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2章 呪われた炎
第63話 ナナリア・キーブレス
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シューネが自分の座席に戻った後、マーダスは衛兵に連れていかれ、ギフト授与式は一応の平静を取り戻す。
しかし、小声で話し続ける貴族たちは大勢いた。2回連続でSランクを授与したピャーねぇは何者なんだって声が多いように思う。
「はぁ……よかったぁ……」
僕は、雑音を聞き流しながら、胸をなでおろした。
シューネが高ランクのスキルを授与できたことは、計画通りだったとはいえ、授与してみないとなんとも言えないからだ。だから、ほっと一安心、という感じだった。
シューネには、マーダスを倒した後、抜き取った虹の鍵を差し込んであった。だから、シューネがSランクのスキルを発現できたのはこのおかげだろう。
ちなみに、シューネは、マーダスの才能の鍵をさすとき、抵抗を示した。シューネ曰く、「自分の兄の才能を奪うなんて、やってはいけないことだ」、と言うのだ。
まぁ、わからんでもない。美しい志だとは思う。でも、そんなシューネに、「このままだとボルケルノ家が没落する。キミなら家を守れるかもしれない。それに、もしキミが失敗したらピャーねぇの立場が……」と僕はそそのかした。そうしたら、「自分が家も、お姉様も守る」と言ってくれたのだ。
シューネの優しさに付け込んだやり方で良心が傷んだが、ピャーねぇとシューネ自身を守るためだ。仕方がない。とにかくこれで、シューネもピャーねぇも国に認められることとなる。シューネは複雑な気持ちだろうけど、僕としては万々歳だ。
『ふぅ……今晩はお祝いかな……』
僕がまったりとした気持ちでギフト授与式の閉式を待っていると、最後の1人の授与が始まった。あ、そういえばナナリア王女の授与がまだ残っていたな、と思い出し彼女の方を見る。
ナナリア王女からは、王城の庭ですれ違ってから、何度かお茶会の誘いがあったのだが、最近忙しすぎて断り続けていた。怒っているだろうか?少し心配になりながら、祭壇を見ると、授与相手はすでに跪いていた。
ナナリア王女の方をもう一度見る。ナナリア王女はまだ座っていた。そういえば、あの人って足が不自由だよな?どうやって階段を降りるんだろう?
「キーブレス王国第七王女!ナナリア・キーブレス様!スキルの授与をお願い致します!」
司会の爺さんが声を上げると、足が悪いはずの少女がすっと立ち上がった。
あれ?歩けたんだ。
そして、ナナリア王女は、階段を降りながら、歌うように詠唱をはじめた。
「私、ナナリア・キーブレスの名の下に、あなたに才を授けましょう」
形式通りなら、祭壇におりてから詠唱をはじめるはずだった。だから、『式の形式とか無視かよ』そうツッコミたくなったが、美しい声にそんな邪推も無くなっていく。
「あなたの才を見出しましょう。誰にも見つけれなかった才かもしれません。しかし、私はあなたを見ていました。良き行いの者には、祝福があることでしょう。私に見せてください。あなたの本当の姿を。《ギフト・キー》」
詠唱が終わると同時に、授与相手の前に到着し、両手をかざすナナリア王女。すると、かなりの光量の光が両手から溢れ出した。それは、さっきのピャーねぇの出した光とほぼ同等に見える。
「まさか……」
そして光は収束する。そこに現れたのは、虹色の鍵だった。
「あらあら、本当にすごい才能でしたね。おめでとうございます」
「はっ!ありがたき幸せ!」
カチリ。ニッコリと笑いながら、鍵を差し込むナナリア王女。授与された相手のスキルは、Sランクの風魔法であった。
皆が呆然とナナリア王女を見つめる。
彼女のギフトキーはBランクのはずだ。Sランクのスキルなんて、授けられるはずもない。
ナナリア王女は席に戻ろうと、くるりと踵を返す。みんな、その優雅な姿から目が離せなかった。もちろん僕も。
「っ!?」
そのとき彼女は、たしかに、僕のことを見て、ニヤリと微笑んだのだ。
しかし、小声で話し続ける貴族たちは大勢いた。2回連続でSランクを授与したピャーねぇは何者なんだって声が多いように思う。
「はぁ……よかったぁ……」
僕は、雑音を聞き流しながら、胸をなでおろした。
シューネが高ランクのスキルを授与できたことは、計画通りだったとはいえ、授与してみないとなんとも言えないからだ。だから、ほっと一安心、という感じだった。
シューネには、マーダスを倒した後、抜き取った虹の鍵を差し込んであった。だから、シューネがSランクのスキルを発現できたのはこのおかげだろう。
ちなみに、シューネは、マーダスの才能の鍵をさすとき、抵抗を示した。シューネ曰く、「自分の兄の才能を奪うなんて、やってはいけないことだ」、と言うのだ。
まぁ、わからんでもない。美しい志だとは思う。でも、そんなシューネに、「このままだとボルケルノ家が没落する。キミなら家を守れるかもしれない。それに、もしキミが失敗したらピャーねぇの立場が……」と僕はそそのかした。そうしたら、「自分が家も、お姉様も守る」と言ってくれたのだ。
シューネの優しさに付け込んだやり方で良心が傷んだが、ピャーねぇとシューネ自身を守るためだ。仕方がない。とにかくこれで、シューネもピャーねぇも国に認められることとなる。シューネは複雑な気持ちだろうけど、僕としては万々歳だ。
『ふぅ……今晩はお祝いかな……』
僕がまったりとした気持ちでギフト授与式の閉式を待っていると、最後の1人の授与が始まった。あ、そういえばナナリア王女の授与がまだ残っていたな、と思い出し彼女の方を見る。
ナナリア王女からは、王城の庭ですれ違ってから、何度かお茶会の誘いがあったのだが、最近忙しすぎて断り続けていた。怒っているだろうか?少し心配になりながら、祭壇を見ると、授与相手はすでに跪いていた。
ナナリア王女の方をもう一度見る。ナナリア王女はまだ座っていた。そういえば、あの人って足が不自由だよな?どうやって階段を降りるんだろう?
「キーブレス王国第七王女!ナナリア・キーブレス様!スキルの授与をお願い致します!」
司会の爺さんが声を上げると、足が悪いはずの少女がすっと立ち上がった。
あれ?歩けたんだ。
そして、ナナリア王女は、階段を降りながら、歌うように詠唱をはじめた。
「私、ナナリア・キーブレスの名の下に、あなたに才を授けましょう」
形式通りなら、祭壇におりてから詠唱をはじめるはずだった。だから、『式の形式とか無視かよ』そうツッコミたくなったが、美しい声にそんな邪推も無くなっていく。
「あなたの才を見出しましょう。誰にも見つけれなかった才かもしれません。しかし、私はあなたを見ていました。良き行いの者には、祝福があることでしょう。私に見せてください。あなたの本当の姿を。《ギフト・キー》」
詠唱が終わると同時に、授与相手の前に到着し、両手をかざすナナリア王女。すると、かなりの光量の光が両手から溢れ出した。それは、さっきのピャーねぇの出した光とほぼ同等に見える。
「まさか……」
そして光は収束する。そこに現れたのは、虹色の鍵だった。
「あらあら、本当にすごい才能でしたね。おめでとうございます」
「はっ!ありがたき幸せ!」
カチリ。ニッコリと笑いながら、鍵を差し込むナナリア王女。授与された相手のスキルは、Sランクの風魔法であった。
皆が呆然とナナリア王女を見つめる。
彼女のギフトキーはBランクのはずだ。Sランクのスキルなんて、授けられるはずもない。
ナナリア王女は席に戻ろうと、くるりと踵を返す。みんな、その優雅な姿から目が離せなかった。もちろん僕も。
「っ!?」
そのとき彼女は、たしかに、僕のことを見て、ニヤリと微笑んだのだ。
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