上 下
3 / 95
1章 ダンジョンと鍵

第3話 最年少《スキルホルダー》になった男

しおりを挟む
「スキル《群れの統治者》結局これなんなんだ?」

 ダンジョンではじめて強敵を倒した翌日、オレは、自宅のベッドの上であぐらをかいて頭を捻っていた。疑問を口にしたことがトリガーだったのか、頭の中に声が聞こえてくる。

『スキル《群れの統治者》自身が群れのリーダーとなり、群れを増やしていくことで、自身の能力を強化することができるスキルです。群れの数が多いほど効果は大きくなりますが、一定の信頼関係がある生物しか群れに加入することはできません』

『お?おぉ~……声が頭に直接……不思議だ……もしもし、こんにちは、あなたは誰ですか?』

 オレは事前にネットで調べていたこともあり、この現象についてはあまり驚いてはいなかった。
 唯一のダンジョン踏破者曰く、スキルを取得すると頭の中に直接声が聞こえ、スキルについて説明してくれる、と言う。まさに、今オレが体験していることだ。

『私はダンジョン管理者よりスキルの説明を任されている解説者です。許された範囲内でスキルの説明を担当しております』

『ほほう?とりあえず、そのダンジョン管理者とかいうやつと話せるかな?ダンジョンを消せって言ってやりたい』

『その要求は許可されていません』

『……くそっ……わかった。まぁ今はいいや。それで、その群れの統治者?だっけ?そのスキルなんだけど、群れとかどうとかって言い方、なんとかならない?オレたち人間は群れって言葉はあんまり使わないんだよ』

『わかりました。あなたが理解しやすいよう、インターフェースを変更します。情報表示デバイスを開いてください』

『情報表示デバイス?あぁ、エニモのことか……』

 オレは左腕に取り付けていた細長いデバイスを人差し指で触る。すると、すぐに水色のモニターが空中に投影された。これはAnywhere monitor、通称エニモと呼ばれる製品で、空中でも水中でもどこでもモニターを表示できるデバイスだ。腕時計のような小さい筐体の中に、高性能PCと同じだけの演算力を持つ優れものであり、2261年現在では小学生のオレでも所有するほど普及している装置である。

 青白いモニターには、〈現在、スキル、群れの統治者のインターフェースを咲守陸人の知性に合わせて変換中〉と表示されていた。ローディングバーが100%となり、情報が更新される。

 表示されたのは、5×6の計30個の四角い箱が並んだ画面であった。1番上の列の真ん中に咲守陸人、とオレの名前が記載されており、それ以外の四角の中は空白だ。
 画面の1番上には、スキル名《クラス替え》と記載があった。

『クラス替え?』

『群れの統治者、という名称をそのように変更しました。スキルの効果は変わっておらず、あくまであなたの身近な言葉に変換した結果です』

『なるほど……オレの名前のところに学級委員って書いてあるのは?』

『リーダー、ということですね』

『ふむ……それで?これをどうすればいいんだっけ?』

『まずは、あなたの名前をタップしてください』

『了解』

 オレは自分の名前をタップする。すると、名前の横にステータスのようなものが表示された。

――――――――――――――――
氏名:咲守陸人(さきもりりくと)
年齢:12歳
性別:男
役職:学級委員
所有スキル:クラス替え
攻撃力:14(E+)
防御力:19(D-)
持久力:68(B+)
素早さ:23(D)
見切り:8(E)
魔力:0(E-)
精神力:65(B+)
統率力:0(E-)
総合評価:D+
――――――――――――――――

『ふむふむ、これがオレの今のステータスってことか』

『はい。クラスに加入した人物のステータスは自由に確認することができます』

『大体の数値はなんとなくわかるけど、見切り以降の四つはよくわかんないな』

『まず、見切りについては敵の攻撃を予測する能力です』

『未来予知みたいなもの?』

『いえ、敵の予備動作などから次の動作を予測する武人特有の能力です』

『なるほど』

『次に魔力、これは魔法を使う場合のMPのことですね』

『おお!マジか!じゃあ!これを育てればオレも魔法を使えるってこと!?』

『その質問には回答が許されていません。次に精神力、これは窮地に立ち向かう心の強さを表します。唯一、ステータスボーナスを割り振ることができない能力値です』

『ステータスボーナス?』

『それについては後ほど説明します。最後に統率力、これはクラスに在籍する仲間たちにどれだけ信頼されているか、好かれているか、を現す数値です。現在はメンバーがあなた1人なので0となっています』

『ふむふむ』

『この統率力をあげることで、ステータスボーナスが発生し、あなたの能力を向上させることができます』

『どゆこと?』

『つまり、仲間を増やし、好かれれば好かれるほど、攻撃力や素早さなどのステータスが好きに上昇させれる、ということです』

『まじかよ……それって……友達が多ければ多いほど、強くなれるってこと?』

『まぁ、概ねそういうことになりますね。ただし、どんな人物でもクラスに加入できるというわけではありません。あなたのことを一定以上信頼している人物しかクラスには加入させれません』

『なるほど……そっか……そっか!わかった!じゃあ!まずは友達にクラスに入ってもらうことだな!』

 オレはベッドから飛び降りて立ち上がった。ワクワクした気持ちで部屋から出ようとドアに近づく。

『……あれ?オレって友達いたっけ?』

 よくよく考えると、うみおねぇちゃんがダンジョンに囚われてから、戦いの修行をしていた記憶しかない。つまり、友達なんていないのだ。

『あ……このスキル……ダメだ……』

 オレは、しょぼくれた顔で、地面に両手をついたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...