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1章 奪う力と与える力
第14話 大切な従者と第四王子
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ベッドの下で待機していると、正午に差しかかったころ、窓から馬車団の音が聞こえてきた。玄関の方があわただしくなる。あいつが到着したのだろう。
しばらくして、ガヤガヤと話し声が聞こえたかと思うと、バン!と部屋の扉が乱暴に開けられた。
「はははは!もうすぐ!もうすぐあの女が手に入る!どう思う!ブラウ、アズー!」
「はっ、クワトゥル様にもらわれてピアーチェス様もお幸せでしょう」
「生意気な女ほど楽しめると思います!」
「はは!そうだろうそうだろう!やはり、アズーは私と気が合うな!そういえば、この前渡してやったメイドはどうだった!」
「すごく良かったです!特に泣き顔が!」
「ははは!それは良かった!是非アズーの調教の仕方についても教えてくれよ!実に愉快だ!」
そして、こいつらは信じられないような下品な話をはじめる。〈相手が嫌がっていればいるほどいい〉とかどうとか。
なんでこんなやつらの地位が高いんだ……こんなやつら……地獄に落ちればいい。
僕はベッドの下から、そいつらの足を睨み続けた。
♢
夕方になり、散々聞きたくもない話を聞いたら、あいつらは食事に向かい、また部屋に戻ってきて酒を飲み始めた。
よし、このくだらない宴会が終わって寝静まったら第四王子のギフトキーを奪い取ってやる。
そう思っていたのに、
「そういえば、アズー、おまえいい酒が手に入ったとか言ってなかったか?クワトゥル様に献上すると言っていたではないか?」
「そうだった!ありがと!兄上!すぐに持って参りますので!」
「よいよい!皆でアズーの部屋に行こうではないか!はははは!」
そして、大声を上げながら、3人とも連れだって部屋を出ていってしまった。追うかどうか迷う。いや、まだあと5日の猶予がある。こいつらが別荘にいる間に奪えばいいんだ。余計なリスクは犯さないようにしよう。僕ははやる気持ちを抑えて、その日はベッドの下で過ごすことにした。
♢
-翌日-
城のような別荘の中をこそこそと歩き回る。結局、あいつらはあの後戻ってこなかった。おそらく、アズーの部屋で飲み始めて、そのまま寝たのだろう。
僕の能力の特性上、第四王子が寝ている間に奪うのが1番リスクが低い。だから、あいつの寝室に潜り込んでいたのだが、昨日のように別の部屋で寝られては敵わない。せめてあいつの習性くらいは把握しておかないと、そう考えながら、キョロキョロしていると、使用人の服を着たカリンがキッチンへと入って行くのが見えた。
そして、そのカリンのことを、あいつが……第四王子がニヤけた顔で追いかけていくのを見つけてしまう。すごくイヤな予感がして、すぐに後を追った。見つからないように物陰に身を隠し、キッチンの中の会話に聞き耳を立てる。
「おまえ、新入りだな?」
「……はい。3日前から使えさせていただくことになりました」
カリンとあいつの声が聞こえる。
「いい身体してるじゃないか」
「おたわむれを……」
冷や汗が流れる。そっと、キッチンの中の様子を伺った。
カリンが第四王子に迫られ、壁に追いやられていた。両手を掴まれている。
『カリン!』すぐに出て行こうとしたが、カリンと目が合い睨まれる。『今は出てくるな』そう訴えかけられた。僕は、ぴたりと身体を止めて、元の位置に戻る。
ぎゅっと、棚の縁を強く握りしめて、カリンのことを見守った。
「あん?なんだその目は?私のことを舐めているのか?」
「滅相もございません……」
「おまえ、私に使えてるということは、私の所有物であるという自覚はあるな?」
「……」
「答えろ!」
「は、はい……」
「いい子だ。ふふふ……おまえ、今晩、私の部屋に来い、可愛がってやる」
「か、かしこまりました……」
クワトゥル第四王子は、カリンの同意を聞いて満足したのか。ニヤついた顔を浮かべたまま、キッチンを出ていった。
「……カリン!大丈夫!?」
僕は、あいつの気配が無くなってから、すぐにカリンに近づく。
「よく我慢されました、ご主人様」
焦っている僕とは裏腹にカリンは冷静だ。
「なんであんな約束!すぐに逃げよう!」
「いえ、逆に好都合です」
「なにがだ!」
「落ち着いてください、ご主人様」
そっと、唇に人差し指を当てられる。
「むぐ……でも……だって、カリンが……」
「心配していただけるのは嬉しく思います。しかし、目的はあいつからスキルを奪うことです。私のことは二の次で大丈夫です」
「でも……」
「いいですか?ご主人様。私はあいつに今晩呼ばれました。つまり、今晩あいつは自室で私と2人っきりになるということです。ご主人様は、昨日と同じようにベッドの下に隠れ、待機していてください。あいつが眠ったらギフトキーの奪取を」
「でも……カリンの身が危ないよ……」
「私は大丈夫です、私を信じてください。ほら、人が来ました、隠れて」
グッと背中を押され、廊下に出される。僕は不安な気持ちを抱えたまま、その場を後にした。
しばらくして、ガヤガヤと話し声が聞こえたかと思うと、バン!と部屋の扉が乱暴に開けられた。
「はははは!もうすぐ!もうすぐあの女が手に入る!どう思う!ブラウ、アズー!」
「はっ、クワトゥル様にもらわれてピアーチェス様もお幸せでしょう」
「生意気な女ほど楽しめると思います!」
「はは!そうだろうそうだろう!やはり、アズーは私と気が合うな!そういえば、この前渡してやったメイドはどうだった!」
「すごく良かったです!特に泣き顔が!」
「ははは!それは良かった!是非アズーの調教の仕方についても教えてくれよ!実に愉快だ!」
そして、こいつらは信じられないような下品な話をはじめる。〈相手が嫌がっていればいるほどいい〉とかどうとか。
なんでこんなやつらの地位が高いんだ……こんなやつら……地獄に落ちればいい。
僕はベッドの下から、そいつらの足を睨み続けた。
♢
夕方になり、散々聞きたくもない話を聞いたら、あいつらは食事に向かい、また部屋に戻ってきて酒を飲み始めた。
よし、このくだらない宴会が終わって寝静まったら第四王子のギフトキーを奪い取ってやる。
そう思っていたのに、
「そういえば、アズー、おまえいい酒が手に入ったとか言ってなかったか?クワトゥル様に献上すると言っていたではないか?」
「そうだった!ありがと!兄上!すぐに持って参りますので!」
「よいよい!皆でアズーの部屋に行こうではないか!はははは!」
そして、大声を上げながら、3人とも連れだって部屋を出ていってしまった。追うかどうか迷う。いや、まだあと5日の猶予がある。こいつらが別荘にいる間に奪えばいいんだ。余計なリスクは犯さないようにしよう。僕ははやる気持ちを抑えて、その日はベッドの下で過ごすことにした。
♢
-翌日-
城のような別荘の中をこそこそと歩き回る。結局、あいつらはあの後戻ってこなかった。おそらく、アズーの部屋で飲み始めて、そのまま寝たのだろう。
僕の能力の特性上、第四王子が寝ている間に奪うのが1番リスクが低い。だから、あいつの寝室に潜り込んでいたのだが、昨日のように別の部屋で寝られては敵わない。せめてあいつの習性くらいは把握しておかないと、そう考えながら、キョロキョロしていると、使用人の服を着たカリンがキッチンへと入って行くのが見えた。
そして、そのカリンのことを、あいつが……第四王子がニヤけた顔で追いかけていくのを見つけてしまう。すごくイヤな予感がして、すぐに後を追った。見つからないように物陰に身を隠し、キッチンの中の会話に聞き耳を立てる。
「おまえ、新入りだな?」
「……はい。3日前から使えさせていただくことになりました」
カリンとあいつの声が聞こえる。
「いい身体してるじゃないか」
「おたわむれを……」
冷や汗が流れる。そっと、キッチンの中の様子を伺った。
カリンが第四王子に迫られ、壁に追いやられていた。両手を掴まれている。
『カリン!』すぐに出て行こうとしたが、カリンと目が合い睨まれる。『今は出てくるな』そう訴えかけられた。僕は、ぴたりと身体を止めて、元の位置に戻る。
ぎゅっと、棚の縁を強く握りしめて、カリンのことを見守った。
「あん?なんだその目は?私のことを舐めているのか?」
「滅相もございません……」
「おまえ、私に使えてるということは、私の所有物であるという自覚はあるな?」
「……」
「答えろ!」
「は、はい……」
「いい子だ。ふふふ……おまえ、今晩、私の部屋に来い、可愛がってやる」
「か、かしこまりました……」
クワトゥル第四王子は、カリンの同意を聞いて満足したのか。ニヤついた顔を浮かべたまま、キッチンを出ていった。
「……カリン!大丈夫!?」
僕は、あいつの気配が無くなってから、すぐにカリンに近づく。
「よく我慢されました、ご主人様」
焦っている僕とは裏腹にカリンは冷静だ。
「なんであんな約束!すぐに逃げよう!」
「いえ、逆に好都合です」
「なにがだ!」
「落ち着いてください、ご主人様」
そっと、唇に人差し指を当てられる。
「むぐ……でも……だって、カリンが……」
「心配していただけるのは嬉しく思います。しかし、目的はあいつからスキルを奪うことです。私のことは二の次で大丈夫です」
「でも……」
「いいですか?ご主人様。私はあいつに今晩呼ばれました。つまり、今晩あいつは自室で私と2人っきりになるということです。ご主人様は、昨日と同じようにベッドの下に隠れ、待機していてください。あいつが眠ったらギフトキーの奪取を」
「でも……カリンの身が危ないよ……」
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