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第四章 はじめての【友達】
第四章 はじめての【友達】 ④
しおりを挟む「中々協力できなくて、ごめん。中身飲むの時間かかっちゃって」
佐竹は眼鏡を直しながら小さく微笑む。
「ううん! こっちこそ助かったよ~! 良かった~今俺が爆発させちゃったから、材料無くなってたんだよ!」
「うん、見てた」
「え? あれ見てたの?」
「そりゃ、楽しそうにやってるとこ見てたら……僕だって気になるよ」
あれが、佐竹には楽しそうに見えたらしい。視点が変われば、感じるものも変わる。そういう事だろう。
「やべーとこ見られちゃったな~。ま、これからまた頑張って作るからさ、応援してくれよな!」
「あ、あのさ!」
三原の言葉を遮るように、佐竹は大きな声を出す。思わず二人で目を丸めて彼を見ると、耳まで赤くなった佐竹は、ゆっくりと口を開いた。
「僕も、それやってもいいかな?」
「え?」
「だから、ペットボトルロケット、作るの……」
三原と僕は顔を見合わせる。そして、三原が腕で大きく丸を作る。
「もちろん! 全然オッケー! てか、人が増えたらすげー助かるよ。な、野々口」
「う、うん」
「三人でがんばろーぜ、佐竹!」
「うん! もちろん」
佐竹はキラキラとした目を僕たちに向ける、楽しくて仕方がない様子だ。佐竹がやるなら僕は抜けてもいいか? なんて聞きづらい雰囲気だ。
「それで、何からやればいい?」
「野々口が知ってる」
僕はカバンの中から設計図を取り出そうとする。しかし、ふとあることに気づいた。
「あ、取りに行くの忘れてた」
「え?」
「前書いたメモ。あれがあった方がわかりやすいと思ったんだけど……」
作り方を書いたメモの事をすっかり忘れていた。あれ以降、残りのメモやインターネットの情報を元に制作を進めていたせいでもある。
「ああ、あれ。まだ取りに行ってなかったのか」
「今度行く、今日はもう疲れた」
「まあ、せっかく作ったもの爆発しちゃった疲れるだろうね……いいな、次打ち上げる時は僕も呼んでよね」
「モチロン! でも、佐竹、よくやる気になったな。結構面倒だぞ、これ」
「面倒だろうけど……実は、ちょっとやってみたかったんだ」
「なんだよ! それなら早く言えって!」
三原の意見に同感だ。佐竹が早く手をあげてさえくれれば、僕だってこんな面倒な事しなくても済んだ。
「だって、雰囲気的に手上げづらかったし。それに、すぐ三原と野々口君に決まっちゃって、口挟む暇もないというか……」
「そんなこと、気にしなくてもいいのにな!」
三原が僕に同意を求めるので、深く頷いた。
「それなら、続きはまた今度。その間に子ども図書館】寄って、メモ探してくる」
「【子ども図書館】?」
「野々口がよく行くんだって。そこにペットボトルロケットの本があって、前調べるのに使ったんだよ」
「へぇ~、ねえ、野々口君。僕もそこ一緒に行ってもいい?」
「え? まあ、いいけど……」
「え! それなら俺も行く! てか今日行っちゃおうよ! 野々口、道案内よろしく!」
「……はあ」
三原も佐竹も、何だか旅行に行く前のようにウキウキしている。何がそんなに楽しいのか僕にはさっぱり分からないまま、僕はその二人について行った。佐竹は自転車を使っていないため、僕たちは自転車を押して【子ども図書館】に向かっていた。
「じゃあ、作るのはほとんど野々口君がやってたの?」
「まあ……三原はすぐミスするから」
「俺、ペットボトル回収と発射係」
「発射係良いな、僕もやりたい」
「じゃあ、今度やらせてやるよ。あ、でも本番は俺な」
「ちゃんと飛べる機体が完成したらな」
僕がくぎを刺すと、三原はいらずらめいたような笑みを浮かべる。先ほどの反省していた態度はどこに行ったのか……仲間が増えて嬉しくなって、消えてしまったようだ。
「野々口君、器用だね。僕でもできるかな」
「そんなに難しいものじゃないから、大丈夫だと思うけど。ただ、出来るだけ丁寧に作って欲しい。雑に羽を付けたりテープ貼ったりすると空気抵抗が発生するから……本物のロケット作ってる気持ちで」
「本物のロケット!?」
口から滑り出した言葉を、佐竹はするっと簡単に拾う。笑われるものだと思って「冗談だ」と付け足そうとすると、佐竹は満面の笑みを浮かべて「うん!」と頷いた!
「いいね、本物のロケット! そう思うことにする!」
「何? 佐竹ロケットとか好きなの?」
三原がそう聞くと、佐竹はキラキラとした瞳を三原に向ける。
「うん! だからペットボトルロケットとかもやってみたくてさ……かっこいいよね~、僕一度だけ、衛星の打ち上げ観に行ったことがあるんだ」
「……種子島で?」
「そう! すごかったよ~、思ったよりも大きかったし。それに、発射台からすごい離れてるのに、エンジンの熱風とか音とかがぶわっと押し寄せてくる感じ。あれは一度経験しておいた方がいいよ!」
佐竹の語り口に力がこもっていく、本当に好きなんだなっていうのが僕にも伝わってきた。
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