張って手に入れたもんだ。他人に貸すわけねぇだろぉが」

「……」

 思い切り睨まれて、みんながビクッとする。でも、オレにはなんだか違う気持ちが隠れているようにも見えた。

「……でも、荻堂さんの仲間は、その神器を飾っておいて欲しいって思ってるでしょうか?」

「……なんだと?」

「オレは、オレなら、それで戦って欲しいって思うと思います」

「おまえにあいつらの何がわかる」

「わかりません。わかりませんけど、でも、荻堂さんだって、〈力は全力を出してなんぼだ〉って言いましたよね?オレに、オレたちに、荻堂さんの仲間の力も貸してください!お願いします!」

 姿勢を正し、ここに来たときに荻堂さんが栞先輩に頭を下げたように、オレも頭を下げる。

「……」

 しばしの沈黙、荻堂さんは厳しい目でオレを睨み続けていた。そして、目を閉じ、

「ふっ……」

 息を吐いて、少し柔らかい表情になった。

「嬢ちゃん」

「なんでしょうか」

「面白い仲間を見つけたな」

「はい。自慢の仲間です」

「いいだろう!オレの仲間の神器!貸してやる!だけどな!あくまで嬢ちゃんにだ!鳴神流の仲間として使ってやってくれ!」

「ありがとうございます!」
「謹んで、お預かりします」

 オレはもう一度、両手をついて頭を下げる。栞先輩も丁寧に三つ指をついて頭を下げていた。

 こうして、当初の目的であった〈荻堂一心に師匠になってもらう〉〈神器を貸してもらう〉の二つを達成することができた。

 このあと、具体的にいつどこで訓練するのか打ち合わせして、その流れでオレたちのスキルについても詳しく説明することにした。訓練しれもらうにあたって、手の内は知っておいてもらった方がいいと思ったからだ。

「なるほどな。面白いスキルばかりだな。特に咲守、おまえのスキルはすげぇよ。チートってやつだな」

「ですよね。なので、よければ荻堂さんもオレのクラスに入ってくれませんか?そしたら、またステータスポイントがもらえるので」

「ああ?俺が?イヤだね。そこは、俺に鍛えられて強くなれよ。おまえならできんだろ?」

「あ、なるほど、わかりました」

 あっさり断られたので一旦引き下がる。でも、認めてもらえてるようにも聞こえる。この感じなら、《クラス替え》スキルでクラスに加入できそうなものだが……うーむ、どうしたものか……

 頭を捻っていると、「とりあえず、次の週末にもう一度道場に来い」と言われて、追い出された。

 道場を出て、下町を歩き、鈴のリムジンに乗り込み、それぞれの家に送ってもらう。

 初めに着いたのは栞先輩の家だ。

「それでは、また月曜日に」

 栞先輩がドアから出て、みんなにお辞儀をする。車内から顔を出し、それに応えた。

「今日はありがとうございました。すごい人を紹介してくれて」

「いえ。わたしだけだと神器を借りることはできなかったと思います。きっと陸人くんの戦いぶりに、荻堂さんもなにか可能性を感じたんですよ」

「そうなんですかね?」

「ええ、きっとそうです」

「なら、嬉しいな。よし!来週から修行がんばるぞー!」

「ふふ。本当に……陸人くんはすごい男の子です……他の人とは、やっぱり全然違う……」

 そんなことを言う栞先輩は、とても優しい目でオレのことを見つめていた。

「え?」

「あっ……いえ、なんでもありません。では、また月曜日に」

 再度頭を下げられ、手を振られたので、オレたちも頭を下げる。リムジンが動きだしたあと、車内にて、「女ったらし」だとかいう謎の容疑をかけられたが無視しておくことにした。
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