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2章 ダンジョンと刀

第36話 進化したチートスキル《心眼》

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「そんで、おまえのスキルが進化したのって、どんな変化なんだ?」

 シチューを食べながら、鈴に質問する。

「それも気になるけど、どうやって進化したのかは聞かないの?」

「たしかに。その辺どうなんだよ」

「わたしもよくわからないけど、柚愛がグランタイタンにとどめをさした後、スキルが進化しましたってアナウンスが入ったのよ」

「ほほう?」

「ということは、ボス討伐の特典で進化したのか、経験値が一定数こえたから進化したのか、どちらでしょうか?」

「そうだと思うわ。さすが小日向せんせ」

「おっけー。それでそれで?《分析》スキルがどうなったか早く教えてくれよ」

 オレはワクワクしながら鈴の言葉を待つ。

「まぁ、実演はできないんだけど、まず、《分析》っていう名前が変わったわ」

「ふむふむ。どんな?」

「《心眼》ね」

「おお、カッコいい」

「それで、どんなことができるんですか?はい♪陸人くん、お野菜も食べようね♪」

 桜先生がオレにサラダを取り分けてくれた。

「あ、あざっす……」

 オレに寄り添うようにする桜先生を見て、正面のお母さんが首を傾げる。

「あらぁ~?りっくんは、ゆあちゃんとくっつんじゃなかったのかしら?」

「そうだよ!おばちゃんは応援してくれるよね!?」

「え?ええ~。そのつもりだったけど……」

「お母様、私、来年から公務員です。経済力、あります」

「あらあら~?」

「おばちゃん!?なに迷ってるの!?」

「あ、あー……えっと、なんだっけ、《心眼》?」

 オレはうるさい人たちのことを無視して鈴の話に集中する。

「そうね。心の目で《心眼》よ」

「なるほど。おまえのステータスも変化してるんかな。ちょっと待ってくれ」

 オレは、《クラス替え》スキルを操作し、鈴の座席をタップしてステータスを表示させた。

――――――――――――――――
氏名:双葉鈴(ふたばすず)
年齢:15歳
性別:女
役職:無し
所有スキル:心眼
攻撃力:22(D)
防御力:29(D+)
持久力:48(B-)
素早さ:45(B-)
見切り:28(D+)
魔力:30(C-)
精神力:69(B+)
学級委員への好感度:71/100
総合評価:C
――――――――――――――――

「たしかに、スキルのところが《分析》から《心眼》に変わってる。魔力もだいぶ上がってるみたいだな。で、肝心のこのスキルの効果は?」

 オレはワクワクしながら質問する。

「どうやら、敵の弱点がわかるみたいなの」

「へー!そりゃすごい!つまりさ!この前のゴーレムだとしたら、額が弱点だって見ただけでわかるってことだろ!」

「たぶんそうね。あいつは事前情報でわかってはいたけど、今後は初めて遭遇するモンスターを相手にしないといけないと思う。そういうときに役に立ちそうね」

「ふむふむ。みんなすごいなー。オレも新しいスキルが欲しくなってきた」

「いや、あんたのスキルほどチートなスキルは無いと思うわよ?小日向せんせが加入して、ステータスボーナスもかなり入ったでしょ?また強くなれるじゃない」

「ま、言われてみればそうだけど。こう!なんか手から炎を出したりさ!わかりやすく強そうなスキルって憧れるじゃん!」

「そうね。わからんでもないわ」

「だよな!」

「なるほどです。では、鈴さんのその《心眼》スキル、使用するとどんな風に見えるのか、説明してもらえますか?」

 桜先生が冷静に戻ったようで、また会話に入ってきた。

「敵がいないんで、見え方はまだわからないわよ?」

「んー、人間相手でも弱点は見えるんじゃないですか?例えば、心臓とか頭とかは人間共通の弱点ですし」

「たしかに……ちょっと試してみるわ。陸人、そこに立って」

「あいあい」

 オレは言われるまま、鈴の正面に立つ。

「心眼……」

 鈴がボソリと呟く。すると、鈴の左目から青い炎のようなものが発生した。

「おい!それ!」
「鈴ちゃん!?」

「え?なによ?」

「あ、熱くないのか?」

 心配になり近づくが、本人は無自覚のようだ。こんなにメラメラ燃えてるのに。

「……ちょっと、近いんだけど?」

「あ、ああ、ごめん。ちなみにこんなんなってるぞ?」

 オレはエニモでモニターを出し、鏡モードにして鈴に見せる。

「へぇ、めっちゃかっこいいじゃない。あ、ちなみに熱くはないわ」

「ふむ?それならいいんだけど」

「じゃあ続けるわよ」

「ああ」

 再度、《心眼》でオレのことを見てもらう。

「へぇ、たしかに弱点が見えるわ。小日向せんせの言う通りね。んー、呼びずらい、桜せんせでいい?」

「いいですよ」

「桜せんせの言う通り、頭と心臓に弱点マークが出てるわね。それと、怪我してる左足と、あとキンタマ」

「キン……」
「タマ……」

 みんなの視線がオレのゴールデンボールに集まる。

「やめろ!見んなよ!」

「うふふ♪恥ずかしがってるのも可愛いですね♪もっと恥ずかしがらせたいかも♪」

 どういうことすか……先生……心の中でツッコんでおく。

「まぁ、下ネタは置いておいて。双葉さんの、あ、私も鈴さんでいいですか?」

「ええ、もちろん」

「えー、鈴さんのスキルについてはわかりました。この能力、みんなで共有できたら便利ですよね」

「共有ってどういう意味ですか?」

「鈴さん以外のみんなも、弱点見れたら嬉しいですよね?あとHPも」

「そりゃあ、嬉しいし、便利ですけど……オレらは《心眼》持ってないんで」

「擬似的に、同じものが見えるように脳波を読み取るデバイスと眼内モニターをカスタムします。それで、鈴さんと似た景色が見れるようになるはずです」

「マジすか…… 」

「マジです。ほら、私ってば、さっそく役に立ちそうでしょ?」

「たしかに、桜先生ってすごい人だったんですね」

「見直しましたか?」

「ははは、正直、はい」

「うふふ♪そのまま、好きになってくれてもいいですよ?」

「……」

 突然、おかしなことを言われてフリーズする。す、すき?好きとは?

「あの~、桜先生?うちのりっくんは、まだそういうの、わからないので、あんまりグイグイいかない方がいいかもですよ?」

「なるほど~。参考になります♪お母様♪」

「おばちゃん!アドバイスなんてしないでよ!」

「あらあら~?」

 なんだか、話がそれまくったような気もするが、とにかく、ゆあちゃんの新スキルと、鈴の進化したスキルについては把握できた。

 桜先生というオペレーターも新たに仲間になってくれたし、オレのステータスボーナスもウハウハだ。

 こうして、さらに力をつけることになったオレたちは、東京駅ダンジョン攻略に向けて、また一歩近づくことができたと思う。

 あとは、今日の記者会見を見た政府がどんなリアクションをしてくるか次第だ。

 その日は結局、夜遅くまでオレの家で訓練という体(てい)の、ゆあちゃんと桜先生によるお母さんへのアピール合戦が続いたのだった。



=====================
【あとがき】
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