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93 リハビリ
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リハビリがそれなりに大変だが、神官による治癒魔術の効果は高い。手が動くようになっていたが、足はしばらく杖必須のようだ。ユーリ様が部屋に来た。
「どう?身体の具合。」
「回復はしたのですけれど、歩くのにしばらく杖がいるようです。」
「それは生活に支障が出るね。貴族の犯人がまだ目処ついてない。でも家に帰りたいミカエラの要望を叶えるには手練れの護衛が必要だ。同じことが起きても大変だからね。」
「そ、そうですね。」
「だから、家に帰って良いけれど、犯人の目星がつくまで護衛にイザークをつけるからイザークも持ち帰るように。」
「え…」
「防犯上の都合としばらく足が不自由なんだから男手があった方がアリアも助かるだろう?」
そうですけれど。アリアもイザーク様も侯爵家の人で私から何か言えるような立場でもないわけだし。それに侯爵家に長居するのも気不味という感じで色々考えていたわけで・・・人が多すぎて疲れる。家に帰るか、ここで過ごすかになると、ある程度歩けるようになったから家に帰りたい。
「犯人目星ついてないのが珍しいですね。」
「あぁ、ちょっと喋れ無くなったからね。回復したらしゃべるだろうけれど・・・」
「イザーク様がフルボッコにしたとかですか?」
本人がいないから聞いてみた。
「フルボッコ?まぁ話を聞くのがイザークの仕事だし、私怨が8割かもしれないけれど。やりすぎるから適度に持ち帰って欲しいんだ。」
「わかりました。」
「ミカエラ、どうしました。」
「ユーリ様に私怨8割で仕事して進捗微妙だから持ち帰って欲しいって言われました。」
「あぁ、そういうことですか。部屋は余っていましたよね。適当に借ります」
断定だった。ミカエラは帰るときにアリアを先に帰らせてセシルさんのことを任せて私はイザーク様にエスコートをされて帰ることになる。アリアに伝えると客間の準備すぐに始めてくれた。アリアがいるから大丈夫だと思いたい。いや、大丈夫なはずだ。家に戻りセシルの核石に触れる。
「戻りましたよ。細かいことはアリアに言ってくださいね。」
さてと、杖をついて歩くけれど、工房に降りるのも大変だ。階段が辛い。それでも元に戻さないと生活と仕事に支障を来たす。そう思いながら杖をつきながら仕事をする。手はゆっくりではあるけれど、品質が維持できるようになりつつある。ただ集中力が必要でいつもより品質に自信がない。数を作るしかない。クズ石だから材料費を気にしなくて良いけれど。
「ミカエラ、作業場でないといけないのですか?」
「階段の登り降りで足を使いたいんです。」
「わかりました。ですが、足元が不安ですので私も付き合いますのでご理解ください。」
工房に降りて仕事をするのだけれども階段を降りるときに彼が先に降りる。私が転倒して階段から落ちても良いためということらしい。慣れなくて落ちそうになった時は数歩で飛んできて身体を支えてきた。
「ミカエラ少しはましになりましたね。」
「そうなのでしょうか。」
「私の直感ですけれど。」
工房の仮眠用の長椅子にイザークが座っているのだが寛ぐならゴロンとくつろいでおけば良いのに。
休憩がてらミカエラはそばに座る。見上げると彼の方が首を傾げた。
「ミカエラ?」
「私怨8割でお仕事はダメですよ。」
「…善処いたします。」
そっと触れて髪に触れてみるとなでろと差し出してきた。そのまま頭を撫でると身体を寄せてきた。のだが、なぜか膝の上に移動させられた。膝の上である必要ないと思うのだけれども。そう思いながらも抱きしめてくるのでよしよしと頭を撫でる。安堵したように息を吐き出されたので私の過失が大きいらしい。
「何かしたいことでも?」
「貴方が無事で良かったです。」
「あ、はい…イザーク様…」
腕の中に収め直された。恥ずかしいけれど嫌ではない。困った。ここが嫌じゃないになってる。
「取り敢えず同衾してもいいですか?」
「犬の姿なら良いです。」
もふもふに飢えているのか言ってしまった。手に口を当てて失言。と、思いながら見上げるも表情が明るくなっていた。
「本当ですか???」
「ベッドからはみ出します。」
「大きさ調整します。」
出来るのか。大きさ調整出来るのか。それはそれで気になる。見上げると頬に唇を寄せられた。
「いい匂いですね。せめて恋人とか婚約とかダメですか?」
「なんでそうなるのですか。」
「こういうのを友人や知人には許しませんから。」
ミカエラが顔を赤くして見上げるとイザークはスっと躊躇いなく口付けをした。嫌じゃないけど…どうしたらいいか分からない。
「おや?」
「…バカスカ殴られてる時に出血してるしイザーク様が来るかもと思ってたので…」
「では結婚を前提に恋人から始めましょう。」
「…」
「こういうことあの男たちと出来ますか?」
「無理。」
「ヘラルド様は仕事だからと割り切れるでしょうが…元職場の職人は?」
「嫌です。」
「少なくとも私は拒まれていないと自惚れていますので、ミカエラが意地でも結婚したい相手が出るまで恋人とか婚約ではダメですか?内縁で良いので。護衛以外に堂々と傍にいれる理由を下さい。」
こくり。小さく頷く。これは折れるしかない。すごく悲しげな顔をされてしまった。
「どう?身体の具合。」
「回復はしたのですけれど、歩くのにしばらく杖がいるようです。」
「それは生活に支障が出るね。貴族の犯人がまだ目処ついてない。でも家に帰りたいミカエラの要望を叶えるには手練れの護衛が必要だ。同じことが起きても大変だからね。」
「そ、そうですね。」
「だから、家に帰って良いけれど、犯人の目星がつくまで護衛にイザークをつけるからイザークも持ち帰るように。」
「え…」
「防犯上の都合としばらく足が不自由なんだから男手があった方がアリアも助かるだろう?」
そうですけれど。アリアもイザーク様も侯爵家の人で私から何か言えるような立場でもないわけだし。それに侯爵家に長居するのも気不味という感じで色々考えていたわけで・・・人が多すぎて疲れる。家に帰るか、ここで過ごすかになると、ある程度歩けるようになったから家に帰りたい。
「犯人目星ついてないのが珍しいですね。」
「あぁ、ちょっと喋れ無くなったからね。回復したらしゃべるだろうけれど・・・」
「イザーク様がフルボッコにしたとかですか?」
本人がいないから聞いてみた。
「フルボッコ?まぁ話を聞くのがイザークの仕事だし、私怨が8割かもしれないけれど。やりすぎるから適度に持ち帰って欲しいんだ。」
「わかりました。」
「ミカエラ、どうしました。」
「ユーリ様に私怨8割で仕事して進捗微妙だから持ち帰って欲しいって言われました。」
「あぁ、そういうことですか。部屋は余っていましたよね。適当に借ります」
断定だった。ミカエラは帰るときにアリアを先に帰らせてセシルさんのことを任せて私はイザーク様にエスコートをされて帰ることになる。アリアに伝えると客間の準備すぐに始めてくれた。アリアがいるから大丈夫だと思いたい。いや、大丈夫なはずだ。家に戻りセシルの核石に触れる。
「戻りましたよ。細かいことはアリアに言ってくださいね。」
さてと、杖をついて歩くけれど、工房に降りるのも大変だ。階段が辛い。それでも元に戻さないと生活と仕事に支障を来たす。そう思いながら杖をつきながら仕事をする。手はゆっくりではあるけれど、品質が維持できるようになりつつある。ただ集中力が必要でいつもより品質に自信がない。数を作るしかない。クズ石だから材料費を気にしなくて良いけれど。
「ミカエラ、作業場でないといけないのですか?」
「階段の登り降りで足を使いたいんです。」
「わかりました。ですが、足元が不安ですので私も付き合いますのでご理解ください。」
工房に降りて仕事をするのだけれども階段を降りるときに彼が先に降りる。私が転倒して階段から落ちても良いためということらしい。慣れなくて落ちそうになった時は数歩で飛んできて身体を支えてきた。
「ミカエラ少しはましになりましたね。」
「そうなのでしょうか。」
「私の直感ですけれど。」
工房の仮眠用の長椅子にイザークが座っているのだが寛ぐならゴロンとくつろいでおけば良いのに。
休憩がてらミカエラはそばに座る。見上げると彼の方が首を傾げた。
「ミカエラ?」
「私怨8割でお仕事はダメですよ。」
「…善処いたします。」
そっと触れて髪に触れてみるとなでろと差し出してきた。そのまま頭を撫でると身体を寄せてきた。のだが、なぜか膝の上に移動させられた。膝の上である必要ないと思うのだけれども。そう思いながらも抱きしめてくるのでよしよしと頭を撫でる。安堵したように息を吐き出されたので私の過失が大きいらしい。
「何かしたいことでも?」
「貴方が無事で良かったです。」
「あ、はい…イザーク様…」
腕の中に収め直された。恥ずかしいけれど嫌ではない。困った。ここが嫌じゃないになってる。
「取り敢えず同衾してもいいですか?」
「犬の姿なら良いです。」
もふもふに飢えているのか言ってしまった。手に口を当てて失言。と、思いながら見上げるも表情が明るくなっていた。
「本当ですか???」
「ベッドからはみ出します。」
「大きさ調整します。」
出来るのか。大きさ調整出来るのか。それはそれで気になる。見上げると頬に唇を寄せられた。
「いい匂いですね。せめて恋人とか婚約とかダメですか?」
「なんでそうなるのですか。」
「こういうのを友人や知人には許しませんから。」
ミカエラが顔を赤くして見上げるとイザークはスっと躊躇いなく口付けをした。嫌じゃないけど…どうしたらいいか分からない。
「おや?」
「…バカスカ殴られてる時に出血してるしイザーク様が来るかもと思ってたので…」
「では結婚を前提に恋人から始めましょう。」
「…」
「こういうことあの男たちと出来ますか?」
「無理。」
「ヘラルド様は仕事だからと割り切れるでしょうが…元職場の職人は?」
「嫌です。」
「少なくとも私は拒まれていないと自惚れていますので、ミカエラが意地でも結婚したい相手が出るまで恋人とか婚約ではダメですか?内縁で良いので。護衛以外に堂々と傍にいれる理由を下さい。」
こくり。小さく頷く。これは折れるしかない。すごく悲しげな顔をされてしまった。
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