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1話
1話 ⑥
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「なに、ただでやってやるとは言ってない」
加州さんの大きな手が私の肩に触れ、そのまま、私は硬い床に押し倒されていた。眼前には、真っ黒なネクタイをほどき私の事を見下ろす加州さんの姿がある。舌なめずりをして、まるで獲物を屠ろうとする獣みたいな眼……その獲物は、間違いなく私だった。
「……あの、これは……」
「莉乃、俺のモノになれ」
とっさのことに言葉を失う。彼は上着を脱ぎ捨て、シャツのボタンをいくつか外していく。そして、私の喪服の帯紐に手をかけた。
たとえ男性との経験のない私でも、これから何が起ころうとしているのか――すぐに分かった。
「嫌っ!」
彼の胸を押し返して、私は逃げようとした。しかし、男の人の力には敵わない。両の手首を掴まれて、床に押さえつけられる。私はあっという間に身動きが取れなくなっていた。
「大人しくしてろ」
彼はそう言いながら、ほどいたばかりのネクタイで私の手首を縛りあげた。どれだけ身じろいでも、それは全くほどけそうにない。
「嫌、いや、助けて!」
「誰もいないのに、何言ってんだ。……どうするんだ? お前に残された選択肢は2つある」
彼は帯紐をほどきながら、私を見下ろしそう言った、
「実家に帰って、風俗に落とされるか」
「……そんなこと、お母さんたちが私にさせるわけない!」
「バカ、言っただろ。お前の家の事は何だって知ってる。ヤバイ金融業者から金借りてるってこともばっちり耳に入ってるんだよ。このまま帰ったらソイツらに売られるぞ、お前」
目の前が真っ暗になる。銀行がお金を貸してくれなくなった今、実家にお金を貸してくれるところなんて限られている。少し考えれば、分かることだ。それに、私の事を斉藤さんに【売ろう】とした家族の事だ。きっと、帰ったところで……碌な目には合わない。
「若い女が手っ取り早く稼ぐ方法なんて、それくらいしかない。でも、莉乃は嫌だろう?」
どうして私の人生、そんなひどいコトしか起きないのだろう。目じりに涙があふれる。それにこめかみに向かって伝うのに気づいた彼が、そっと拭った。その手付きは、先ほどの乱暴な仕草とは全く正反対で、とても優しいものだった。しかし、私を見つめる目つきはまだどう猛な獣のようで、そのギャップに頭が混乱していく。
この男が一体何者なのか、私の事をどう思っているのか。分からないことばかりなのに、それを聞く暇すら与えてくれない。彼は私の手首を再び床に押さえつけて、首筋に唇を寄せた。抵抗して汗ばんだ肌を、彼の舌が這いまわる。
「い、いや…ぁ…」
「だから、お前はもう俺のモノになるしか選択肢がないんだよ」
いつの間にか喪服の帯が緩められ、彼は襦袢ごと剥ぐように胸元をくつろげていく。和装だから、とブラを付けていなかった。私の胸元は、完全に露わになってしまう。
「……肌が白くてきれいだな。ジジィ、今頃後悔してるだろうよ。こんなにイイもんが見れなくて」
「いや、いや……み、見ないでください」
「もう遅い」
彼のカサカサとした指が、私の素肌にそっと触れる。胸の輪郭をなぞり、肌の感触を楽しむように手のひらで撫でる。それがくすぐったいのか、恐ろしいのか……混乱した私の頭では理解できなくなっていた。
「喪服を着たままっていうのも中々そそられるな。初めてだよ、喪服を着た女とヤルのは。……一応、お前未亡人だっけ?」
呼吸が急いていく私と違って、加州さんはとても落ち着いていた。
「もっといい声出せよ。……そうだ、お前、処女だったな」
加州さんの大きな手が私の肩に触れ、そのまま、私は硬い床に押し倒されていた。眼前には、真っ黒なネクタイをほどき私の事を見下ろす加州さんの姿がある。舌なめずりをして、まるで獲物を屠ろうとする獣みたいな眼……その獲物は、間違いなく私だった。
「……あの、これは……」
「莉乃、俺のモノになれ」
とっさのことに言葉を失う。彼は上着を脱ぎ捨て、シャツのボタンをいくつか外していく。そして、私の喪服の帯紐に手をかけた。
たとえ男性との経験のない私でも、これから何が起ころうとしているのか――すぐに分かった。
「嫌っ!」
彼の胸を押し返して、私は逃げようとした。しかし、男の人の力には敵わない。両の手首を掴まれて、床に押さえつけられる。私はあっという間に身動きが取れなくなっていた。
「大人しくしてろ」
彼はそう言いながら、ほどいたばかりのネクタイで私の手首を縛りあげた。どれだけ身じろいでも、それは全くほどけそうにない。
「嫌、いや、助けて!」
「誰もいないのに、何言ってんだ。……どうするんだ? お前に残された選択肢は2つある」
彼は帯紐をほどきながら、私を見下ろしそう言った、
「実家に帰って、風俗に落とされるか」
「……そんなこと、お母さんたちが私にさせるわけない!」
「バカ、言っただろ。お前の家の事は何だって知ってる。ヤバイ金融業者から金借りてるってこともばっちり耳に入ってるんだよ。このまま帰ったらソイツらに売られるぞ、お前」
目の前が真っ暗になる。銀行がお金を貸してくれなくなった今、実家にお金を貸してくれるところなんて限られている。少し考えれば、分かることだ。それに、私の事を斉藤さんに【売ろう】とした家族の事だ。きっと、帰ったところで……碌な目には合わない。
「若い女が手っ取り早く稼ぐ方法なんて、それくらいしかない。でも、莉乃は嫌だろう?」
どうして私の人生、そんなひどいコトしか起きないのだろう。目じりに涙があふれる。それにこめかみに向かって伝うのに気づいた彼が、そっと拭った。その手付きは、先ほどの乱暴な仕草とは全く正反対で、とても優しいものだった。しかし、私を見つめる目つきはまだどう猛な獣のようで、そのギャップに頭が混乱していく。
この男が一体何者なのか、私の事をどう思っているのか。分からないことばかりなのに、それを聞く暇すら与えてくれない。彼は私の手首を再び床に押さえつけて、首筋に唇を寄せた。抵抗して汗ばんだ肌を、彼の舌が這いまわる。
「い、いや…ぁ…」
「だから、お前はもう俺のモノになるしか選択肢がないんだよ」
いつの間にか喪服の帯が緩められ、彼は襦袢ごと剥ぐように胸元をくつろげていく。和装だから、とブラを付けていなかった。私の胸元は、完全に露わになってしまう。
「……肌が白くてきれいだな。ジジィ、今頃後悔してるだろうよ。こんなにイイもんが見れなくて」
「いや、いや……み、見ないでください」
「もう遅い」
彼のカサカサとした指が、私の素肌にそっと触れる。胸の輪郭をなぞり、肌の感触を楽しむように手のひらで撫でる。それがくすぐったいのか、恐ろしいのか……混乱した私の頭では理解できなくなっていた。
「喪服を着たままっていうのも中々そそられるな。初めてだよ、喪服を着た女とヤルのは。……一応、お前未亡人だっけ?」
呼吸が急いていく私と違って、加州さんはとても落ち着いていた。
「もっといい声出せよ。……そうだ、お前、処女だったな」
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