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1章 ダンジョンと鍵

第10話 好感度をカンストさせる方法

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 訓練を開始して数週間後、ゆあちゃんは女の子ながら、頑張ってついてきてくれていた。朝はランニングして、一緒に小学校に行って、授業が終わったらすぐに帰ってきて訓練場にこもる、そんな生活を続けている。

「はぁ~、つかれた……」

 アトムとの戦闘訓練を終えたゆあちゃんがペタンと床に座り込む。

「お疲れ、はい水」

「ん、ありがと」

 ペットボトルを渡すと、こくこくと喉を鳴らす。蓋を閉じてから、こちらに向き直った。

「ねー、りっくん」

「なぁに?」

「りっくんのスキルって、あれからなにか変化あった?」

「変化?いや特に……ん?」

 言われて、クラス替えスキルで自分のステータスを確認したところ、オレの統率力が変化していることに気づく。

「あれ?」

「どうかしたの?」

「あー、これなんだけどさ」

 ゆあちゃんにモニターを見せながら説明する。

「この前まではここの統率力って、93だったんだよね。なのに今は95なんだ」

「へー?統率力ってどうやってあがるんだっけ?」

「クラスに加入してる人の好感度だったかな」

「ふーん?……え?」

「つまり、ゆあちゃんの好感度が……」

「ちょっと!!」

 ゆあちゃんがオレの腕を掴んできたが、すでに的場柚愛の座席をタップした後であった。

――――――――――――――
氏名:的場柚愛(まとばゆあ)
年齢:12歳
性別:女
役職:なし
所有スキル:なし
攻撃力:6(E)
防御力:4(E-)
持久力:7(E)
素早さ:12(E+)
見切り:7(E)
魔力:0(E-)
精神力:31(C-)
学級委員への好感度:95/100
総合評価:E+
――――――――――――――

 トレーニングによって、他のステータスも少しずつ数値は上昇しているが、今はそれは関係ない。オレの統率力に影響する数値は〈好感度〉だ。
 二週間くらい前は、たしか好感度は93だったはず。特に、ゆあちゃんが喜ぶようなことをした覚えがないのだが、なぜか95に上昇していた。

「……」

 ゆあちゃんは黙ってしまい、下を向いている。

「なんで上がってるの?」

「そんなの聞かないでよ!ノンデリ!」

 ただ質問しただけなのに怒られてしまった。それに、なぜか顔が赤い。

「まぁ、いいや。オレのステータスが上がってるのはいいことだし。でもなー、統率力って10ポイントおきにしかボーナスがないんだよな……」

「まぁいいやって……気づかれなくて安心はしたけど……なんか複雑……」

「なんて?」

 声が小さくてよく聞き取れなかった。

「もういいわよ……で?なんだっけ?ボーナス?」

「そうそう。この統率力って数値なんだけど、10ポイント上がるごとに1ポイントボーナスがついて、オレのステータスに割り振れるようになるんだよね」

「へぇ?じゃあ、例えば、ゆあの好感度が……その……100になったりしたら、りっくんは嬉しい?」

「ん?そりゃあ、嬉しいよ?あたりまえじゃん?」

 隣を見ると、ゆあちゃんがなんかもじもじしていた。

「へ、へぇ~?じゃあ、100にしてみる?」

「どうやって?」

「……とりあえず、手、繋いでみよ?」

「……はい?」

 座りながら、右手を差し出されてしまった。ゆあちゃんはこっちを向いていない。

「どゆこと?」

「いいから!手繋いだら好感度上がるかもしれないでしょ!」

「そうなの?」

「そうなの!」

「はぁ?それなら、まぁ……」

 オレはよくわからずに、ゆあちゃんの手を握った。小さい手だ。それに柔らかいし、あったかい。久しぶりに握る幼馴染の手は、オレが知っているものとは少し違っているような気がした。

「な、なんか恥ずかしいんだけど、もう離していい?」

「だめ……ばかりっくん……えっち……」

「えっち!?なんでだよ!?」

 変なことを言われて手を離そうとする。

「あ!離しちゃだめだって!」

 オレが手を引っ込めたのに、ゆあちゃんが握りしめるもんだから、こちらに倒れ込んできた。オレの腕の中にゆあちゃんがもたれかかる。顔もすぐそばまで近付いていた。

「りっくん……」
「……」

 なぜ名前を呼ぶ?なんか……ドキドキする……

「……あ!あー!これで好感度上がったかな!?」

「あ!」

 オレはゆあちゃんの肩を押して、元の位置に戻す。手を離してクラス替えの画面を確認した。

――――――――――――――――
氏名:的場柚愛(まとばゆあ)


学級委員への好感度96/100
――――――――――――――――

 95から96に上昇していた。

「……」
「……なんで?」

「……」
「……ゆあちゃん?」

「自分で考えてよ!なんでもゆあに聞かないで!バカりっくん!」

「なんでもなんて聞いてないだろ!」

「うるさい!これから毎日手繋いでよ!そしたら100になるかもでしょ!ばーか!」

「あ!おい!」

 謎の捨て台詞を残して、ゆあちゃんが訓練場を出ていった。戦闘服を着たままで。

「……まだ、訓練終わってないっての……」

 オレはポリポリ頬をかいてから、自分の訓練を再開することにした。
 なんなんだよ。最近のゆあちゃんの態度……調子狂うな……
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