上 下
8 / 95
1章 ダンジョンと鍵

第8話 チートスキルの効果は絶大で

しおりを挟む
「よし……すぅぅ……」

 オレは、パンチングマシンに向かって、低く構えてから精神を集中する。閉じた目を開け、右足に力を入れて拳を繰り出した。

「らぁ!!」

 バスン!パンチングマシンは大きく揺れ、かなり後ろまで後退する。そして、オレが殴ったところには穴が開き、サラサラと砂がこぼれ落ちてきた。

「……なんだこれ……昨日まで、揺れるだけだったのに……」

「素晴らしい威力です。それが陸人様の新しい力ですか?」

「そうみたい……」

「そうなると、戦闘力も上がってそうですね」

「試してみていいか?」

「もちろんです。私は準備万端ですよ」

 アトムが短剣を構えてオレの前に移動してきた。刃はついていないが鉄製だ。当たればそれなりに痛い。オレも同様の武器を手に取り、構える。

「今日は勝たせてもらおうか」

「まだまだ陸人様には負けませんよ」

 そしてアトムとの模擬戦が始まった。何度か打ち込んでみるが、やはり一撃一撃の攻撃力が上がっていることを実感する。昨日まではアトムの攻撃を受けることしかできなかったのに、アトムの剣戟を弾き返すことができていた。

「手加減はいらないぞ!アトム!」

「それでは失礼して」

 アトムが低く構えて足めがけて双剣を振るってきた。

「うわっ!?」

 咄嗟にジャンプして避けるが、

「隙ありでございます」

「へぶっ!?」

 肘を腹に叩き込まれて悶絶する。

「まだまだ、でございますね」

「ぐぅぅ……アトム、おまえ……肘とかずるいぞ……」

 腹を押さえながら抗議した。これは双剣での訓練なのに……

「実戦にズルも何もありません」

「まぁたしかに……よし!じゃあもう一戦!」

「承知しました」

 その日、オレは満足するまでアトムとの戦闘訓練を続けた。結論として、やはり攻撃力というか筋力が上がっていることがわかった。

 スキルを得て、仲間をクラスに加入させて、ステータスポイントを割り振っただけなのに、ここ数ヶ月分の努力を上回る能力を手に入れたのだ。

「すごい!すごいぞ!このスキルは!」

「スキルというのは?」

 アトムから質問されたので、スキル、クラス替えについて説明する。もちろん、口止めはしておく。

「なるほど。でしたら、そのクラスに残り28人を加入させれば陸人様はかなり強くなるのではないでしょうか?」

「たしかに!アトムは天才だな!」

「恐れ入ります」

 オレはモニターを表示させて、空席の欄をタップしてみた。

―――――――――――――――――――――
新しいメンバーをクラスに加入されますか?
Yes or No
―――――――――――――――――――――

「YES!」

―――――――――――――――――――――
対象となる人物が存在しません。
―――――――――――――――――――――

「え?なんで?」

「陸人様」

「なに?」

「私から提案しておいてなんですが、クラスに加入させる人物にアテはあるのでしょうか?先ほどの説明ですと、一定の信頼を得ているお友達しか加入させれないのですよね?」

「あっ……」

「柚愛様はどうでしょうか?」

「もう入ってもらった……」

「そうですか。では、頑張ってお友達を作りましょう」

「お!おまえまでなんだよ!頑張らなくたって友達くらい!……そ、そうだ!アトム!おまえが入ってくれよ!」

 オレはもう一度、座席をタップした。

――――――――――――――――――――
クラスに加入できるのは、生物だけです。
ロボットなどの無機物は加入できません。
――――――――――――――――――――

「そんな……」

「陸人様、私は陸人様のお友達ですよ」

「……」

 アトムなりのフォローだったのかもしれない。でも、ゆあちゃんとコイツくらいしか、友達のあてがないオレにとっては、逆にその優しい言葉が効きまくった。

「ぐぬぬ……」

「どうかされましたか?」

「いや……今日も訓練ありがと、また明日」

「承知しました。それでは私はこれで休ませていただきます」

 オレはアトムが充電スポットに正座するのを見ながら着替えて、訓練場の外に出る。

 スキル、クラス替え、すごいスキルであることはわかったが、色々課題もありそうだ。
 ……主にオレのコミュ力の問題な気もするけど……

 いや!きっと友達なんてすぐできるさ!前向きにいこう!まずは明日のゆあちゃんの訓練だ!クラスに入ってくれたお礼も兼ねてビシバシしごいてやるぞー!

 オレは現実逃避を発動しながら、お母さんが作る美味しい夕食を食べに家に戻るのであった。



=====================
【あとがき】
本作を読んでいただきありがとうございます♪

「面白い!」「応援してもいいよ!」と思っていただけましたら、〈ファンタジー小説大賞〉の投票をしてもらえないでしょうか!

タイトルの近くに投票ボタンがあるので、そちらからポチリとしていただけると嬉しいですm(__)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...