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1章 ダンジョンと鍵

第16話 クソガキの口車

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[時は現代の戻る]

 〈あのときは、悪かった〉双葉が言っているのは、妹のベルを庇ったせいで、うみねぇちゃんがダンジョンに囚われることになった、だから〈あのときは、わたしの妹が悪かった〉そういう意味だろう。でも、今のオレは、そんな風には思ってなかった。

「あのさ、前も言ったけど、うみねぇちゃんのことは、別におまえの妹のせいだなんて思ってない。……いや、思ってた時期もあったけど、すぐ考え直した。うみねぇちゃんは困ってる人を見捨てれないすごい人だ。だから、別に双葉のことを恨んだりはしてない。オレがおまえの妹も助けてやるよ」

「……ふんっ、相変わらず、口だけは達者ね」

「そうだよね、りっくんは口だけは割とカッコいい」

「あん?」

「ねぇ、ところで、双葉さん?やめといた方がいいってどういうこと?」

 ゆあちゃんが話の軌道を修正してくれたので、オレもその話をすることにした。

「そうだな。こんなフェンス、前には無かった。駅には入れないのか?」

「そうね、わたしも忍び込もうとしたけど、すぐに警報が鳴ったわ。翌日、家に連絡がきてパパに怒られた」

「マジかよ……」

「マジよ。あんたが1年前、最後に忍び込んですぐにこうなったわ。あんたのせいじゃないの?」

「オレ?オレは別になにも……むしろ、モンスターを倒して人助けしたけど……」

「はぁ?それ、詳しく教えなさいよ」

「やだよ。なんでおまえなんかに」

「なんかってなによ!」

 双葉のやつがキレ出した。昔からすぐにキレるやつで、口も悪くて鬱陶しいやつだ。

「うるさいなー。ゆあちゃん、今日は帰って作戦会議しよ」

「え?いいの?双葉さんのことほっておいて」

「いいわけないでしょ!待ちなさいよ!」

「やだよ。おまえ、うっさいんだもん」

「へー?そんな態度とっていいわけ?わたし、忍び込めるダンジョン知ってるんだけど?教えてあげないわよ?」

「んー……オレ、東京駅ダンジョンにしか興味ないんだよね。さいなら」

「ちょっと!ここに入れないんだから、他で修行するしかないでしょ!鍛えて強くならないと2人を助けれないわよ!」

「んー……まぁ……そう言われれば、そうかも?」

「りっくん、とりあえず双葉さんと話だけでもしておかない?同じダンジョン攻略に挑む仲間なんだし。それに、仲間が増えれば、りっくんも強くなるよね?」

「あっ、たしかに」

「どういう意味よ?」

「いや、別に……」

 《クラス替え》スキルのこと、こいつに話して大丈夫だろうか?オレは、訝しむ双葉の顔を見て、自分のスキルについて話すか考えていた。

「りっくんのことはほっといて、いこっ。双葉さん」

「……わかったわ。ついてきなさい」

 とりあえず、双葉の相手は、ゆあちゃんに任せて後ろについていくことにする。



 双葉がオレたちを連れてきたのは、なんだか高そうなレストランだった。近くの高層ビルの20階にあり、夜景もすごい。それに、かなり広いのに個室になっていた。

「すごーい……」

 ゆあちゃんが窓際に立って感動している。

「オレたち、金ないぞ?」

「わたしが奢ってあげるわよ。下民、座りなさい」

 双葉のやつは偉そうに足を組んでメニューを見ている。
 オレたちも座って、自分のデバイスを使ってメニューを見ることにした。どれもびっくりするほど高くて、おどおどしてると、双葉がオレたちの分も注文してくれる。

 高そうな飲み物とお茶菓子が机に並び、本題がはじまった。

「それで、1年前、モンスターを倒したって?」

「そうだな。そんなこともあったなー」

「1年前、あんたが忍び込んだあと、すぐにニュースが出たわよね?東京駅ダンジョンで高校生4人が死亡、1人だけが生き残ったって。知ってるわよね?」

「……まぁ」

「その顔……まさかとは思うけど、あんたが殺したの?」

「そんなわけあるか!意味わかんないこと言うなよ!」

「冗談よ。でも、無関係ってわけでもなさそうね」

「まぁ……」

「それで?モンスターを倒したってのは、ゲートのすぐ近くに出るウサギみたいなやつのこと?それくらいならわたしも倒したけど?なによ、偉そうにして。だっさ」

「そんな雑魚じゃねーよ!オレが倒したのはこんなデッカいユニークモンスターで!」

 オレは両手を広げて、あのときの黒い狼のサイズを表現した。

「ユニークモンスター?」

「あ……」

 売り言葉に買い言葉で口を滑らせたことに気づく。

「バカりっくん……」

「ユニークモンスターってなによ?」

「まぁ、なんか強いモンスターだよ……」

 もう言ってしまったので、諦めてある程度は話してやることにした。

「どんな?」

「すごいでかい黒い狼で、白いやつと灰色のやつもいて……」

「それ、高校生たちを殺したモンスターよね?あんた、警察に言わなかったの?自分が倒しましたって。それ、犯罪よ?もしもし、警察ですか?」

 双葉がデバイスに向かって話しかけ出した。は?こいつ本当に通報を?

「うぉい!!違う違う!あれは人助けで仕方なく!」

「……なるほど。そう、高校生が4人もやられるモンスター、ユニークモンスターをあんたが倒したってことね。やるじゃない。ちなみにだけど、モンスターの姿形なんてニュースで発表されてないわよ」

「は?」

「だいたい聞きたいことは聞けたわ。ありがとね」

「おまえ……カマかけやがったな?」

「そうだけど?騙される方が悪いんじゃない?」

「こ、このクソマロめ……」

「はぁ?さっきも言ったわよね?そう呼んだらコロスって。ここ、奢らないわよ?」

「それは困る」

 オレは、騙されてイラっとしていたが、高級ジュースを人質にとられて何も言えなくなってしまった。ここまで計算ずくだとしたら、このクソマロはなかなかの策士である。
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