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63 次の職場

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報酬に釣られて王宮で生活することになってしまった。アリアには家の管理をお願いした。

「やっぱりミカエラ様は貴族生活に慣れた方が良いですよ。」
「嫌だよ…今の生活にやっと慣れてきたのに。」
「城の侍女どうしますか?侯爵家の人にしてもらいますか?家の管理を他の人にお願いして私が着いていきます???」

荷物を準備していると指摘されて気付いた。身の回りの世話が発生するんだった。

「それにミカエラ様はヘラルド様の愛人で、ロズウェル侯爵家ともとても懇意で、単独で爵位を得ているので厳選されたご令嬢が付くと思いますよ?」
「え、無理。」
「ユーリ様に1度相談されては如何でしょうか。もしくはヘラルド様。」

泣きたい。やっとお貴族様との繋がりがか細い使用人の貸し借りだけで終わっていたのにまたあのとてもお世話になったロズウェル侯爵家に行くなんて。

「ミカちゃん!!」
「お嬢様、お久しぶりです。」

ミリーナがミカちゃんと、喜んで抱きついてくれるのは嬉しいけれど来てしまった。そう思ってしまう。前はお客様ではあるんだけど、前は平民のお客様扱いで、今は貴族のお客様扱いだ。本邸の応接間だ。

「弟の嫁にでもなりに来たのかな?」
「ユーリ様、何故そうなるのですか…レオンハルト様なら引く手あまたでしょう。」
「それなら婿で引き取ってくれるとか?」
「なぜ弟を売り飛ばすような方向に…」

椅子に腰掛けてお茶を飲みながら話は小耳に挟んだかもしれないけれど。ヘラルドの邸で起きた双子とのやり取りを話すと思ったより真剣な目になっていた。

「まぁ、私が関与する余地はあまりないけど…ミカエラ、アリアを専属侍女として連れていきなさい。家は他の人間に管理させよう。四六時中女男爵様と付きまとわれたり、貴族の令嬢扱いは嫌だろう?アリアを連れていったら家とそこまで変わらないだろうし…護衛騎士はイザークとレオンハルトを交代又は2人を付けるよ。」
「イザーク様まで???」
「一応ヘラルド殿の仕事上の付き合いの愛人契約しているだろう?レオンハルトは殴り合いとかは強いけど毒物とかは強くないからね。信頼出来る護衛が見つかるまでイザークを付ける予定程度だよ。それにしても双子に気に入られたんじゃないのかい?」

めんどくさい…顔に出てたかもしれないが出した方がいいとも思った。気軽に相談できるのが次期侯爵というのもおかしいんだろうなぁ。普通お手紙で簡単に会える相手ではないのだろうし。

「お任せします。私は醜い女の争いを報告するだけなので。」
「ヘラルド殿の愛人というだけで目立つだろうけどね。」
「えぇ…ただ腕組んで談笑してるだけで肉体関係どころかお茶飲んでメイドに懇切丁寧に磨かれて家に帰ってるだけですよ。」


人を借りて後宮と呼ばれる王族の生活空間に通された。与えられたのは来客用の部屋ではあるのだけれども豪華だ。

「ヘラルド様にグレードを落としてもらうように言わないと…」

部屋に案内されて困ったなあと呟いているのが聞こえていたのか、予めこちらに来ていたのか振り返るとヘラルドが腕を組んで扉にもたれかかっていた。

「ヘラルド様、部屋のグレード落としてください!!」
「私の愛人設定なのだから相応の部屋にしないと契約違反になる。」

そこで愛人契約違反というのを持ってこられるとは……嫁避けだから合っている…???

ミカエラは混乱した。仕事としてだからありなのだろうか。

「食事などは部屋で取れるようにしている。」
「部屋じゃなかったらどこがあるのですか?」
「陛下や王妃と時間が合えば可能だな。後は王子らとか。」
「部屋で大人しく仕事してます。」

絶対無理。嫌だと言いたい。

「王妃は納品した事あるのだから話はしたいらしいが、別件の仕事があるからと一応断っておいた。」
「ヘラルド様断れるんですね…」
「名目自分の愛人の処遇でもあるからな。肉か魚くらいは選べるだろう。」
「…選べなくていいんで品数庶民にしてください…」

 それは難しいだろうが、仕事で呼ばれたのだからある程度は叶えてくれるらしい。アリアが侍女たちと話を合わせてきますと荷解きが終わって次の仕事をすると報告してきた。

「それなら部屋の外にいる人間がミカエラ担当予定だ。話をしておいた方がいい。」
「ヘラルド様、近いです。」

 当然のように膝に乗せてきた。顔がいいから文句は出ないけれど、この距離感が当たり前にはしたくないお茶が良いお茶なのかとても美味しい。親子以上の歳の差だからヘラルド様はそんな気は全くないと思っているけれど、若いし顔が良い。
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