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 あの日結局帰れたのだけれども王妃様のお茶会という吊し上げの場に呼び出されてしまった。呼び出されたに近い。お茶会の招待状ではあるけれど、そんな生やさしい御茶会だとは思っていない。アリアが帰ってきたことは大きい。

「アリア、ロマンス小説を5冊くらい買ってきて。」
「どうしたのですか?ロマンス小説だなんて。買ってきますけれど、色々ありますよ???最近貴族の方がパトロンについたことが増えたのかいろんな本がありますけれど。」
「あーうん……手土産。なんか山あり谷ありがあるものが良いみたい。」
「分かりました。私基準で?」
「……エリザベス様におすすめする感じ。」

 それで通じるならその方がいい。ミカエラは手土産相手が王妃であることは伝えないでお茶会に行かなければならないとだけは伝えている。お茶会には行きたくないし、どういう話になるかなんて明白だ。身分という暴力での呼び出しと吊し上げ……私悪いことはしてないけれど、緊張する。というよりも胃がいたい。ろくなことにならない気がする。

「王妃のお茶会よかったですね。」
「絶対ろくなことになりませんよ!?」
「別にいいではないですか。そこは面白おかしく尾鰭をつけて平民だから反対されて私が勝手に強行先を取って巻き込まれただけにしておけば。それでロズウェル侯爵家とも懇意にしているからスカルラッティとも険悪を続けたくないとか適当に泣き落とせば良きに計らってくれますよ。誰にとって良いことかは確認しないといけませんが。」
「私がそんなことできると本当に思っているのですか???」
「しなくても向こうが勝手に情報収集をあらかたしているでしょうし、ヘラルド様やユーリ様が情報を流していると思いますよ。」



 と言われてお茶会に行くがとりあえず手土産のロマンス小説。アリア曰く、書いた人は多分貴族。という、お墨付きがついた隠れた名作だ。作者などは平民に見えるが、文章が整っているのと貴族の屋敷や暮らしの描写が明らか知っている人間の書き方なので別の意味でお貴族様には受けるかもしれない。ということでおすすめ本としてその人が書いてアリアが面白いと思った本数冊を出す。

「書いた人間が貴族ではないかと思う位平民にしては貴族の描写が丁寧で、文章も整っているので……みなさまなら誰がモデルになったのかお分かりかと……というのが私がお勧めする理由です。」

 招かれたのは王妃様の年齢に近いご婦人方とローズ嬢だ。彼女は男装して側に座り、ニコニコとしているが、所作が男性のそれに見えるのは王妃の叩き込みだろうか。奥様方も目を輝かせてローズ嬢を眺めている。そんなに良いのか。お礼として食べ物の材料やお酒、などなどが定期的に届くようになってアルフィアスの家が盛り上がっているらしい。つまり王妃様が露骨に可愛がっているとか……???車校なんて全く興味ないし、これからもないと思うけれど、それがなんでこうなったのだろう。

「ミカエラ、学園でのことを色々聞きましたよ??何故子爵のあなたが子爵令嬢という格下相手に虐げられているのですか???」
「対応する方が馬鹿らしいというか、何を言っても聞き耳を持たないですし、向こうの方が貴族の横のつながりもありますし……構って欲しいのかな???と思いましたが、私平民で苦手な勉強に集中しないといけないので無視してました。それに来年からは彼女が留年になったので関わることも少ないかと……元々どうでもいいと思っていた相手なので、いや、本当にどうでもよくて……彼女に時間を割く方が無駄だと思っています。」

 あれ????私も結構ひどいことを言っている気がする。実際彼女に労力や時間を費やす位なら仕事や勉強をしている方がはるかにマシで私としてはあまり関わりたくない相手だ。

 それからあの夜会の話になるが、王妃が時系列を先に把握していたのか私が可哀想なこ扱いでお茶会が盛り上がり出した。ただ、私がスカルラッティ家やロズウェル侯爵家に迷惑をかけたくないのでというのを何度も言うからその辺は任せろとまで言われてしまった。

 ユーリ様が貴族社会で怖いのは既婚女性のお茶会での会話内容。と、何度もエリザベス様不在の間に言われたけれど……そのことをやっと理解した。嫌味と悪口の応酬かと思ったのに情報収集の場だ。それと流行による打ち合わせに近い。悪口などで盛り上がるのは三流で一流はにこやかなお茶会で些細な会話から発展させて事業や税、各領地の情勢を聞いて把握することだと思った。学校で習ったことが出ている。勉強していてよかったと思いながらお茶を飲む。

「ミカエラ、相手がイザーク・スカルラッティで良いの?無理やりではなくて?」
「嫌いでもなければ好きになれる点を多数見つけられそうですから。お気遣いありがとうございます。」
「ユーリ・ロズウェルの騎士でもあるから安定でしょうね。」
「……私に婿入りだそうです。本人の主張ですが……」
『まぁ……!!!!』

   奥方達が盛り上がって愛よね。と、凄く盛り上がっていた。恥ずかしい。帰りたい。そう思っていると人が入ってきた。男子禁制じゃ……と、思ったらイザーク様だった。

「王妃殿下、ヘラルド様がミカエラを呼んでいるので参ったのですが……宜しいでしょうか?」
「ミカエラに口付けしたなら連れて行って構わないわ。」
 
    手にされるかと思った。そう思っただけで顔を持ち口付けをしてきた。

「では、お借り致します。」
「え、えぇ……」

   ミカエラは真っ赤になって手を引かれてお茶会室から出た。王妃もそこまでするとは思わなかったが、その後ミカエラとイザークを推す派閥が出来たのは言うまでもない。
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