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2章 呪われた炎

第41話 髪型を可愛くしよう

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「……はぁ」

 マーダスが姿を消した後、僕はペタンと座り込む。斬り合っていたら、たぶん無事では済まなかった。大きな実力差があることくらい僕にだってわかっていたんだ。でも、女の子を盾にして逃げるわけにはいかず、盛大な虚勢を張っていたに過ぎない。

「ジュナリュシア様!お怪我は!?」

「え?ううん、僕は大丈夫。シューネさんのおかげでね。改めて、助けてくれてありがとう」

「いえ……そんな……」

「あ、髪が……」

 シューネさんの方を見ると、長かった前髪がバッサリとなくなっていて、綺麗な水色の瞳が姿を表していた。宝石のようにキラキラしている。

「綺麗だ……」

 吸い込まれそうな目の色に、ふと、つぶやいてしまう。

「え?」

「あ、ごめんね。僕を庇ったせいで髪が……」

「髪?」

「ん?前髪が切れちゃってるよ?」

「ええ!?」

 シューネさんは焦った顔をして両手でわちゃわちゃと前髪を触る。

「ない!わ、わたしの前髪!」

「お、落ち着いて。その……無くっても大丈夫だよ」

「大丈夫じゃありません!目が!目を見られちゃう!」

 そっか、シューネさんは白い髪と同じくらい、自分の目の色のことを気にしていた。呪われた子だって、言われてきたからだろう。だから、僕はもう一度、自分の考えを伝えることにした。

「あのさ、さっきも言ったけど、シューネさんの目の色が家族と違ったって、なにも問題はないんだよ?」

「で、でも……」

「それに、すごく綺麗な水色だと思う」

「そんな……き、きれい、だなんて……ウソです……」

「ウソじゃないよ、僕のことを見て?」

 チラッ。シューネさんが、両手の指の隙間から僕のことを見る。

「シューネさんの目は綺麗だ」

 誠意をこめて、僕を救ってくれた少女に、そう言った。

「……うー……」

 シューネさんの顔がほんのり赤くなっていく。それを見て、自分がなんだか臭いセリフを言っていることに気づく。

「な、なんかごめん……そういうつもりはなくって……」

「い、いえ……」

 自信を持ってもらいたくて言ったのに、口説いてるみたいになってしまい気まずくなる。

「……あのさ!もしよかったら、この際、髪型変えようよ!」

「え?ええ?」

「よし!そうしよう!そうすべきだよ!」

 僕は、気まずさを誤魔化すために、シューネさんの手を取って立ち上がった。

「あ、あの……」

「えーっと、ピャーねぇには僕の家に来て、と手紙を残して、っと、さぁいこう!」

「ええ?ジュナリュシア様!?」

 僕はシューネさんの手を引いて自宅まで戻ることにした。



「ただいまー」

「ジュナ様?お早いお帰りですね?」

「あれー?ピャー様はー?その子だれ?」

「あ、シューネさん、僕のメイドを紹介するね。こっちがディセ、こっちがセッテだよ」

「こ、こんにちは……」

「で、この子はピャーねぇの友達のシューネさん。あ、僕の友達でもあるね」

「と、ともだち……」

「そうなんですね、そちらの方が。はじめまして、ディセと申します」

「セッテはセッテだよ!よろしくね!」

「よ、よろしくお願いします」

「あのさ、2人にお願いがあるんだけど、シューネさんの髪をかわいく整えてくれないかな?さっきちょっとしたトラブルで前髪が崩れちゃって」

「前髪が?なるほど」

 ディセが髪を隠しているシューネさんを覗き込む。

「いいよね?シューネさん」

「え……でも……」

「セッテがもっとかわいくしてあげる!こっちきて!」

 グイッ。セッテがシューネさんの手をとって引っ張る。シューネさんはあわあわしていた。

「あ、あの!わ、わたし!でも!」

「いいからいいから!」

 そんな感じだ。よし、ここはセッテに任せることにしよう。

 僕はというと『そうだな、あれをとってこようかな』と考え、ある物を取りに2階の自室へと向かったのだった。
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