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148 報復

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何事もなければ事もなし。なのだけれども本人が乗り込んできた。お供のご友人と護衛騎士を伴って。こっちはそちらの婚約者()のイザーク様が従僕のような服装で荷物を持っているのだけど…

「良くも昨日は無体を働いてくださいましたね、平民。」
「無体???はて???講義内容に則して私なりに行っただけの事。先生達に確認しましたがルール上問題ありませんよ??それよりもペアでの試合なのに片手団扇で余裕ぶっかますから真っ先に潰す。当然でしょう???護衛騎士様?2対1の環境で1人がこちらを舐め腐って武装解除に等しい様子だったらそちらから潰しません??」
「ぇ、あ…それはえぇとはい。」
「お宅のお嬢様が見物のように武装解除していたので真っ先に潰しただけですよ?私1人だったのに。油断が招いたことですし、危機管理の勉強が必要だと思いません???大切なお嬢様の事ですし。」
「貴方!!!!」

扇を振り上げて頬を叩いた。守ってくれても良かったじゃないか。そう思いながら痛くもないので見る。痛くない。

「ミカエラ、回避出来たのでは?」
「こういうのって被害者の方がお得なんですよ。」

頬を抑えて眼をうるませる。イザークはそっと頬を撫でてくる。殴られたのは目立つ。ミカエラはふぅと溜息をついてラエティ子爵令嬢をみる。

「簡単に手を出す御令嬢に婚約者がいるように見えないのですけれど…」
「貴方に何がわかりまして???爵位を得ている成人なのに婚約者もいない貴方に言われたくもありませんが、下賤で金銭で爵位を買った卑しき人間のくせに。」

 …どうしよう。すごい怒っているような感じだ。隣が。ミカエラは溜息をついて説明をすべきなのだろうか。正当な抗議をすべきなのだろうか…考えているとすっと彼が前に出た。

「大丈夫ですよ?」
「いえ、言って良いことと悪いことがあるんですよ。」
「気にしていません。」
「ミカエラ。」

 ハウス。と、言いたいけれど、見上げると堪えてくれるだろうか。キュッと唇を引き結んでいた。

「では貴方が出来るのですか。」
「…まぁ。効果あるかわかりませんが。アンバース子爵令嬢。私の婚姻のことを仰りますが、ご自身の婚約者と同伴して夜会やお茶会に参列したことございますか??私、リンドブルム大公とさまざまな夜会やガーデンパーティーに参加させていただいておりますが、貴方が特定の殿方とダンスを踊ったり親しげにしている様子は見たことございませんが…その年齢だと婚約者と何かと同伴をお願いしたりするものではございませんか???辺境の地方だと婚約者とは結婚式まで合わなとかそういう風習もあるようですけれど…本当に婚約者が領地運営を任されるような方で婚約のお話も本当ですか???ご家族の見栄やご都合ではございませんか???分を弁えないといけないのはどちらでしょうね。…若さゆえの暴走としてこの一発は多めに見て差し上げますが、次は私も泣きつく相手は多数いますのでそちらに相談させて頂きます。」

 良い笑顔で言い切って通り抜けて教室に向かう。イザークは荷物を持って隣を歩く。ミカエラは溜息をついて足を止める。それなりに歩いてアンバース子爵令嬢から距離は取れていると思う。反撃で言いすぎただろうか。いや、あれくらい貴族の御令嬢であれば何も言わない。直接的であるけれど、私は何も悪いことは言っていない。

「私、変なこと言っていました???」
「いえ、少し直接的ですが、学園内であれば問題ありませんよ。私、そういう話を何も聞いていないのですが、そういう話は進んでいるようですね。一度も会ったことありませんが。」
「…一応あっているではないですか。」
「名乗っていませんから会っていませんよ。ユーリ様からは断ってもらっていますし、私からも再三断っている。それに好みでもないですし、食指も動きません。貴方を殴った手首を切り落としたかったです。」

 荷物を受け取ってよしよしと彼の頭を撫でるとむすっとはしているが危害を加えないで欲しい。揉め事は穏便に片付けて欲しい。よし。学校の授業頑張ろう。




 その日、アンバース子爵令嬢との口論があっという間に領主候補課程に広まった。尾鰭つかずにほぼありのまま。そして形成が逆転した。私は自力で爵位を得た成り上がりであり、努力家で彼女はもしかしたら心を病んでしまって親にわがままを言ってこのコースにいるかもしれないお嬢様だと。私が何かをしたわけじゃない。喧嘩を仕掛けていない。自業自得だと思いたい。いや、自業自得だ。すごい睨まれているけれど。

「ミカエラ様、ごきげんよう。」
「ローズ様、おはようございます。」
「ローズで構いませんよ?」
「いやいや。クラス違うのにどうしたのですか。」
「…ミカエラ様が領地を賜ったら護衛騎士として雇っていただけますか?」

何を言っているのだろうこの子は。まぁ、領地の話は置いといて…それが何故護衛騎士ということになるのだろう。

「騎士として実績を積みたいのです。」
「王族やそれに準ずる女性の騎士の方が良いのでは???」
「逆に需要ないんですよね。その辺…結局近衛が護衛騎士になるので。」
「…ご家族とよく相談した方がいいですよ。」

まさか就職希望が現れるとは思わなかった。アリアはお金
と休暇で専属だし…料理人さんは給金とメニューが楽なこと。イザーク様は…あれは別件。
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